♰♰♰ 放課後の図書室と視聴覚室 ♰♰♰
図書館ほど学校の中で異質な空気を出している場所はなかった。昔から図書館には何かが住み着いているという噂が耐えない。日の当たらない場所にあり、電気をつけていても薄暗く、本が生み出す独得の臭いがする。誰も本を読みに行かないのに学校に存在し続け、何十年も前の古い本が大量に置かれている。墓場にいるかのような静寂さと重々しい空気があり、まるでここは本の墓場だ。一足、図書館に足を踏み入ればまったく読まれなくなった本の責めるような恨めしい圧迫を感じる。
だが、図書館が不気味に思うのも単純にこの学校の生徒達はまったく本を読まないが為にあまり図書館にいかなかったから図書館は馴染みが薄くて不気味に思えただけであった。
そんな静寂さにつつまれた薄暗い図書館にカシャッとうるさい機械音が鳴ったと同時にピカッと白い光りが薄暗い図書館を一瞬だけ明るくした。
中村みきは皆が恐れている図書館の中を恐れずにまるで雲の上を歩いているかのようなかろやかな足取りで歩いていた。
中村みきは自分と同じく高畑にチョコを渡そうとしているライバルの麻子と夏樹に放課後に原先生によって取り上げられたチョコを取り返しに生徒指導室に行かせている間に自分だけは二人よりも先に高畑にチョコを渡し、自分が高畑と付き合うという策略があった。
みきはチョコが入っている手提げかばんを持って規則正しくスペースを保って並んでいる本棚の列の間の通路を通って図書館の一番奥の壁までたどり着くと外の景色が見える窓ガラスがある左側を向いた。
「あ、高畑先輩!みきを待っていてくれたのね!」
壁と本棚の狭い間に挟まれ中村みきに背を向けて窓ガラスを向いて外の景色を見ている男子生徒がいた。みきからは後姿からしかわからないが高畑らしき男子生徒はなぜか肩を激しく上下に動かして呼吸が荒れているようだった。だが、自分しか見えていないみきは気にせずに自分の事ばかり喋りだした。
「みきとの約束をちゃんと守って来てくれたんだねっ!みき、うれしい!今日、みきはどぉ~してもみきからのチョコが貰いたいらしいから男の子達にいっぱいチョコを挙げちゃったけど、気にしないで!みきが挙げたチョコはぜぇーんぶ、義理チョコのスーパーで半額セールで買った賞味期限がとっくの昔に切れた安物のチョコだからっ!みきの愛がこもった手作りのチョコをあげるのは高畑先輩だけ・・・・」
中村みきは学校中のイケメンに手当たりしだいにチョコを渡してはいたが、肝心な本命の高畑だけには二人きりになれるように放課後に図書館に来るようにと無理を頼んでいた。中村みきは手提げかばんの中からチョコを取り出すとそのチョコを高畑らしき男子生徒に手を伸ばして渡そうとした。
「はいっ、これ、みきからのバレンタインデーチョコね。高畑先輩は彼女がいるらしいけど、彼女なんかよりみきからチョコを貰ったほうが断然うれしいハズよね!だって高畑先輩はみきにとっての王子様なんだもんっ!きっとそのはず。絶対そうよっ!だって、世の男はみきからのチョコを貰ったら喜ぶもんっ!・・・・だから高畑先輩?みきにずっと背を向けてないで、そろそろみきにチョコを貰って嬉しい顔を見せてくれる?」
すると高畑と思われる人はみきのお望みどおりに中村みきの方を振り向いた。王子様が自分に振り向いてくれた事にみきの目にお星様が輝いていた。だが、そのお星様を映した目はすぐに恐怖になり変わった。
「誰よぉぉぉーーーあんたっーーー!!!!!!!」
みきが待ちかねていた王子様とは学校一のイケメン高畑ではなかった。
♰♰♰
学校のあちこちで危機が迫っていた一方、視聴覚室ではというと・・・・
『きゃあああああああああああああ!!!!!!!!』
『ふふふっ、これでお終いだ、プリンキュア!』
『残念!それはダミー人形よ!』
『何ぃ~!!!』
『ぷりんできゅわきゅわ~!!!』
『ぎゃああああああああああああ!!!!!!!』
「わ~い!プリンキュアちゃんかわいいいいっ!!!!!!!!!」
のん気な事に丸之内と隣に座っている同じくプリンキュア好きなオタク友達の荒畑と他のオタク連中と共に視聴覚室のスクリーンで対象年齢幼女向けアニメのプリンキュアを見ていたのであった。
「やっぱ二次元は最高だ!」
悪役がプリンキュアを倒したかと思いきや倒したのは実はプリンキュアのダミー人形で本物のプリンキュアによって悪役は倒されて今日も日本の平和は無事にプリンキュアによって保たれたのであった。便所の水の中に突っ込まれていたプリンキュアでさえ丸之内にとっては天使であった。だが、束の間の幸せの世界からそろそろ現実世界に戻ってこないと今度の危険はスクリーンの中のプリンキュアの世界ではなく、自分達の世界に迫っていた。だが、プリンキュアの映画に夢中になっている丸之内と荒畑は気付かない。
「わープリンキュアちゃんの変身シーンだぁああああああ!」
そして、背後から何者かが丸之内の肩を叩いた。




