♰♰♰ トイレ事情 ♰♰♰
黒川が皆より一足早く弁当を食べ終えた後で言った。
「コウちゃんがまだトイレから戻ってこない・・・」
常に時間に制限されている事の多い運動部の本山と東山は食べ終えるのが早いのだが2人は食べる量が多いから黒川の方が先に食べ終えてしまった。トイレという単語が気になって黒川の席に近づいてきた上社はというと怪しい電磁波が送られてくる電子レンジを使いたくないという理由で忍者食とか宇宙食とかあやしげな食べ物をすぐに食べ終えていた。
「そう言えばトイレに行ったきりまだ戻ってこないな。気をつけたまえ学校のトイレは特に異空間とつながっていると聞く。噂によると落ち武者の幽霊の目撃情報があるからな。女子トイレの方で。」
黒川達が通う学校は遥か昔に戦国時代の戦場跡だった為に校舎でうつ伏せに眠ると落ち武者の幽霊に首を斬られそうになったとか、洗面所で刀についた血を洗っている落ち武者の幽霊を見たなどの落ち武者幽霊の心霊話が絶えなかった。
「落ち武者の事を皆は悪霊のように扱っているけど、落ち武者からしたら自分達の墓の上に学校を建てられてさぞかし迷惑だろうな。」
本山が口の中の食べ物を噛みながら珍しく自分以外の者に同情していた。
「しかもよりによってトイレなんかの上に・・・・」
東山は落ち武者の墓の上にトイレが建てられてしまった事に心から同情していた。
「コウちゃんがトイレの中のブラックホールの中に流されてないといいな。」
黒川は岩塚由里が先程言ってた話が奥歯に食べ物が挟まった時のように引っかかっていた。
「なんか心配になってきたから俺、コウちゃんの様子を見にトイレに行って来るよ。」
「待て、黒川。」
弁当箱をカバンの中にしまった黒川が立ち上がってトイレへと向かおうとしたらいきなり上社に呼び止められた。
「もし、何かあった時の為に用心してこれを持っていけ。」
それは『悪霊退散』と書かれたお札だった。
「・・・ま、いっか。ありがとう、上社。一応、何かの役にはたつかもしれないしな。」
黒川は教室から出て一番近いトイレに向かって廊下を歩きだした。




