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♰♰♰ 昼放課のおばかちゃんたち ♰♰♰

 この学校で唯一楽しい時間である昼食タイムが始まった。クラスメイトの女子達は仲がいい子同志で固まりお喋りに花を咲かせながら弁当を食べ、男子達は集団で固まる者もいれば近場にいる者同士で固まったり一人でご飯を食べる者もちらほらいた。黒川は席が離れている丸之内の前の席に座り、丸之内の机の上に弁当を置いて一緒に昼食をとっていた。


「今日の帰りに映画館によってかない?」


黒川はおかずを含みながらも丸之内に話しかけていたが、丸之内は親友との会話よりもスマホとの会話に夢中のようだ。


「え!?あ、亮ちゃん今なんか言った?ゴメン。ゴメ~ン。僕は今、必死に戦っている最中だから亮ちゃんの話を聴いてあげるヒマなんてないのだよ~。」


黒川と話をする時も丸之内はスマホから目を逸らさないで会話をした。


「必死に戦っているって一体、誰?」

「ネットでプリンキュアちゃんのアンチ共の連中とかれこれ6時間は煽り合いの死闘を続けているのさ!あいつら信じられないくらい幼稚でさー」

「幼稚なのはお互い様だ。まぁ、頑張りなよ。ところで放課後は空いてる?」

「実はプリンキュアちゃんの映画シリーズ全作をオタク仲間と見るから空いてないんだ。」


丸之内はご飯を口に含み再びスマホに目が移った。黒川は黙々と弁当を食べながら物思いに耽た。こうして会話が途切れるのも何度目だろう?コウちゃんは自分と会話をするよりも画面と会話する方が多くなった。テクノロジーは人と人とのコミュニケーションを容易にし人間の生活を快適にしてくれた。けど、テクノロジーによって黒川と丸之内が一緒に過ごす時も奪われてしまった。・・・いや、テクノロジーのせいにするのはよそう。これは時がたつにつれて生き方が違ってくる人生にはよくある話じゃないか。と黒川は近づいてくる学校の卒業と共に丸之内との関係も卒業が近づいているのを感じた。その隣では東山が弁当を口に含みながら東山に愚痴っていた。


「あーあ、なんで毎年毎年バレンタインデーのたびに俺らみたいな善良の市民がいつも惨めな思いをしなきゃいけない?ほんと宇宙から隕石が落ちてくるか、宇宙人でもやってくるか、ホラー映画に出てくるような化物や殺人鬼がやってきてバレンタインデーなんて糞つまらないイベントを潰してくれないかな~。」

「バレンタインデーは退屈だ~誰でもいいから俺を殺してくれ~」

「喜んで手伝ってやるぞ。」


本山が冗談で殺してくれと言ったのに東山は冗談のようで本気のようにも見えるあいまいな笑顔を浮かべた。だが、本山の3つ後ろの席に座って机をじっと見ている目の堀が深い不気味な形相をしている男子生徒が本山の口から出た『誰でもいいから俺を殺してくれ』という言葉に反応していきなり青白い顔を上げたが本山と東山は気づいていない。本山は学校に持ってきたクリームパンを口に含めると不満足の表情を浮かべて述べた。


「どうして世の女の子達は俺達みたいな超イケてるかっこいい男を放っていられるのだろうな?理解できねぇ。」

「だよな。」

「理解できないのは自分達の事をかっこいいと信じて疑わない君達の脳内の方だ。」


本山と東山の話を通りすがりで聞いてしまった上社が二人の会話に黙っているのが耐えられずに突っ込みを入れた。上社はまだあの変なアルミホイルで包まれているヘルメットを頭にかぶっていた。


「俺らだって宇宙人の言葉は理解できないつっーの!」


本山が上社に向けてラグビーボールを投げたが上社がかぶっている妙なヘルメットに当たるとラグビーボールは白い煙を出してしぼんでいった。


「そんなっ!・・・・」

「ふふふ・・・言ったハズだ。このヘルメットは防衛の為にかぶっているのだと。」


本山が上社がかぶっているヘルメットに気を取られている隙に東山は本山の弁当箱から玉子焼きを奪って本山に言った。


「きっと世の女の子達は俺達があまりにもかっこよすぎるから声をかけづらいだけさ。」

「道理で俺が女の子達に声をかけるたびにいつも避けられている理由がわかった!俺があまりにもかっこよすぎるから恥ずかしかったのだな!モテる男って苦労するな~」


上社が諦めと哀れみに近い表情をしながら言った。


「やれやれ・・・二次元に逃避はしなくてもこいつらには現実を自分の思い通りに脚色できる単細胞があってある意味うらやましい奴らだな・・・・。」


 その頃、友達の席に集まって昼食を食べ終えて自分の席に弁当箱を片付けに行った岩塚由里は喰らいつくように片手に持っているスマホの画面に映っている文字を見て驚き、片手で口を抑えたが画面から目を反らすと誰かを探すように教室の周りをきょろきょろと見渡すとおばかちゃん達のいる席へと慌てて駆けよっていった。


「ねぇー!大変っ!聞いた?今、学校で1年生のテニス部員の男子と女子マネージャに体育の授業中だった1年生の男子生徒3名が行方不明だってー」


岩塚由里はスマホで別のクラスにいる友人から得た情報を知らせておばかちゃん達の反応に期待したが、おバカちゃん達の返ってきた反応はあっけなかった。


「対した事ねぇって。うちの学校じゃあ授業をサボる生徒が出てくるのはいつもの事じゃねぇか。今日だってクラスの半数しか学校に来てないし。1年の時に授業中にトイレに行くと言い出したままずっと行方不明の奴とかいたじゃんか。」


本山は岩塚由里の話しよりも弁当を食べる事に夢中だ。東山も口に入れたごはんをもぐもぐと含みながら思い出したかのように言った。


「そういえばあいつ、いつまでトイレに篭っている気なのだろうな?」

「そういえば俺らなんてテスト期間中に学校をサボって神宮球場まで行ってきたし。」

「はははっ!TVカメラに手を振っている本山と東山の姿が映って学校をサボった事がバレたんだっけ?あれはドラゴンズの試合の内容より面白かった!」


会話が耳にはいった黒川が思い出し笑いをして弁当を食べるのを中断して話し出した。


「しかも、ヤクルトファンと混じって一緒に傘を持って東京音頭を歌っていたし。ひどい売国奴だった。」


丸之内も目の前にいる黒川の話を聞いて過去を語り出した。おバカちゃん達が今、学校で起きている異常事態に対して無関心で危機感がまったく見られない事に岩塚由里はイラ立ってきた。


「学校じゃあいつもの事って言うけど!あれもいつもの事なの!?」


岩塚由里が指した先をおバカちゃん達が見ると教室の壁に頭を打ち続けているクラスメイトの男の子がいた。


「普通。普通。あれくらいの事は上社だって時々やっているじゃないか。」


本山は水筒に入れた煎茶をずずずーと音を立てながら飲んだ。


「時々じゃない。今もやっている最中だ。」


そう言った上社は今まさに壁に頭を打ち続けていた。


「じゃあ、あれは!?」


岩塚由里がまた指をさした。その先を見ると大量に色鉛筆を持った生徒がそのうちの一本を取り出すといきなり鉛筆けずりのように鉛筆をガリガリと食べ始めた。


「きっと彼は鉛筆を削りたいだけなのだよ。」


丸之内がスマホの画面とにらめっこをして岩塚由里の心配事には完全に無関心だった。


「確か昔いたよなぁー。チョークをラムネみたいとか言って実際に食べてみた奴がさ。」


本山が目を天井に向けてぼんやりと懐かしい過去を振り返っていると東山がすかさず突っ込みを入れた。


「おいおい。チョーク食べてみたのって本山の事じゃないか。美味しくはなかったって言っていたけど、チョークを食べてお腹を壊さないのがありえない。本山のお腹は四次元ポケットにでもなっているのか???」


岩塚由里と上社以外がどっと笑い出した。岩塚由里の怒りはもう有頂天まで達した。


「あのねっ!おばかちゃん達の思う普通と普通の人達が考える普通と一緒にしないでッ!」


おバカちゃん達が普通の人達が考える普通とはどういう事なのか?と一所懸命に頭を悩ませている中で頭を壁に打ち続けるのを中断した上社だけは岩塚由里に賛同した。


「僕は君の言っている事が理解できる。今が非常事態だって事をわかっている。」

「ほらっ!普通の人なら今、学校で起きている事が異常事態だってちゃんと理解しているのだからっ!おバカちゃん達は上社君を見習いなさいっ!」


そして上社の演説が始まった。


「そう!非常に危険だ!行方不明になったうちの生徒達はきっと時空の歪みに触れてしまいパラレルワールトに飛ばされたに違いない!それともタイムトラベルをしたか!?もしかしてうちの学校には異次元へとつながる魔界トンネルがどこかにあるに違いないっ!」

「あっー!もうっ!お願いだからこの学校で私以外の普通の人はいないのぉ!!??」


岩塚由里は自分が思っている以上におバカちゃん達がおバカちゃん達である事に気づいた。岩塚由里は怒りで頬がまるでひまわりの種を大量に頬に詰め込ませたハムスターのようにふくらませていきながらおバカちゃん達に向けて言った。


「おバカちゃん達に映画よりももっと恐ろしい事を教えてあげる!」


おバカちゃん達が岩塚由里に注目した。


「現実よっ!現実はね、もっと厳しいのっ!せっかくおバカちゃん達にも義理チョコのあまりでもあげようとしたけど、もう一生あげないっ!」

「えぇー!!」


本山と東山はあわててご機嫌斜めな岩塚由里の所へと機嫌を治しに行った。






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