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♰♰♰  卒業〜これから何処へ行くのか〜 ♰♰♰


 学校の門から離れた道の木陰で女性の自衛隊員の一人が地面に吐いていた。


「オェエエエエエッ!!!!!」

「いいからお前、休んでおけ。」


中年にさしかかる年頃のベテランと思われる顔つきの自衛隊の男性は吐いている女性の自衛隊員の背中をさすってあげて言うと、すぐに校舎へと向かって行った。


「・・・・・すみません。」


まだ年齢的に若く、非常時にも化粧はせずに出勤した新入りの自衛隊員の女性はこの異常な事態を受け入れるのに時間が必要だった。だが、受け入れる前に根が折れてしまいそうだ。


上司は今までの自然災害の救助や海外の戦地に向かった事もあり、例のない事態ではあるが慣れるのに時間はかからなかった。自分を心配してくれた上司や女性の同僚達も恐怖を押し殺して任務を優先しているというのに自分は恐怖に打ち負けてしまった。自身の力不足を感じ、つい弱音を吐いてしまった。


「この仕事続けられるかな・・・・」


この若き自衛隊は恥ずかしさと申し訳なくて校舎で仕事に励む同僚達に背中を向けた。


一息つこうと胸ポケットからタバコの箱とライターを取り出し、箱の中から一本のタバコを取り出してそれを口に加えるとライターに火をつけて口に加えたタバコに火を当てようとしたら突如、何者かに背後から肩を叩かれた。


「わっ!!」


ひょっとしてあのおぞましい化物が自分を襲いに来たのじゃないかと恐る恐る後ろを振り向いた。


「そのタバコ、俺にくれる?」


全身、血まみれの名城が自分の目の前に立っていた。その生生しい姿に一瞬、ゾンビだと勘違いをした。全身についたその血がもはや自分の血なのか、ゾンビの血なのか判別できないが、ひと目で彼が今までに悲惨な目にあってきた事を語っていた。なのに高校生らしくさわやかな笑みを浮かべているギャップが妙な気分にさせられた。


「そんなに警戒するな、今の俺は足も体の何もかもがびんびんに立たないからさ。」


名城は妙にハイテンションのあまり普段は女性の前ではけして言わない下ネタをつい口走ってしまって顔が一瞬まずいと言うような表情をしたが、あまりにもこの場の空気にそぐわなく唐突すぎて女性の自衛隊員には名城が言っている意味を理解できていなかった。名城はさっき言った言葉を打ち消そうと話題を元に戻した。


「さっき言った言葉は忘れてさ、一息でいいからタバコくれない?」


今まで何度も修羅場をくぐり抜けたであろう名城の全身を見れば息が詰まる思いをする反吐も飲み込んで自衛隊員は指に挟んだタバコを名城に授けようとした。


「・・・・いいよ。」


だが、名城の手にタバコを授ける直前で自衛隊員の手が止まった。若き女性の自衛隊員はタバコを持つ手をギュッと握り潰した。名城が不思議がっていると自衛隊員は名城にタバコの変わりに胸ポケットからある物を名城に渡した。


「あんたにタバコはまだ早い。変わりにコレをやる。」


名城の手に渡された物はフルーツの味がするシガレットガムだった。名城は機嫌が悪くなるかと思いきやまんざらでもなさそうだ。


「まっ、これでもいっか。」


名城は口にシガレットガムを含んだ。女性の自衛隊はタバコに火を着けて吸い直すと名城と一緒に風に揺れて空に飛び散る火の粉を一緒に見た。名城はガムを口から音が出るほど大げさに噛みながら夜空に向かってつぶやいた。


「いつになったら人類は木星に辿り着くのだろうな。」



※※※



 突如、激しい爆発音につられて黒川達は自分達がいままで辿ってきた道を振り返った。巨大なモンスターの城は火の粉を撒き散らして炎上していた。


葛藤も後悔も困難も迷いも焦りも何もかも飲み込む勢いで燃やし尽くして行った。ようやく自分達をしばり続けていた長い悪夢が終わった。


黒川達は燃える炎に顔を赤く照らしながら苦しみの中から自分達を成長できると学べた学校が燃え尽きるのを黙って見ていた。中には学べなかったヤツもいるが。もう振り返る事など二度とない道。一生そこから出られない者もいるが。


不謹慎にも今まで暮らしてきた学校や思い出やかつての友人たちが燃えていくのが綺麗に見えた。それはろうそくの炎が燃え尽きる前の最後の輝き。何もないと思っていた場所が失われた後で価値に気づくのは何年かたった後だった。堀田が燃える学校をポカーンと口を大きく開けたまま言葉を発した。


「学校が燃えちまった・・・俺達はこれからどこに行けばいい?」


「とりあえず今は・・・」黒川が言うと横にいる神宮西の顔を見てお互い微笑みあってから言葉の続きを言った。「来年のバレンタインデーまでには生き残る事かな。」


神宮西と黒川は言葉もないのに二人は自然と手を繋いでいた。口には出さなくてもお互いに同じ気持ちである奇跡が黒川と神宮西に起きていた。





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