♰♰♰ 映画の時だけはやさしいジャイアン ♰♰♰
黒川がひとつだけ気になることがあり、自衛隊員に聴こうとしたのだが、仕事中の邪魔をしたくなかったので聴くか聴くのをやめるべきか何度も考えをいったりきたりしていたのだが、自衛隊の中で仲間と海外ドラマの話をしているのを耳にしてこの人ならと思って黒川はたまたま自分の近くにいた二人の自衛隊の人に近寄って訪ねてみた。
「あのーお忙しい所すみませんが・・・ところで自衛隊の皆さんはどうしてこんなど田舎に学校があるとわかったのですか?」
「それはだね!」
そう言って自衛隊の一人がズボンのポケットから取り出したスマホを黒川に見せつけてきた。
「これを見たからさ!」
神宮西も気になりだして黒川の横から顔を乗り出して自衛隊員のスマホの画面を一緒に覗いた。今は亡き荒川のSNSにあるページだった。
荒川が死ぬ間際にゾンビに食われながらユーチューバーになりたい信念で撮った最後の動画が世界中から視聴されており、死んだ後になって視聴数とコメント数は世界の人口の数を抜いて世界中から友達申請が来ていた。
「俺達は荒川のおかげで助かったのか・・・?」
「今じゃ立派なユーチューバーになったわね。死んじゃったけど。」
「荒川はもうこの世にいない。だが、消えたわけじゃない。ネットという現代の文明の中で荒川は永遠に生き続けているのだ。」
黒川が火の粉が舞う遠い夜空の星に荒川の顔を浮かび上がらせて言った。
「つまり、自分の生き恥が死んだ後でもネットでは一生残るって事ね。」
「その通りだ。今の内に無料でダウンロードしたアダルトビデオを消しとこ・・・・」
黒川がズボンからスマホを取り出してスマホをいじりだした。
※※※
ここに集まって来たのは実は自衛隊だけではなかった。地元のローカルTV局までもがなんと荒川の動画を見て無断で報道したのがきっかけでわざわざ田舎の底辺学校まで取材しに来たのだ。地元の人には夕方のニュースでよく知られている女性リポーターが誰に取材しようかと生存した生徒達に目を光らせていると視聴者の注目を浴びそうな一際目立つ変なヘルメットを着けて歩いている上社に目が止まった。
「あのぉーすみませんっ!そこのヘルメットを着けている君!」
「僕の事かね。」
ナレーターに呼び止められて上社が止まった。取材レポーターの女性がマイクを持って上社に話しかけた。
「君、この学校の生徒でしょ?この学校で起きた惨劇について取材の時間を頂いてもいい?」
「よく訪ねてくれた。まずはこの地球を裏で操っている宇宙人の存在から話さなければ。」
「宇宙人???それはあなたの事じゃなくて?」
女子アナはいつ本題へと入るのかと待ちながら上社のオカルト談話を宇宙の始まりから聞かされ続けるハメになった。
※※※
別の場所では堀田が地元の新聞記者達に自分の武勇伝を聴かせていた。
「僕はそこで大量のゾンビ集団に囲まれていた。皆は怯えて立ち向かえない中で僕は勇気をふりしぼり、立ち上がると大量のゾンビ共にワンツーパンチを喰らわし~」
得意げにボクシングのワンツーパンチをして「シュッシュッ」と殴っている時の効果音を口で出しながら新聞記者に話していた。その様子をたまたま怪我をして片足を引きずりながら横を通りすがった名城が見て呆れていた。
「やれやれ・・・・」
「名城。」
背後から突如自分を呼ぶ声がした。後ろを振り返るとそこには気味が悪い程に馴れ馴れしい表情をした黒川が立っていた。その後ろで黒川を辞めさせたがっている神宮西もいた。
「お前ってさ、いい噂を聴いた事がないし、いつも俺やコウちゃんの事を殴っては財布を取っていたし、一ミリもまったくいい印象がなかったけど、でも、俺は信じていたぜ。お前が荒れているのはきっと家庭に問題があって過去に何かきっと悲惨な事情があったからで、根は結構いい奴だっ・・・・」
黒川が最後まで言い終わる前に名城に顔を殴られていた。黒川は地面に尻もちをついた。神宮西はやっぱりねと表情に出ながら尻もちをついた黒川の背後にしゃがんだ。
「今のはお前が理科室で俺の事を殴った時の仕返な。それと俺んちは代々、山芋とヤーコンで生計を立てている農家の長男で父ちゃんもかーちゃんもじっちゃんばっちゃんにひーばーちゃんや兄弟が5人もいる。」
名城は黒川のズボンのポケットから勝手に黒川の財布を抜き出し、お札を全部抜き取ると自身の胸ポケットにしまいこんで財布だけを尻もちをついたままの黒川の額に投げ捨ててから黒川と仲良しだと思われたくないみたいに早々とその場から立ち去った。神宮西が名城に殴られて立てないでいる黒川の両腕を支えてあげながら言った。
「ドラえもんの映画を見てないの?ジャイアンは映画の時だけしか優しくしてくれないのよ・・・」




