♰♰♰ 白い光の向こう ♰♰♰
・・・・その後で車内はとても白い光で満たされていった。
恐怖で締め付けていたゾンビのいない世界。思っていた以上に死とはとても穏やかで満たされる気分がした。名城と池下をのぞく生徒達が目をギュッとつぶって白い世界から天使が迎えにくるのを待ち望んでいた。
・・・だが、時間がかかりすぎている。天使はまだ迎えにこなかった。
「なぁ?まだあの世についてないと思っているの俺だけ????」
黒川の声を聴いたみきはテストが終わって緊張から解放された後のように強張っていた体をほぐし始めた。
「おっそいわよね~いつまで待たせる気かしら?」
「俺、天使の羽をつけたコウちゃんが向かいに来てくれるのかと思っていたのにさーぜんぜん迎えに来ないし何んていうか・・・」
「長すぎてしらける?」
神宮西と黒川が言いたかった事を言葉にした。
「そうそう!それを言いたかった!」
「あ、あのー・・・」
池下が何か言いづらそうに話しかけたが目を開けた上社に言葉を遮られた。
「この青白い光は何億光年の惑星なのか???やっと僕は自分の星に辿り着けた!」
「いやだから・・・・」
池下が言うタイミングが掴めないようだから名城が呆れながら池下の変わりにおばかちゃんたちに伝えた。
「俺達はまだあの世に行ってない。そもそも向かってすらいない。」
「へ????」
まぬけた声が車内に大きく反響した。みきが横を向いて名城に自身の片腕を見せつけた。
「だってほら腕が血で濡れ・・・あれれ?おかしい?傷がないのに血がついている??」
「これ、私達の血じゃないわね・・・」
神宮西が顔についた血を手で拭き、隣にいる黒川が車内を見渡した
「ところでゾンビは???」
皆も車内を見渡し始めたが先程まで車の周りを囲んでいたゾンビ達の姿がいなくなっていた。代わりに車の中まであちこちに血が飛び散っていた。
「ここまで来たら普通は気づくだろ・・・」
名城はなかなかわかってもらえなくてうんざりしてきたから白い光を放っている前方を指した。皆は名城が指した先を見た。
先程までは白い光が自分達を天国へ導く光だと思っていたが、じっと白い光の先を見つめているとやがてぼんやりと黒い人形の輪郭が浮かんできた。ひとつだけではなくふたつ、みっつ。さらに大きな乗り物と大勢の人影が浮かんで見えた。
「気をつけろ皆っ!宇宙人がきっと僕達を拉致して人体実験しに来たのダっ!」
上社が言う宇宙人らしき者が第一声を発した。
「君たち大丈夫か?」
白い光から返って来た言葉は宇宙人の言語ではなくまるでお家に帰って来た時に家族に迎えてもらった時の温かみのある人間の声だった。
黒川の目が徐々に光に慣れていくとまばゆい白い光の正体は数多くの車に取り付けられたヘッドライトに照らし出された光だとわかった。やがて眩い光の中からはっきりとした人の姿が見えてきた。上社が警告していた人体実験しに来た宇宙人は迷彩柄の格好にヘルメットを被り、銃を持っていた。みきが目をぱちくりと何度も瞬きをしながら最初にその正体に気がついた。
「自衛隊さんっ!???」
「気をつけろっ!自衛隊の皮をかぶった宇宙人が来るぞ!」
上社はまだ宇宙人説を唱えていた。
「よかった!どうやら無事のようだ。」
自衛隊員の喉太い声がしてがみきの横に来ると車のドアを開けてくれた。後から来た二人の自衛隊もすべての車のドアを開けてくれた。
その他の自衛隊員は武器を持って木の裏にゾンビがいないか見渡し、道でくたばったゾンビが本当に死んだのか確認するために足で腕をつっついて反応を確かめてまるでゲームの中のようにゾンビが周辺にいないかチェックしていた。名城は自衛隊員がドアを開けてくれたのと同時にすぐさま黒川達から離れたいかのように車の外へと出ていった。
「やれやれ、あいつらの仲間だと思われるのだけは勘弁だ。」
名城は両手をポケットに突っ込んで黒川達よりも先に白い光が放たれている学校の門の下をくぐって行った。黒川達はまるで今朝の夢から覚めたばかりでまだベッドの中から起き上がれないようにまだ状況がうまく飲めこめないまま導かれるがままに開いたドアから外に出てぼんやりと立ち止まったまま辺りを見渡していた。
「ねぇ!見て!!」
神宮西が黒川の裾を無理やりひっぱって黒川の顔を下に向かせた。
「ゾンビが死んでいるッ!」
黒川達の足元には先程車を囲んでいた無数のゾンビ達が頭に起用に穴を開けられて死んでいた。みきは自分が流したと思い込んでいた腕についた血を見た。
「さっき自分が流した血だと思っていたこれはゾンビちゃん達の血だったのね!」
やがて門の前にある自衛隊員達の大きな角ばっている車の所から聞き覚えのあるどこか懐かしくて温かみのある声が聴こえてきた。
「黒川ッー!!まだくたばってなかったようだなぁ―!!!」
「豊田ぁーーーー!」
黒川が高機動車の窓から顔を覗かせてこっちに手をふっている豊田の姿を見てようやく此処こそが本当の天国なのだと実感した。その背後にも夏樹に麻子に真由、家庭科部の子達など複数の見慣れた生徒の顔が次々と黒川達を出迎えに来てくれた。
「皆?助けにきてくれたの!??」
神宮西の顔に温かみのある表情になった。家庭科部の部長が言った。
「あんた達がまだ逃げきれてない事に気付いたらたまたま学校に向かいに来てくれた自衛隊員さん達と遭遇したの。」




