♰♰♰ これから向かう先には。。。 ♰♰♰
受け取った鍵はキーレスキーになっており、ボタンを押したら右側の中央にある青い車のランプが光った。
神宮西はさっそく青い車に向かうと運転席の扉を開けて中に入り座ると黒川が横の助手席に乗った。運転席の後ろの窓側には名城が座り、その隣に上社がつめて、その横に恭一も入ったのだが後部席は3人までしか席がなくみきだけが車の中に入れなかった。
詰めれば三人は乗れるとしてもただでさえ男三人だと暑苦しくてすし詰めになってしまう。上社がまだ外にいるみきに顔を向けて言った。
「どうやら君の席だけないようだ・・・・」
「あるわ。」
「ええっ!?」
「みきの席はここでいいの!!」
みきが恭一と顔が向かい合うように恭一の膝の上に乗った。恭一は両手でみきの腰を掴み、シートベルトの役目を果たした。それを見た名城は外の空気を吸いたくなって窓を自動で開けるスイッチを押した。
「さーて全員乗ったなら行くよー。」
運転席に座った神宮西がハンドルを回した。
「これでようやく道端にいるゾンビに怯える心配もなく安全な場所にいける・・・。」
黒川はようやく自身の家に帰ってきた時のように安心しきった。誰もがそう思った。
だが、次の瞬間、車がいきなり目の前にある駐輪場に並べて停めてある自転車にぶつかり自転車はドミノ倒しのように横一列に倒れていった。車に乗っていた黒川達もぶつかった衝撃でまるでジェットコースターが急降下して頭がガクッと後ろの背もたれにぶつかった時のように衝撃で頭の後頭部が後ろの椅子にぶつかった。
皆が体制を戻ろうとするのを待たずに神宮西は荒れ気味に方向転換して駐車場の出入り口がある前へ進んで行った。
すると駐車場の横に停めてある車と車の間から1匹のラケットを振っている男子卓球部ゾンビが車の通る道の前に出てきた。どうやらラケットで車に立ち向かうらしい。
神宮西はスピードを緩ませる気もなく卓球部ゾンビを轢いた。轢かれた卓球部ゾンビの一匹は正面の車の方に飛び、ちょうど助手席に座っていた黒川の前にある窓にゾンビの顔がぶつかった。
「ひぃぃぃ!!!!!!!」
運転が開始されてからまだ1分もたっていないのに上社はすでに吐きそうになっていた。神宮西が運転する車はどんどん加速していき、決算セールの売れ残りゾンビ達を無慈悲にも次々と轢く飛ばして行った。神宮西と名城と恭一だけはまるでジェットコースターに乗っているかのようにノリノリだ。
まっすぐに進んだ道を左に曲がり駐車場から抜け出すと輝かしい光が自分達を歓迎してくれた。グラウンドにあるライトがまるで自分達を光の世界へと導いてくれているかのように輝いていた。駐車場から出る時に右に曲がり車は一度も止まる事もなく真っ直ぐに進んだ。
そして次の角を右に曲がり後は校門へと続く一本道を真っ直ぐに進むだけだ。なぜか進もうとしている道には上半身だけのゾンビが木の枝の上にいて、顔だけしかないゾンビ、肉体がバラバラの木っ端微塵でゾンビの形をしていない者が道のあちこちに転がっていた。
どうやら先人達がゾンビ達を片付けてくれた。おかげで校門を出るまでの一本道をスムーズに進めた。車内でようやく少しの余裕が見えてきた。
黒川は横にいる神宮西の方を向いた。それに気づいた神宮西が黒川に優しく微笑み返した。今まで微笑むのが禁じられてきていたかのようだったのがついに解禁されたかのようにお互いに満足の笑みを浮かべた。
窓際から外を見るとスポットライトがついたグラウンドに自分達が遥か昔に置いていった過去の幻影達がうろついていた。
恭一の膝の上に乗ったみきが「重くない?」と恋人だけに言うチョコレートのような甘い声で訪ねて恭一がチョコレートを溶かすように甘い声で「まったく」と返し、狭い車内を甘い香りでプンプンと臭わせていた。
恭一とみきの隣にいる上社はここにいるのを非常に気まずく感じていた。
名城は例のごとく騒いでいる中でも何処でもすぐに寝られる得意技を使ってもうぐっすりと眠っていた。
車中にいる上社を除く5人はようやく落ち着ける場所を見つけた。運転中の神宮西が黒川に尋ねた。
「ねぇ、これからどこに行く?」
今までは自分達の意思とは関係なく義務というエスカレーターにシートベルトで固定されて載せられていたが、校舎を抜け出した後はもう道はない。
後は自分達で道を作らなければいけない。それはようやく他人に決められたルールから抜け出せる喜びもあるが、同時にこれから自由の代償を自分達で責任を取らなきゃいけない人生の重みも感じていた。黒川はふと後ろを振り向いてみた。学校はもう跡形もなく炎に飲み込まれていた。
一匹の男子生徒のゾンビが車の後ろに立ち止まってこれから外へ向かおうとしている黒川達の後を見ていた。そのゾンビが何処か過去の自分と似ているような気がした。もう、今まで自分達の居場所であった学校には二度と戻れない。二度と・・・。
「そうだな、向かう場所は後ろ以外ならどこだっていい!」
「そうねっ!」
その時、車の後ろの道にいた男子生徒ゾンビが片腕をまっすぐにあげて黒川達が乗っている車を指していた。黒川は妙に感じて体を後ろから前に戻した。するといきなり車の上から女子高生のゾンビがフロントガラスの上に落ちてきた。
「ぎゃあ!」
神宮西が驚いて手元のハンドルが狂った。化物によって前が塞がれて見えない車は斜め横に並んである木へと激突した。




