♰♰♰ 飽きた展開 ♰♰♰
床に倒れてしまった上社が立ち直ろうとしたらもうすでにギャル男ゾンビが自分に向かって再び襲いかかってきた。上社は目をぎゅっと潰った。とても恐ろしかった。襲われるのを待っている間がとても長く感じるくらいに・・・。
「あれれ?いつになったら襲ってくるのだ???」
上社はまるで自分が襲われるのを待っているみたいじゃないかと閉じた目を開いた。
ギャル男ゾンビは上社を襲ったのではなく、床にちらばった吉田くんの体につめてあった肝臓を作り物だとわからずに口に加えていた。
木製で出来た肝臓は固く出来ており、ギャル男ゾンビは場所を何度も変えて噛み砕こうとしていた。するといきなりギャル男ゾンビの視界が真っ白になった。
池下がベッドの敷居のカーテンを取ってギャル男ゾンビの頭を真っ白な布に包んだのだ。ギャル男ゾンビはもがきあがくが池下にカーテンの両端で結ばれてしまった。
ギャル男ゾンビが爪で顔に巻きついたカーテンを剥がそうとした時、ぐさりと砂場にスコップを突き刺した時のような音が頭の中でした。視界が上から降りてきた赤色の液体に侵略されて行くとギャル男ゾンビは絶命した。
みきと神宮西が罵声大会をしている間にもベッドの下ではゾンビの口が開き中からサメのような鋭い牙の先が神宮西の細くて白い足首の皮一枚に触れた。そしてグサッ!と肉がうまい具合に突き刺さる音がした。その音を聴いてゾンビはついにごちそうにありつけたと思った。
口内は血の味で満たされ、口の中から血が外にあふれるくらいに・・・なのにいまいち肉を噛んだ実感がわかない。肉の味がしない。その変わりに鉄くさい匂いが口の中を充満している。そもそもゾンビはまだ神宮西の足首の肉を噛み切ってすらいなかった。
じゃあ、肉を刺した時のような音と口に広がるこの香ばしい血はいったいどこから来たのだろう?とゾンビが疑問に思っているといきなり上から紐で引っぱられているかのようにゾンビの頭が上に引っ張りあげられて上にあるベッドに頭をぶつけた。頭上でするどい鋭利な刃物のような物がゾンビの頭の中から引き離される音がすると頭から冷たい液体のような物が顔へとどっと流れ出て来た。
ゾンビの目線が上に向いた。ゾンビの頭上にあるパイプベッドに敷かれてあった敷布団がどかされて網の隙間から自分を上から見下ろす冷酷なまでに無関心な無表情の名城がいた。名城は先程、保健室の戸棚を漁った時に見つけた戦利品である酒の瓶を割ると割れた破片を片手に持ち、それで先程、池下がカーテンの布で捉えたギャル男ゾンビの頭に突き刺すとその後で神宮西の上にあるベッドに乗り、敷居布団をどかして網の隙間からベッドの下にいるゾンビの頭に割れた瓶の先を刺した。
名城が割れた瓶をゾンビの頭から引き離すとまるで噴水のような血のシャワーがゾンビの頭上から溢れ出た。ゾンビは絶命した。名城は顔を下から前へと向けた。ゾンビが倒された事も知らずにまだ罵りあっている神宮西とみきがいた。
「お前らいつまでコントをやっている?」
保健室に入って以来、初めて名城の声を聴いた気がした神宮西とみきはベッドの上を見上げた。名城はさっきまで戸棚にいたのにいつの間にかベッドの上に座ってベッドの下ではゾンビがいつの前にか神宮西の片足を掴む手を離して息絶えていた。
上社の方を向くと上社は片手で鼻の上を抑えてヤレヤレと頭を悩ましている役者の演技をしているみたいだ。先程上社を襲ったゾンビは池下の足元でいつの間にか白い布を頭に被されて頭から血を垂れ流したまま息絶えていた。
「あんた、治療は大丈夫なの?」
神宮西が先程応急手当をしていた名城に尋ねると名城は親指を立てて自分ではなく後ろにいる黒川を指した。
「俺よりあいつの方が重体だぞ。」
黒川はまるで血肉を貪り食べようともしない魂の抜けたゾンビになり変わっていた。
「そう言えばもう一つ言い忘れていたが、僕が保健室で寝ている時にもう一人保健室で寝ていた奴がいたっけ!」
池下が今さら思い出したように言った。
「だからそれを先に言ってっっ!!!」
みきの目はメイクが失敗するわ髪は切られるわもう散々だった。神宮西が疑うような目つきで池下を見ながら訪ねた。
「確認するけどさ。もうこれで保健室にゾンビはいないのよね???」
「ああ、そうだ。ひとみ先生も保健室にいたが、僕が保健室を出る前にひとみ先生は保健室から出ていた。だから保健室で寝ていたのは先程、襲ってきたギャル男ゾンビにベッドの下にいたゾンビだけだ。」
「本当の本当に????」
「本当の本当だ。」
「ほんとぉぉーーーにぃぃぃぃ!!!!!!!!????」
「ほんとぉぉーーーだぁああああああああ!!!????」
「じゃあ!これでもうゾンビはここにいないって事でっ!」
みきが明るい声で言った後を狙ったかのようにバリーンッ!と雷が落ちてきたかのような音がして廊下側と運動場側の窓ガラスから激しく割れてガラスの破片が保健室の中へと飛び散った。
黒川以外の保健室にいる生徒達が思わず両手で自分の頭を抱えて飛び舞っているガラスの破片から身を避けようとした。そして割れた窓ガラスの穴から無数のゾンビの手が保健室の中へと飛び出してきた。
「安心した途端になってこうなる話の展開にはもう飽き飽き!」
みきはもう驚く事でさえしなくなってきた。
「珍しく意見が会うな。」
これが名城とみきの意見が会う最初で最後の奇跡的な一瞬になった。




