♰♰♰ ゾンビ以外の誰か。。。♰♰♰
頭痛と吐き気を止める為に名城は堀田からかっぱらっていたガムを噛みながら保健室にあるガラス張りの一番上の段にある戸棚を一つずつ開けて戸棚の中をあさっていた。名城は動く前に何か食べると胃が気持ち悪くならからと何も食べなかった事を今はすごく後悔した。
空腹のあまり吐き気と頭痛を引き起こした。しかも体中のあちこちに出来た傷が今更になって蒸し返して来た。常日頃から持ち歩いていた鎮痛剤を水なしでいっきに飲み込んだ。戸棚の中は口紅にマスカラに生理ナプキン・・・保健室に必要のない物は沢山あるのに保健室で利用する物はまったく見当たらなかった。
せめて消毒液くらいは置いてあってもいいのに使い終わったつけまつげならいくらでも出てきた。唯一、保健室に使われる備品らしきコットンは化粧を落としたらしき汚れがついており、ひとみ先生は日頃から保健室の備品を無断で使用している事がわかった。名城は上の段のガラス張りの戸棚をあきらめて下の段の戸棚を開いた。
すると棚の中の奥の方に日本酒やウイスキー等のお酒がずらり並べてあった。どの瓶にも酒は入っていなかった。名城は試しに手に取ったウイスキーを逆さまにして一滴でもいいから絞り取って口に含みたかったが、もう瓶の中は乾ききっており、名城は肩を落として落胆した。上社はレターケースの中を探って武器に使える物はないかと探っていた。
「チョコにガムに飴に・・・・・武器に使えそうな物が何ひとつない・・・・。」
校舎の外からはゾンビ達がまるでレストランの入り口の前に置いてにあるガラス張りの中にある食品サンプルのメニューをガラスに張り付いて眺めている子供のようにこっちに視線を向けてくる。神宮西がすばやくカーテンを締めてゾンビの視線を遮らせた。
「はぁー廊下にも外側の出入口もゾンビがいたら一向に出られやしない。」
「だがいつまでもここに留まっているワケにもいかない!どういうわけか学校中が火だらけなのだ!」
池下が皆に訴えてきた言葉に神宮西や上社はきまずそうにお互いに目を合わせた。すると真ん中のベッドの上に腰をかけてアイラインを引きながらお化粧直しをしているみきが笑い声をもらした。
「プッ!そうね、自分達が着けまわった火で自分達を追い詰めるなんてサイコーに笑える!おっと、笑えるこの瞬間を撮っておかないと・・・」
みきはポケットから取り出したスマホでここにいる全員の今のお間抜けな姿を撮ろうとした。だが、突如、横から片手が伸びてきてスマホを取り上げられてしまった。
「ちょ!人の物に何をするのよっ!」
スマホを取り上げた張本人である神宮西が怒って仁王立ちをしていた。
「皆がゾンビから逃げようと必死に模索しているというのに!あんたときたら自分を撮る事しか興味ないのっ!?」
みきは立ち上がると自分のスマホを神宮西から取り返した。
「なによっ!あのいかれたサイコ男だって自分の事ばかりしているじゃない?」
みきは応急手当中の名城を指した。名城はいつの間にか折れていた中指を副木で固定しようとしたが、副木がなかった為に代わりを探ってみたが代わりが見つからず、やもえず瓶の中に大量に詰めてあったうまい棒のサラミ味を副木に使った。
「あいつは負傷しているからいいのッ!」
名城は包帯が見つからなかった為におしゃれなキティちゃんのマスキングテープで中指にうまい棒を巻きながら自分の事を責めたみきではなく、なぜか神宮西に対してにらみつけるような目線で『俺をみきの面倒に巻き込むな』というメッセージを向けていた。みきはさらにもう一人を巻き込もうとした。
「それにあいつだってずっと座ったままじゃん。」
みきは保健室の廊下側の壁際で体操座りをして頭を膝にうずめたままの黒川を指した。
「黒川はっ・・・・!」
神宮西はチラッと黒川の方を見た。だが、黒川はこっちを見てくれない。保健室に入った時からずっとこの調子だ。
「それにみきは充分皆の役に立っているわ!こうして何もしない事で皆の邪魔をしないように心がけているの。」
「なんていい心がけじゃないか。」
上社が心からみきに感謝していた。
「ぐぎゃあぁーーー!!!!!!」
神宮西の長い髪が逆立ちしてスーパーサイヤ人になりそうな程に感情が高ぶった。だが、神宮西がフラストレーションを感じているのはみきだけに対してではなく、この出るに出られない保健室の状況や黒川の様子も様々な感情がもう頂点を極めていた。上社が神宮西の隣によってひとまずはみきよりも神宮西を落ち着かせようとした。
「やめとけ!神宮西くんっ!」
「もう十分怒るのを我慢してあげたっ!」
「そんな事をしたって保健室から出られるわけでもない。」
「それもそうか・・・」
神宮西は上社の言葉に納得し冷静になろうとした。神宮西はひとまず思考の邪魔になるみきから遠ざかろうと二歩ほど後ろに下がった。その時、背中に何か物に当たった感触がすると後ろから何かが自分の肩にもたれてきた。全身がひやっと凍った。顔を横に向けると自分の肩に半分人間の顔で、半分皮が取れて、中にある脳みそや目玉に歯がむき出しの人間の顔と目があった。
「いやああ!ゾンビがいるッ!ゾンビがいるッ!誰かとって!誰かぁぁぁっ!!」
静けさを保っていた保健室の沈黙を神宮西の叫び声が破った。保健室の外に聴こえるくらい大声で叫んだのに黒川は神宮西の事を振り向いてもくれなかった。
「落ち着き給え。」
上社はパニック状態の神宮西の肩を強く叩いて言った。
「それはゾンビではない。」
「えっ?」
上社の冷めたような目線と池下の憐れむかのような目とみきの笑い声を聴いた神宮西は自分一人だけがパニックを起こした事に気付きワケがわからずキョトンとしながらゾンビではないのなら一体何なのだ?と後ろを振り向いた。
「吉田くん?????」




