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♰♰♰ マッドマックスの夜明け ♰♰♰



その光景を荷台にいる生徒達が通り過ぎて行った校門を見て確認し、ついに亜美が長い事言えなかった沈黙を破った。


「私達・・・本当に学校から出られた・・・・」


その時、車の屋根の方から声がした。


「そうッ!私達の力でやってみせたッッ!!!」


副部長はゾンビとの死闘ゆえに女の子なのに青あざとアンパンマンのように顔が何倍にも膨れ上ったがそれがまるで戦争の勲章のように勇ましく、誇らしげに折れた人参を天高くあげた。


それはまさにウジェーヌ・ドラクロワの『民衆を導く自由の女神』の絵のようだ。それに呼応するかのように荷台にいる生徒達は勝利の雄叫びをあげた。豊田は副部長が座っていた座席のドアから顔を外に乗り出すと副部長に訪ねた。


「おいっ!!さっき肉じゃがを作るとか言っていたけど!まさかその人参を肉じゃがに使うのじゃないだろうナッッッ!!!!」

「あっーはははははは!!!!!!!」


副部長は豊田の問にとち狂った甲高い声で答えた。副部長はもうまともに答えられないと豊田は顔を車内に戻すと部長までもが壊れたラジオのように声を出して笑いながらカーラジオのボタンを押すと全力でアクセルを踏んだ。部長はチャンネルを変えるボタンを押し続けていた。


世界がイカれてしまった後でラジオ局の殆が放送中止となっており、どの番組も音楽を流していなかった。音楽の代わりに聞こえてくるののは生生しい悲鳴のヘヴィメタルとドナドナの音楽だけだった。だがこんな事態でも放送しているラジオ局があった。それは勝手にラジオの電波ジャックをしており、ユーチューブで生放送しているラジオ局だ。バンダナを頭に巻き付けた長髪姿の60年代のアメリカのヒッピースタイルのラジオパーソナリティーが言った。


『えー世界がイカれる前からとっくの昔にイカれていたラジオ番組「ドクター・ストレンジ・ラブ」がお届けするこの世紀末にこそふさわしいソング特集をお届けすっぞ!次の曲は肉のミンチさんのリクエストによりボーン・トゥ・ビー・ワイルドぉぉぉぉぉ!!』


曲が流れると副部長と荷台にいる生徒達と呼応するかのように狂気に取り憑かれた笑い声をあげた


「あっーひゃっひゃっひゃっーーー!!!!!!」


部長までおかしくなった姿を見て豊田は時代の変化を感じた。


「なぁ、俺らって数時間前までは文明の中で生きていたよな?もしかして今は原始時代に退化しているのじゃないのか?」


豊田は窓から顔を外に出してチラッと荷台がある後ろを向いた。まるでそこがヘビメタのライブ会場のように皆凶器を持って雄叫びをあげている。その姿を見て豊田は本当にこれでよかったのだろうか?と疑問に感じてきた。


「いや、過去に戻ったのではない。むしろ俺らは未来へと進んでいる。原始時代よりももっと恐ろしい先の未来。今日という日はバレンタインデーではなく、マッドマックスの夜明けだ。」


豊田は窓から顔を車内に戻した。部長はまだ壊れたおもちゃのように笑い続けている。


「文明が崩壊した後の世界は法を守り続けるか、それとも人間を捨てるか、どっちが生き残れるのだろうな?」


豊田の顔には台風が過ぎ去って何もかも崩壊された後の雲一つもない空のように晴やかな表情でもうどうにでもなあれとふっきれた顔になった。まるで自分自身に問いかけているかのように呟いた。


「答えはもう未来へと風まかせにでもするか。」


生存者達を乗せたトラックは時代の逆風を切って学校をどんどん遠ざかっていき大学も社会人も突破したはるか向こうの未来へと突っ走って行った。こうして校舎に残された黒川達以外の生き残りメンバーは見事、校門を抜け出し、一足早く外の世界へと卒業して行った。


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