♰♰♰ 武勇伝 ♰♰♰
副部長が運転中に後ろの様子を伺えない部長の代わりに横にある窓ガラスから顔を外に出して後ろにいる荷台の様子を嬉しげに部長に報告した。
「どうやら後ろの問題はない模様!」
報告を聴いた部長は安心してくれたかと思いきや突然高笑いを始めた。あまりにも不自然な笑い方の為に副部長と豊田は部長がおかしくなったのかと思った。
「はははっ~!!!よかった~!けど、問題は後ろより前にあるのだよね~!!」
豊田は部長が見ている前を向くと副部長もつられて前を向いた。
「うぎゃ~~~~~!!!!!」
豊田の口から悲鳴が漏れた。校舎を抜け出すまであとは突き当りを右に曲がってまっすぐに進んで校門を抜け出せばこの学校とも卒業できるのだが生存者達が乗っているトラックは角を曲がる前に次なる難解が立ち塞がっていた。
生き残っていた40匹はいるゾンビラグビー部員達が敵チームのトライを絶対阻止する為に横へと並んで道を塞いでいた。倒してもまた倒してもゾンビは次々と人間が未来へと進もうとする道に突然あらわれていく。これがこの学校を出ても永遠に続いていくかのように思えた。
「ちくしょー学校からの抜け道はあそこしかないのに!牛乳を買いに行くのがこんなに大冒険だったなんてな・・・」
豊田は倒しても倒してもどこまでもキリがないゾンビ達に正直疲れを感じていた。副部長が両手で頬を抑えて言った。
「なんてこったパンナコッタ!」
「今からでも遅くない。パンナコッタをあきらめて肉じゃがにでもする?」
部長が前から目線を逸らさずに質問した。
「肉じゃが?材料になる肉はいったいどこにあると言うのだ???」
疲れている豊田は甘いパンナコッタよりも家庭の味である肉じゃがを食べるのなら賛成だった。だが、肝心な肉がここにない。
「あら、肉なら目の前にいっぱいあるじゃん。」
「えっ!?」
「ちゃんと捕まっていて!」
部長はアクセルを全力で踏んだ。
時速は60キロを超え急発進したトラックに体がついてこられずに副部長と豊田は後ろの座席に背中をぶつけた。トラックがゾンビラグビー部員達の厚い壁に迫ってきた時、部長が運転するトラックはさらに加速して行き、時速100キロで海にダイブするケープシロカツオドリの如くゾンビラグビー部の防波堤をトラックで貫いた。
ゾンビラグビー部員達はまるでボーリングのピンのようにはじかれた。はねられたゾンビは地面に横に倒れトラックのタイヤに足を轢かれたり、斜め前に吹き飛ばされて横に立ってある街頭の棒に当たって体が上半身と下半身が真っ二つにひきちぎられたり散々な目に合わされた。
※※※
運転中にも関わらず堀田は荷台の上で立ち上がりまるで日頃はJリーグを見ないのにサッカー日本代表戦だけは応援しだすにわかサポーターのように興奮して荷台の外側で疲れた表情をして座っている生徒達と無理やりハイタッチをしていた。
「俺達やったな!車に乗れば後はこっちのもんだっ!俺達はゾンビに勝った!」
生徒達はもうクタクタに疲れていて堀田とやる気のないハイタッチをかわしていた。
「何だよ!どォーしたんだよ皆!ノリが悪いなぁ!!せっかくの勝利を祝おうぜ!」
疲れていていようが元気だろうが誰もが堀田の相手をしたくない。だが、後荷台に背を持たれて座っている髪を明るい色に染めてベリーショートヘアが小顔に似合っている清須亜美が堀田を早く黙らせたくってつい声が出てしまった。
「俺達?ていうかあんたって何かやったっけ?」
可愛い女の子にうざがられているのにも関わらず勘違い男の堀田は声を掛けられた事にテンションが高まってしまい後荷台に向かうと亜美の隣に彼氏の一宮昴がいるのにも関わらず彼氏彼女の間に無理やり入ってくると腕を亜美の肩に回して来た。
「聞きたいか?俺の武勇伝を!」
「いやっ!いいから!離れて!気持ち悪っ!!」
亜美は迷惑そうに堀田の腕をどかして体を堀田から遠ざけていた。
「そうか!そんなに聞きたいのなら仕方がない!」
堀田の声は一層張り上げていった。
「誰も聴きたいなんて言ってねぇーよ・・・」
亜美の彼氏の一宮昴が言っても堀田には自分の都合のいい妄想しか聴こえない。
「聞かせてあげよう!!!俺の武勇伝ッッッ!!!!!!」
その時、トラックが何かにぶつかった地震のような激しい衝動が荷台まで伝わって堀田がバランスを崩して背中をあおりにぶつけると前へうつ伏せに倒れて顎を激しく打った。荷台にいる生徒達も激しい衝撃で座っていても体制を崩した。これは先程、一匹のゾンビを轢いた時の衝動ではなくもっと大きな物を轢いたような衝撃だ。




