♰♰♰ ノセタラダマスの大予言 ♰♰♰
突如、自分達以外の声がして全員が驚いて声が聴こえてきた先を見た。そこには身長の低い割には大きい頭に眉毛が濃くてとても高校生とは思えない中年のおっさんのような顔つきをした上社星郎がいた。上社はその大きな頭にアルミホイルで巻かれていて2本の触手がついているあやしげなヘルメットをいつもなぜか被っていた。
「よぅ、宇宙人!あいかわらずその・・・ナメック星人?いや、アラレちゃんに出てくる頭に尻がついている・・・えーと、なんて言うのだっけ?」
本山はわからない事があるといつも仲が良い東山に聴こうとするが東山も首を横にふってお手上げだった。そしてなぜか本山も東山もわからない答えを岩塚が知っていた。
「ニコちゃん大魔王!」
「そうそう!それを言いたかった!」
「僕のヘルメットを頭に尻がついている異星人と一緒にするのはやめたまえ。何もわかってないようだな。このヘルメットは有害な電磁波から常に身を守る為に被っている。昔はテレビにラジオ、電子レンジから有害な電磁波が出ていたが、近頃は誰もが持っているスマホからも有害な電磁波が送られて来るから用心しないとな。」
「電磁波?」
上社の言っている言葉がチンプンカンプンだった高畑に丸之内がアドバイスをした。
「上社の言っている言葉を真に受けちゃいけないよ。上社はなんせ地球より高度な文明社会で生きていた何億光年も離れた惑星に住んでいる自称宇宙人だからね。」
「なるほど上社は宇宙人だったのか。道理でいつも俺らと言葉が通じないワケか。」
高畑が妙に納得すると上社はまったく緊張感のない面子達に失望し、深くため息を吐いて賢い学者がする真似のように顔を左右に振った。
「フゥー・・・ノンノンノンやれやれ、僕は君達、下等生物の為を思ってもうすぐ来る黙示録に備えるよう忠告してあげているのだがな。」
「はいはい、悪かったよ。だから話をさっさと終わらせてくれ。」
東山はいつも話が長くなる上社のおしゃべりを早く終わらせて次へと進みたかった。人を小馬鹿にするのが楽しみな本山や東山でさえ上社のぶっ飛んだ電波っぷりに突っ込む方も疲れを感じるようだ。
上社はまるで映画に出てくる説明役みたいに手を後ろに組み、夏のやらせ心霊番組に出てくるインチキ霊能者のごとく強面顔になるとまったく緊張感のないお馬鹿ちゃん達の顔をひとりひとり責めるように見つめて、これは重要な事なのだとその濃い顔で重圧をかけているかのようだ。
「また言わせてもらう。チョコレートを食べてはダメだ。」
「だから何でチョコを食べてはダメなのって聴いているじゃん。」
岩塚が演出にこだわるあまり話が前に進まない上社に苛立ちを湧いていた。だが、あまりにも深刻そうな上社の顔つきを見るとこれはただ事ではない何かを感じ、さっきまでは面倒くさい奴がまたやって来たという雰囲気だったのに今は妙な緊張感がただよっている。皆は自然と話すのを止めて上社の話を真剣になって耳を傾き始めた。
「君達は僕のサイト『黙示録は必ずやって来る!』を見ていなかったのかね?僕のサイトを見ている人ならその黙示録が来る日が今日だって事を知っているハズだ。」
上社にサイトの事を言われて一体何の事だろう?と皆が一所懸命に記憶の倉庫から思い出そうとしていたが思い出せる人が誰一人いなかった。だが、かろうじて本山がかすかな記憶から思い出した。
「あっ!そうそう!思い出した!そう言えば学校のコンピュータールームで皆とお前のサイトを見に行った事があった!」
「あぁっ!そういえばそんな事をやっていたな!」
東山も思い出したようだ。
「僕のサイトに訪れて来てくれて有難う。だが、ならどうして毎日、訪問しに来なかったのだね?そしたら今日の黙示録に備える事が出来ただろうに・・・」
そう言うと本山がなんだが上社に申し訳なさそうな顔をしながら言った。
「いや、だって最初は皆とお前のサイトに行って掲示板を荒らしてやろうとしていたのだけど、途中でお前のサイトについているエロ広告の方が気になっちゃて。」
上社の顔が沸騰しそうなくらい真っ赤に染まった。
「僕はずっーと以前から人類に警告し続けてやっていたのだが君達は予想を上回る大馬鹿者だ!まあ、仕方がない。あーだこーだ言っても黙示録は来てしまったのだ。仕方がない。文明社会が崩壊した後の人類温存の為にもバカどもにも一応、忠告しておくか。」
そう言うと上社は演出を狙っているのか皆に背を向けて、窓ガラスに近づき、ガラス越しに外の風景を見ているのか見てないのかいまいちよくわからないまま説明をしだした。
「ついにこの時が来てしまった・・・・。」
皆はまた息をのんで上社の説明を聞き始めた。
「それは今から半月前の事。週末の深夜に僕はパソコンで全国に数百人もいるオカルト愛好会たちが集まってくる人気サイト『預言者ノセタラダマス』の掲示板に集まっていた。」
「日本に数百人も宇宙人が人間のフリをして潜んでいるのかよ!この国もオシマイだな!」
東山が茶の間で家族とテレビに突っ込むように言った。上社は無視して話を続かせた。
「その日もいつもと変わらずに日本にいる未確認生命体について皆と熱く語り合いをしすぎたせいで時刻はいつの間にか深夜を回っていた。だが、深夜の2時頃に唐突に降りてきたレスによって僕達の会話は一時中断した。そのレスの内容によるとこうだ。
『とんでもない情報を入手してしまった。この情報を流せば、日本中が間違いなく混乱に陥る事になるだろう。公に公表したい所だが、そんな事をしたら私は組織に消される事になる。だから匿名で公表できるこの場を借りて私は情報をリークする事にした。たとえ匿名であっても組織はここにも手を入り込むだろうが・・・。とにかく、2月14日にチョコをけして食べない事だ。私が言える範囲はここまでだ。詳細な事を言えなくてすまない。どうか、察して欲しい。そして、悲劇が起きる前にこの情報をなるべく大勢の人に拡散してほしい。なるべく悲劇を最小限に抑える為にも。今後、私がどうなるかわからないが、諸君の健闘を祈る。』 」
重々しい雰囲気に圧倒されて上社が語っている間は誰も口を挟めないでいたが、丸之内が重い口をようやく開いて上社に質問をぶつけてみた。
「それで、君達はその言葉を信じたの?」
「いや、『はいはい、釣り乙。』とレスされただけだった。」
「お前ら、オカルト主義の宇宙人同士のくせに信じてやらないのかよ。」
長い事、黙っている事が出来ない本山がようやく水中から外に出て、やっと酸素を吸い込む事が出来たかのように話に入ってきた。上社は本山を無視して話の続きをしだした。
「そして皆、このレスの事をすっかり忘れて再び日本に生息する未確認生命体についての話題を再開した。こうしてリークされた情報はネットの広大な情報の海に埋もてしまった。だが、再び海底の奥底から救い上げ、再び外へと出した人がいた。それがこの僕だ。僕はオカルト仲間でさえ笑い飛ばしていたのにたった一人で格闘し続けた。
『2月14日』
『チョコをけして食べない事』
『日本中が混乱』
『大勢の人に拡散』
『組織』
そして導き出した結論はズバリこうだっ!2月14日のバレンタインデーの日に怪しい秘密結社がチョコレートに何か毒物でも混入させて日本中を大混乱にさせるテロを計画しているに違いないっっつ!!!!!!!!」
「ぷっ!」
最初に我慢できずに吹いたのは高畑だった。そこから皆、我慢していたものをこらえきれずにまるでドミノ倒しのようにいっきに崩れて吹き出して行った。
「アハハハハハ!!!」
「あーっははははははは!」
「ははは!」
「ぎゃーはっはっは!!!!」
「あひゃひゃ!!」
皆に馬鹿にされた上社は顔を真っ赤にしてまるで沸騰したやかんのように湯気が外に飛び出て今にも中に入っているお湯が外に飛び出しそうになっていた。
「どいつもこいつも僕の言っている事を馬鹿にして笑いやがって!!」
「だって、馬鹿げた話をあまりにも上社がクソマジメに言っているのが面白くってさ!」
東山が笑いすぎて呼吸をするのも辛そうにしながら言った。上社が喋っている間の重々しい空気も皆、黙って上社の話を聞いていたのではなく単に笑いを堪えていただけであった。
「もういいっ!人がせっかく忠告してやったのにこの恩知らずの下等生物共め!これだから高度の文明社会の僕の惑星と違って文明が劣っている地球人は滅亡する道しかないのだ!いいか?後で僕に感謝する時が必ずやって来るからな!必ずだっ!!」
上社がこの捨てセレフを最後に吐いて怒り狂いながら自分の席へと戻って行った。その時、ちょうどチャイムがなって先生が教室に入ってきた。
「お前らーチャイムがなっただろーさっさと席につけー」
こうして様々な思いを抱えてバレンタインデーの朝を迎えた。
この頃の自分達は今に世界大戦を始めようとしていてもバレンタインデーに大好きなあの人にチョコを渡す事とか女の子からチョコを貰える事とか自分達の事ばかりしか考えていない愚か者だった。それなのに愚か者だった頃が輝かしいのはこの時はもう二度とやってこないからだ。もう二度と




