♰♰♰ 闇の奥 ♰♰♰
その頃、ゾンビに襲われたと思ったみきは反射的に目をつぶって甲高い声をあげた。
「やだあああっーー!死ぬ前の自撮りが前歯に青のりがついている写真だなんてやだー!!これじゃあみきちゃんの可愛さが台無しじゃないっ!!」
「ええっ!変顔のつもりでわざと撮ったのじゃなかったのか!」
「みきの顔が変顔だって!!!????どういうことよっ!!!!」
みきが突如聴こえてきた声に思わず反応してしまったが、後でおかしいことに気づいた。
「あれ?ゾンビちゃんが全員倒れている?」
みきは血がついた自身の頬に触れた。
「あれれ?傷がついてない?この血・・・・私のじゃないっっ!!!?」
みきが目を開けると自分を襲おうとしていた4匹のゾンビは全員、体に穴を開けて血だらけになって床に倒れていた。そして倒れたゾンビの代わりにみきの目の前に見に覚えがある人が立っていた。
「あんたは確か・・・・・・」
みきの目の前にはなぜか上半身裸でこれがたくましい筋肉だったら抱かれたいと思うのだがひょろりと痩せ細った日焼けもせずに白くて軟弱な体をしており、手にはいろんな血を吸い取ったような赤く輝く三角定規に今はメガネをかけてはいないが目には魂がやどったようにキラめいており、映画ランボーのスターローンのようにネクタイを頭に巻いている池下恭一の姿があった。
※※※
闇の奥に近づくにつれて闇に飲み込まれていた景色が少しずつ浮かんできた。生徒用の下駄箱の隣の廊下で何か芋虫のような物が蠢いているのを見て黒川は恐怖で体をゾッとさせたが耳に残って離れない『助けて』という言葉を思い出すと恐怖心は首で横に振り切って勇気をだして蠢いている物の所へと進んで行った。
きっとあそこで蠢いている人こそずっと俺らに助けを求めていた人に違いない。黒川はそう確信して足を早く進めた。だが、足を進めすぎて足元に何か液体のような物を踏みつけしまい黒川は足を滑らせて転んでしまった。
「いってぇー!!なんだよ、これは・・・」
黒川が液体に濡れた手を見た。もうそれは今日で何度も見慣れた物だった。黒川はゆっくりと目線を足元にずらした。すると足元には赤い水たまりが出来ていた。
「下駄箱で一体何が起きた????」
黒川は先程見た下駄箱の横の廊下に蠢いている何かに目を注目した。
「亮ちゃん!コケたみたいだけど大丈夫?」
「頭を打ってないといいけど!」
神宮西や丸之内が黒川の後を追ってやってきた。黒川は依然とコケた時から腰を床におろしたままで後ろにいる神宮西や丸之内に顔を向けずにただ指を前に刺した。
神宮西と丸之内は黒川が指した先を見た。下駄箱の光景を見て絶句した。生徒達が使い続けて汚れが深く染み込んでいる下駄箱の跡形も一晩で真っ赤に染まった。黒川が下駄箱の横にある廊下で見た何かは両腕が結束バンドできつく締められ両足がなく、まるで生まれたばかりの幼虫が土から這い上がってきたばかりのように血の海をもがいて蠢いている男子生徒のゾンビだった。両目がなく、目から涙のような血を流し口をもごもごと動かして『たすけて』叫んでいるように見えた。
「ね、ねぇ?亮ちゃん。上社が下駄箱にはゾンビが多いと言っていたけど、ゾンビが機能していないと言っていたっけ?」
「言ってない・・・・・」
上社が言った通りに下駄箱にゾンビが集まっていたが、ゾンビ達は顎がなかったり、足がなかったり、鼻がもぎ取られ、体の一部が欠落しており、おぞましい惨劇を物語る赤い血が天井まで飛び散っている。彼らは化物というよりも野戦病院にいる体の一部がかけた兵士のようだ。
「なんか変だ。ゾンビに結束バンドで両腕を縛る知能なんてある?」
丸之内の言葉を聴いた途端、神宮西は現実には理不尽な面があると同級生達よりも早い時期に理解してしまった為に勘づくのがいち早かった。神宮西は後ろを向いた。上社と名城が自分達の後を追っかけに来ている。神宮西は上社と名城に向けて叫んだ。
「来ないでっ!罠よっ!!!」
上社と名城はわけもわからないままではあるが神宮西の言葉の通りにその場に立ち止まってくれた。上社と名城がいったいどういう事なのか神宮西に問い詰めようとした。だが、丸之内の隣にある階段の深い影から現れてきた何者かが手に持っている長く硬い棒のような物で階段に近い所にいた丸之内の頭を殴った。




