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♰♰♰ 未来へと向かって・・・ ♰♰♰

 ついにゾンビ達は集団の力で教室のドアを引いていっせいに教室の中へと入った。

名城がひそんでいる教室の中は電気がついていなくて外の闇よりも暗く宇宙より静かでゾンビ達は月の光だけを頼りに中の様子を伺った。


しだいに目が慣れてきて教室の中を見渡せるようになったゾンビ達は騒然とした。名城が教室の入る前からすでに教室に残っていた柔道部ゾンビの一匹目が窓から上半身をだらりと垂らしたまま倒れ、二匹目は両腕と両足がないまま黒板の下の壁にもたれ、胸と頭には椅子の4本の脚が刺さってある。三匹目は顔がまるでバターナイフで削られたように顔の皮が削り取られていて顔の皮膚が何処にも見当たらなかった。


教室に真っ先に入った一匹の女子生徒ゾンビの頭上から何か冷たい物が床に落ちてきた。女子生徒ゾンビは下を見ると床に赤い血が濡れていた。どうして上から血なんかが???と思い女子生徒ゾンビは上を見上げた。すると天井に柔道部ゾンビの顔の皮が張り付いてあった。顔だけとなった柔道部ゾンビと目が会うと顔の皮膚も重力に負けてピザ生地のように床に落ちてきた。


ゾンビ達は思わず後ろに引下がった。仲間の失った顔は見つかった。だが、この教室にいるはずの肝心な名城の姿が何処にも見当たらないのだ。この教室はどこかおかしい。ゾンビ達が勘付いた途端、自分達の背後にある扉がピシャリ!と勝手に閉まった。それと同時に別の所にある窓が開く音もした。


ゾンビ達は一斉に後ろを振り向いた。すると教室の前と後ろの自分達が入ってきた扉の二箇所が外側の廊下から何者かの手によって勝手に閉ざされていたのだ。唯一、前と後ろにあるドアの間の中央にある出入り口用ではない小さな扉だけが空いていた。そしてその扉の窓枠の下に両足を乗せ、両手で上の窓枠をつかみ、スッポンの棒の部分を脇にはさみ、口には血だらけの包丁を挟んだ名城が立っていた。


ゾンビ達が慌てて名城を追っかけた時には名城はとっくに廊下の床に着地し、ゾンビ達が真ん中の窓にたどり着こうとしたその時には、教室の外の廊下から丸之内がひょっこりと窓の中の教室を除くように現れてきて次の瞬間には窓をピッシャリ!と閉ざされてしまった。


ゾンビ達は閉まった窓を開けようとドアの取っ手を何回も引いてみたが窓はびくとも動かない。外側からほうきをつっかえ棒変わりにして教室の中から扉を開けさせないようにしているようだ。ゾンビ達は自分達が来た教室の前側にあるドアへと向かい、ドアを何度も引いて開けようとしてみたが、ビクともドアは動かない。後方のドアの前に集まっていたゾンビ達も試してみたがここも同じくドアが開かないようだ。廊下に出る扉は完全に閉ざされた。


どうやら自分達は完全に閉じ込められたらしい・・・。教室の外の廊下で名城が口に加えた包丁を丸之内に押し付けて眉間にしわを寄せて明らかにイライラした態度で周囲に文句を言った。


「来るのがおせー!」

「あいつが手に持っていたサラダ油を床にこぼしちゃってさ」黒川が親指でみきを指した。「油で濡れた廊下が歩きづらかった。」

「なによー!何もしていないからと言ってみきに重たい物を押し付けたあんたらが悪いのだからねー」

「じゃあ変わりにコイツを持て。」


名城がそう言ってズボンの後ろのポケットから何かを取り出した。みきは餌を貰う前の犬のように興奮してしっぽが横に動き回りそうなほど浮かれた気分で両手を差し出した。名城はポケットから取り出した物をみきの差し出した手の上に置いた。


「ぎゃあああああ!!!!!何よコレッ!!!指じゃないのッ!!!!!!」


みきは名城からもらった指を教室の窓ガラスに投げ捨てた。その様子を教室で閉じ込められたゾンビ達はいらないなら自分にくれーと言わんばかりに窓ガラスに口を押し付けて指を食べようとしていた。ゾンビ達は名城を追い詰めたと思っていた。だが、追い詰められたのは自分達の方だった。端から自分達は名城とその仲間達の罠にハメられていたのだ。


ゾンビ達はドアについている長方形の廊下が見えるガラスにへばりつき、外にいる大勢の餌を名残惜しそうにガラスを叩き、口にガラスを押し付けるが、外側にいる生徒達は中に閉じ込められたゾンビ達をもう過ぎ去った過去の物として後ろを見てはおらず自分達が向かう未来である前へと進んで行った。ゾンビを一層した後の廊下には明るい声が廊下中に響き渡っていた。


「ねぇー学校から出た後で皆とショッピングセンターに行こう!」

「いいね!今ならお金の心配をする必要もないだろうし!」

「おい、やめろ。ゾンビがいる世界でショッピングセンターに行くのは自殺行為だ。」

「いいじゃないのか、かえってロマンがある。」


生徒達はもう自分達がこれから向かう先の未来の話をしていた。教室の中で閉じ込められたゾンビ達もつい今朝まではこの学校を卒業して大学へ行き、何処にバイトしにいくか誰と結婚したいか未来の話に花を咲かせていたらゾンビ騒動が起きて未来が永遠に失われてしまった。


ゾンビ達は未来へと向かって行った生徒達をもう未来にも過去にもいけない教室の中で見ているだけだった。

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