♰♰♰ 古典的なワナ ♰♰♰
切り込み隊長の名城は一足早く第1校舎の廊下を走っていた。廊下にいるゾンビは卓球部ゾンビしかいない。卓球部ゾンビは生きていた頃の本能のままにラケットを振って名城に挑んだ。が、名城は何もせず卓球部ゾンビの横を通り抜け真っ直ぐ進んだ先にある突き当りの廊下の左横にある階段へと向かって行た。
理科室から外に出た時はそこら中にバケモノがいたのにこの廊下はまだ一匹しかゾンビがおらず、しかも不気味なほど静かすぎる。下に降りる階段へと曲がる角まであと、5メートル・・・3メートル・・・・そして1メートルを切ったその時、強烈な死臭がした。名城は階段へと向かう曲がり角の前でいきなり立ち止まった。本能が逃げろと危険信号を送った。
名城は反対側に向き直し、自分が来た道へと慌てて引き返していった。それは間違ってはいない選択だった。名城が走って逃げた後で下へと向かう階段から地獄ツアーへと案内してくれる行進曲が流れ、今日うんざりするほど見てきたゾンビ達の大軍が下の階段から4階へとぞろぞろと登ってきた。15匹以上はいるゾンビの大行進はついに4階の廊下へと出て来た。さらに名城が通り過ぎた教室の中からも騒ぎを聴きつけたゾンビ達が教室のドアから廊下へと出てきて地獄への案内ツアーの観光客に紛れ込んだ。
名城がちらっと後ろを振り向いてみると先程、目にした時よりもゾンビの数が増え、今や20匹以上は集まっている。ゾンビ集団は非情にゆっくりとした足取りではあるがかえってその動きのトロさが集団にもなるとこの世の者ではない不気味さがあった。しかし、渡り廊下まで行けば生き残りの生徒達と合流できる。
だが、進もうとした矢先にある教室の横の扉から6匹のゾンビが廊下へと出てきた。名城は走るのを止めて後ろを振り向いた。前にも後ろにもゾンビがいる。完全に挟まれてしまった。
だが、前と後ろがダメならば横がある。名城が今いる所のちょうど隣に教室があり、教室の前と後ろに扉がありその真ん中には窓があった。名城は自分がいる所から近い教室の前側のドアを開け、暗闇の教室の中へと入るとすぐにドアを締めた。ひとまず廊下にいる邪魔者達からは逃げ切れた。
だが、教室の中にもアイツらはいるかもしれないと、思い出したよう目だけで教室を見渡した。悪い予感は当たり、闇の中に紛れ込んでいた3匹の体格がごっつりしている柔道部のゾンビがいきなり教室の中に潜り込んできた餌へと足を進めていた。廊下に残された名城を追っかけてきたゾンビ達は名城がいる教室の前側と後ろ側の二つのドアの前に集まっていた。名城の仲間達はまだ渡り廊下にいて名城を助けに第一校舎の廊下に出てくる気配がない。時が刻むにつれて名城のタイムリミットがどんどん迫ってきていた。
※※※
生徒達は次々と渡り廊下から第1校舎へと渡って行った。そして最後に渡り廊下に残っていた豊田も余裕綽々で第1校舎へと渡り切った。だが、渡り廊下にはまだ生き残った二匹のゾンビがいた。
先頭を歩く男子生徒ゾンビが片足あげて渡り廊下から第一校舎の廊下へと足を踏み入れようとしたその時、第一校舎へと踏み入れた片足が何か紐のような物に引っかかったような感触がするとゾンビの体はバランスをくずして体を前に倒れ、ゾンビの体は第一校舎の廊下の床に垂れている油のような滑りやすい液体に体が滑ってまるで腹ばいで氷の上を滑るペンギンのようにゾンビの体がくるくると回転した。
後から渡り廊下からやってきた女子生徒ゾンビも同じく渡り廊下から第一校舎へと足を着地した途端、地面に落ちていた紐のような物がいきなり垂直に貼ると紐に足をつまずいて前に体が倒れて第一校舎の廊下に腹ばいになって転んでカーリングのように滑り、先頭で滑っていた男子生徒ゾンビに体当たりをすると先頭で滑っていた男子生徒ゾンビは当てられた衝撃で渡り廊下の向かい側にある階段へと体が向かっていき、階段の前になぜか置いてある腰の高さまである容器へと体が激突した。
容器は3階から4階へと上がる階段の下へと傾いた。容器に貼られているラベルには『液体窒素』と書かれてあった。
ちょうど3階から4階へと向う階段には餌の臭いを嗅ぎつけてやってきた5匹のゾンビ達が階段を登っていた。先頭を歩いていた男子生徒のゾンビが何か物が激しくぶつかる音を聴いて階段の上を見上げた。すると容器が階段の上からまるで軽くステップを踏んでいるかのように液体窒素を撒き散らしながら転げ落ちていき男子生徒ゾンビの足元へとぶつかると撒き散らした液体窒素がかかった男子生徒ゾンビの両足が一瞬で氷着いた。
容器の中に入っていた液体窒素は下の方で階段を登っていた3匹のゾンビ達にかかり、3匹のゾンビ達は氷漬けになった。
第1校舎の渡り廊下の入り口の横の左側に黒川と右側に丸之内がしゃがみこんで2人は同じ一本の図太い輪ゴムで作った紐の端をひっぱりゾンビが渡り廊下から第1校舎の廊下へと足を踏み入れてきた途端に紐を垂直に引っ張って転ばせる罠を仕掛けていた。紐を離して先に立った丸之内がしゃがんでいる黒川に手を差し伸べながら罠が成功した事を興奮気味に語った。
「やっぱしかけるなら古典的な罠だよね!」
「だなっ!」
黒川は丸之内に差し伸べられた手を握り勢いよく立ち上がると黒川と丸之内は床に垂れている油の道を踏まないように慎重に小走りをしながら仲間がいる廊下の先へと向かって行った。




