♰♰♰ 武器選び ♰♰♰
黒川は生き残った者が変人ばかりで果たしてこれでいいのか?という気がしてきたが、リーダーが支持を出さなくても皆は自然と動いた。手分けをして豊田の支持を参考に武器の材料となる物を探し始めた。
ビーカーにアルコールランプ、試験管にスポイト、マッチ棒、ナトリム、液体窒素、乾電池にワイヤーそしてカーテンまで色々と武器となる物を見つけだして一つの机の上に集めだした。まるで小学生の頃に戻って友達と宝探しでもしているかのような気分だった。絶望の中でも自ら進んで探しに行けば楽しめる物が見つかるのだ。
皆が探し物をしている間に黒川に神宮西や丸之内などは話し合っていた。皆で決定した意見などは美術部の子が黒板にまとめて書いてくれた。黒板に学校の見取り図を書いてそれを元に生き残りの生徒達の意見を参考にしてゾンビが大量にいるキリング・フィールドに☓マークをつけ理科室から駐車場まで辿り着くまで一番近くて安全なルートをどうするべきか?決行時間はいつか?準備する物は何を持っていくべきか?、ゾンビと遭遇した時はどうやって対処するか?一番槍を誰にするか?後方を見張る人は誰にするか?話し合う事は一晩では尽きず意見と意見がぶつかり合いをしていた。
みきは具体的な提案を言うのではなく、みきは走りたくない。みきは武器を作るなんて面倒臭くて嫌だ。みきはまだ食べ足りない。などみきの個人的な欲求ばかりを押し付けてきて皆の足を引っぱってきた。名城は4つに並べた椅子の上で寝ていた。大勢の人が一つの部屋に詰め込まれて動物園の檻の中のように騒がしい中でも眠れるのは名城の得意技だった。
丸之内は試験管立てに入っている空の試験管に一つずつアルコールランプの中に入っていたアルコール液を入れる作業をしていた。その後で黒川は手芸部が切り取ったカーテンの切れ端の紐を一本ずつ試験管の中に入っているアルコールに染み込ませるほどに詰め込む作業をしていた。やがて丸之内と黒川の耳に豊田と上社の何やら白熱したオカルト陰謀論の激論をしているのが耳に入ってきた。上社はツバが飛ぶのをお構いなしに豊田に訴えかけていた。
「もっと視野を広く宇宙まで広げろ。ゾンビ化するチョコを開発したのは宇宙人の最新テクノロジーに違いない!あのバレンタインデー撲滅委員会とやらの組織は実は人間の皮を被った宇宙人なのだ!ホーキング博史だって宇宙人の侵略を警告している!日本は人口縮小政策か人体実験に選ばれたのだ。日本は島国で隔離されているから実験の場になるのには最適な居場所だからな!」
上社の弁論を聴いた豊田は上社よりも自信ありげに上社を馬鹿にするように嘲笑った。
「はッ!宇宙人のせいか!世の中の不思議を理論的に追求する事を放棄して考える事を辞めた連中が生み出したありきたいりな発想の産物だっ!ナスカの地上絵を描いたのは誰か?ケネディ大統領を暗殺したのは誰か?今日、僕が引き出しから取り出した靴下が片一方しか見つからなかったがもう片方は一体何処へ消えたのか?世の中に説明出来ない事はこれすべてぜぇぇ~~んぶ宇宙人や妖怪の仕業にでもすれば問題はすべて簡単に片付ける事ができるからなッ!かつて神がその立場であったようにっ!」
「じゃ、じゃあ君は誰がバレンタインデー撲滅委員会の黒幕だと思う????」
「地底人だ!」
上社と豊田のオカルト談義は黒川にはついていけないビッグバンの領域まで行っていた。
「亮ちゃん。俺たちはもう逃げられないのだね。」
いきなり丸之内が口に出した言葉に黒川は驚いた。この意味はいつも堀田達にいじめられた後で言う皮肉として受け入れるべきなのだろうか?それとは別の何かほんのりと暗い影をほのめかしているようにも聴こえた。
「そうだな。今までは嫌な事から逃げ続けてばかりだったのにな。」
「今までずっと逃げている方が楽だと思っていた。でも、そのツケを払わされるのがこんなに大変なのだと知っていたら、昔からもっと努力していたのに・・・。」
黒川は丸之内の肩に手を当てて丸之内の肩をゆるくゆらした。
「今からでも充分遅くないさ。」
「命ある者だけはね・・・」
理科室の机の上にこれから自身の身を守る術となる武器が置かれてあった。各自で机の上に置かれた武器の品定めが初まった。手に取って触り心地を確かめたり、どうやって使うのか確かめたり、動きやすいように重さがあまりない物を選んだりしていた。
しばらくは見慣れない物に興味津々だったがやがて男連中は子供の頃にやったヒーローごっこのように武器を手にとってお互いに戦うごっこ遊びをしてふざけあっていた。女の子達はまるでショッピングでも楽しんでいるかのようにお互いが選んだ武器の見せあいっこをしていた。神宮西は皆が各自で自分にあった武器を選んでいる中で武器を選ぼうとしない人がいる事に気になり、武器を持たない人に近寄った。
「上社、武器はいらないの?」
上社はまるで西部劇のガンマンのように片手で頭に被っているヘルメットを少し上に持ち上げた。
「そうか・・・あんたにはその宇宙人のヘルメットが自分を守ってくれるものね。」
ひとつ疑問が解決したが、武器を持たないのは上社だけではなかった。神宮西はその一人にも尋ねてみた。
「名城。あんたは武器を選ばないの?早く選ばないといい物は売れ残っちゃうよ。」
並べた椅子の上で寝ていた名城がいきなり起こされて不機嫌そうに上半身を起こすと、俺はこれだけで十分だと言わんばかりに横の机の上に置いてあったトイレのすっぽんを神宮西に見せつけた。
「・・・そう、トイレ掃除を進んでしてくれる人ってなかなかいないから助かるわ。」




