♰♰♰ 威風堂々 ♰♰♰
校舎の旧支配者だった生徒達の影は消え、変わりに校舎の支配者となったゾンビ達は月の光しか差し込まない薄暗い廊下を我が物顔で徘徊していた。
一匹の男子生徒ゾンビが歩いていると片足のつま先に一筋の光の線が差し込んできた。光の後を辿っていくと光はあの廊下の突き当りにある理科室の二センチほど開いている扉から指している。男子生徒ゾンビはかつて人間だった時の本能で光がある所には人間。つまり自分達の餌があるはずだとまるで歩き初めたばかりの赤ちゃんのように足がおぼつかない足取りでせっせと歩いて理科室へと向かった。
廊下を徘徊していた他のゾンビ達も光を求めて集まる夜の虫のごとく理科室へとぞろぞろと向かった。
先頭を歩いていた男子生徒ゾンビが理科室の扉の前へ着くと扉の隙間がいっきに15センチほど広がり、扉の奥から漏れてくる光の幅がさらに広がった。
ゾンビは理科室の中に餌がないか中を覗いた。だが、ゾンビが見えた光景は餌ではなくすっぽんが飛び出しきてゾンビの顔にすっぽんがあたり力強く後ろへと飛ばされた。今度は複数のゾンビ達が理科室の扉の前へやって来た。すると、扉が全開に開いた。
そして客人を歓迎するかの如く理科室の中から複数の物が飛び出てきてゾンビ達の顔に生卵やらトマトやタバスコなどが当たって躊躇していたら生卵を顔にぶつけられた女子生徒ゾンビの顎にすっぽんで突かれ、女子生徒ゾンビの体がよろめいたその隙に名城はすっぽんのラバーカップ側で女子生徒ゾンビの右頬を強く殴りつけ、女子生徒ゾンビの体は横に逸れて左にある窓ガラスに当たり、窓ガラスが割れて外へとガラスの破片が飛び散った。
一人をやっつけた後も必殺仕事人の休みはなく理科室に群がるゾンビ達に向かってすっぽんを振り回し暴れ周って行った。荒れ狂う暴れ牛が通った後は自然と道ができた。道に逸れた場所で名城に攻撃されたゾンビ達が床に倒れてすっかり伸びきっていた。
理科室にいた残りの生徒達が外の様子を伺いながら次々と廊下へと出て来た。早くゾンビ達が居座っている学校から抜け出したい感情が体よりも先に飛び抜けているかのように名城の後を追いかけて行った。
だが、理科室の扉の近くで名城に倒されたラグビー部ゾンビの一匹は運が良く頭を崩壊されずに済んだ為にすぐに気を取り戻した。暴れ牛は邪魔者を蹴散らす事だけを考えてゾンビを完全封殺する事は頭になかった。元々名城は学校から抜け出す為に道を塞いでいる敵陣の形を蹴散らす一本槍が役目なだけであった。
嵐が過ぎ去った後で理科室の扉からぞろぞろと餌達が出てきてくれた。ちょうどラグビー部ゾンビのそばを通りかかろうとした肉突きは痩せていて餌には物足りないかもしれないがか弱そうで無防備な所が名城よか簡単に捕食できそうだとラグビー部ゾンビは自分の横を通りすぎようとしたエプロン姿の女の子に目を着け、獲物に目掛けて匍匐前進をしながら突進していった。
エプロン姿の女の子は何か自分の足元でもぞもぞと大きな毛虫のような物が蠢いている事に気づき足元を見て驚いていた。その姿を見たラグビー部ゾンビはおびえろ。悲鳴をあげろ。食べられろ。そう思って女の子に近寄り、目の前にある生々しい足首に牙を向けて噛み付こうとした。
だが、エプロン姿の女の子はなぜか手に持っていた業務用特大約一キロ分のマヨネーズを構えだし、フタを開け、容器を押し潰した。星型の口から飛び出してきたマヨネーズはラグビー部ゾンビの目に入り、ラグビー部ゾンビは目が見えずに女の子の足首に噛み付く場合じゃなくなり、顔についたマヨネーズを取ろうとあたふたしていると女の子はマヨネーズの先をラグビー部ゾンビの口の中の喉の奥まで突っ込ませた。
「そんなに食べたいのなら私がいっぱいごちそうしてあげる。」
女の子はマヨネーズの容器を思いっきり潰した。ラグビー部ゾンビの口の中に途切れる事のなくマヨネーズが口に押し込まれ、口からはマヨネーズがこぼれ出て、喉に詰まらせたマヨネーズを吐き出そうとしてむせた。鼻からもマヨネーズが出て来た。エプロン姿の女の子は名城より容赦なかった。これじゃあ名城に一発でとどめを指してくれた方が有り難い。ラグビー部ゾンビの全身が痙攣しだすとついに絶命した。
エプロン姿の女の子はマヨネーズの容器のフタをちゃんと締めると名城の後に続く波に乗って行った。




