第1話『何もない私に与えてくれたのは』
私には何もない————
自分が意識を取り戻したのはごく最近の事だ。
だけど、なにも覚えていない、いや思い出せなかった。
でも知っていた事は何個かある。
「自分の年齢が九つであること」
そして_________
自分は「魔法」と言うものが使えないこと___。
この世界は、どうやら「魔法」という才能を産まれ持って持つらしい。
しかし、その一方で魔法の使えない者もいる。
世間は魔法が使えないものは“迫害される”という、国を追いやられ、ひどい場合は命さえ危ない存在。
私はそんな碌でもない奴なんだ。
だからきっと……親に捨てたら出たんだと思う
もう何日歩き回っているんだろう……いつしかもう何も感じなくなっていた。
髪は顔を隠すように長く伸びていた。そしてその髪には赤い大きなリボンが結び付けられていた。
これが唯一の私の物………
ドンッ
「ご、ごめんなさい」
私は何かに大きく体をぶつけた。
ぶつかったものが、人だと気づいた時、私は小さい弱々しい声で謝った。
「全然大丈夫さ、それより怪我はないか?」
その声は太い大きな声だったがそれは女性であることに気がついた。私はそっと顔を上に向けた。
大きな帽子に、立派な金の装飾がついた服装。
見た目は随分若く見えるぐらいのお姉さんだった。
金髪のショートヘアに長い耳……そして綺麗な透き通った紫の瞳。
私はこの時、気づいてしまった。
その女性が「第三代魔法界」の人だと言うことに……
「あれ、君魔力が感じられ……」
女性が言葉を言いかけた時、私は気づいた。バレたと……
急いで、私は後ろを振り返りきた道を引き返そうと歯力で走った。
しかし、そんな力差があることには気づいていた。その女性は息を吸う前に私の前に辿り着いていた。
「すぐ逃げられるのってちょっと悲しくならないか?」
「アオイ殿、どうされたのですか?」
手下と思われる男性はその女性の名を口にした。
やはり、街の人から聞いたことのある名前、第三代魔法界の一人だ。
私は半分諦めて、膝が空くんだ。
あぁ、ここで終わるんだ。
「やはりだ!!!君だ!君を弟子にしたい!」
急にその女性は大きな声を出して、私に抱きついてきた。
「……え?」私は思わず困惑の声を漏らした。女性の抱擁は力強く今にでも骨が折れそうだった。
「しかし、何故ですかこんな孤児に」
「うるせえ!とりあえず、この子は家で引き取る!」
…………一同が沈黙になった。
そして、だんだん頭が回って状況を理解し始める。
「……え?」
疑問を浮かべたまま、私は気がつくと第三代魔法界が乗り込む荷物を運ぶ馬車へと乗せられていた。
誰もいない荷車、布で被せられた荷台に私は一人座らされていた。
これって……拉致…いや、誘拐……捕まった?どう捉えたらいいのか言葉にうまく表せられなかった。
「やぁ!セリナ…!」
突然、荷車のカーテンを開け、その魔法使いの女性が声をかけてきた。
「せ、セリナ……?」
「あぁ、それが君の名前だ、どうだいい名前だろう」
ニヒッとその女性は大きく歯を見せて笑う。
「………どうして、私なんかを」
「……だって!…だって——」
言葉が詰まる。これを言ったらきっと本当の意味で捕まってしまうからだ。
「魔法が使えないから、だろ?」
「え————」
私が言いたかった言葉がその女性が代弁するかのように言葉を被せてきた。
「……あの、どうかここで投げ捨てるよりかは……ここで殺してください」
どうせ、ここで捨てられても飢えで死んでしまう。ならばバレた今、いっそここで……
「何を一人で言っている、連れていくに決まってるだろ」
あぁ、やっぱり……捨てるよね……って、え?
「だから、魔法使えなくたって、連れていくに決まってるだろ」
「な、なんで?」
「だって、私が君を救いたいって思ったから、他に理由はいるか?
何故か、この言葉を聞いて私は涙が出た。悲しくないのに、怖くもないのに。涙が突然現れた。
この涙はなんで流れてるんだろう。
「私の名はアオイ、第三代魔法界だ」
「各地の地に回って魔物討伐に当たっている、世間では魔法が使えない種族を見つけては処刑する。とか言う妙な噂が立っているが、そんなことはしてないよ」
「今日から君は私の家族だ、ようこそセリナ」
何もなかった私に初めて貰ったのは名前と、温かい家族だった。




