N as in Name(名前のN)、VIII
「晩ご飯はカレーうどんにするって言ってあったわよね?」
「一応私も『だめ』って言ったんだけど。しょうがないじゃん、カップ麺(instant noodles)もなかったし」
「ダメと言った」は英語では
I said “no”.
ダメってなんて言うんだろう? と難しく考えることはない。「No」で充分だ。
カップ麺はinstant noodlesと言う。即席(instant)の麺(noodles)という意味だ。
「じゃあ、夕食ないわよ(No dinner tonight, then.)」
「やだ!(No way!)」
「なんか買ってきてちょうだい」
「無理(No)。今本読んでるから」
娘は手元の本から目を離さずに言う。珍しく、小説(novel)を読んでいるようだ。
「今(now)。行ってきて」
若者が活字を読むことは素晴らしいが、それどころではない。
「ええっ! じゃあピザ屋に行ってくるからね! めっちゃ買ってきちゃうからね!」
娘は小説(novel)をソファに放り出して言い放つ。
ピザはあまり栄養がない(not really nutritious)が、この際もういいわと瑛子は投げた。
食品の裏に必ず書いてある『栄養成分表』。カロリーとか、糖分、脂質などが書いてあるところだ。これは、『nutrition facts』と言う。直訳すれば、『栄養の事実』といったところか。
まず初めに確認するのはカロリー、という人も多いのではないか。減塩中の人なら塩分も気になるところだし、今時の加工食品は高機能なものが多く、ビタミンやらカルシウムやらも含まれているものが多い。
「お駄賃もらうからね!」
「近所(neighbor)でしょうが」
ピザ屋は歩いて十分もかからないところにある。
「新商品(new item)いっぱい買ってきちゃうから!」
「ナポリ(Naples)ピザがいいわ」
瑛子はニュース番組(news channel)を付けながら言う。夕食がピザなら、あとはサラダでも作ればいいかと思いつつ、ついでに夫がテーブルに置きっぱなしにしている新聞(newspaper)を開く。が、文字が頭に入らず諦めた。新聞はパリッとしていて、読まれた形跡がない。
どうせ夫だってたいして読んでいないのだ。解約するか。
テレビではキャスター(news caster)が都会のグルメを紹介している。どうやら新しいトレンド(new trend)はオランダ(Netherlands)のチーズケーキらしい。
バスクチーズケーキの時代は終わったのか。
チーズケーキってサイクルのように時々ブームになるのよね。
スタジオでは人気ナンバーワン(number one)のものを実食している。
大変美味しいそうだ。
そりゃそうだろう、だいぶお高いし、と瑛子は頷いた(nod)。
瑛子はよく頷きがちだが、頷くは英語でnod。
I nod. (私は頷く)
I nodded. (私は頷いた)
といったふうに使う。
「新商品(new item)を買ってくる」宣言をした娘は有言実行とばかりに、まさにテレビで見ていたオランダ(Netherlands)のチーズケーキを得意げに披露した。大変美味だった。まあオランダ(Netherlands)は酪農大国だから、乳製品は得意だろうけど。
◆◇◆◇
片付けを終えて一息ついた瑛子は、お茶を片手に椅子に座った。
机の上にはガス料金の支払い請求書が置いてある。それをチラリと見て、瑛子は目を逸らした。見たくない、と請求書を裏返す。思い出されるのは、これがポストに入っていた時の衝撃。
「へっ!?」と思わずすっとんきょうな声を出してしまうほど、高額請求だったのだ。
使用量はほぼ(nearly)去年と同じ。それなのに、なぜこの値段……?
請求書の端っこのほうに、『値上げしましたよー』と書いてあるのを見つけて、「ああ、そうだったわね……」と瑛子は呻いた。
ここ最近の天然ガス(natural gas)の値上がり幅は、半端ない。暖かい季節ならまだしも、これから本格的に寒くなったら、どうなってしまうというのだろう。
北風(north wind)が吹く季節には、ゆっくりと湯船に浸かりたい。若い頃のように、シャワーで済ませていては疲れが取れない。やはり首(neck)まで湯船に浸からないと。
でも、このガス代……
新年(New Year)の抱負が『節約』になるなど、切なすぎる。
日本が天然資源(natural resources)に乏しい国(nation)だというのは重々承知だが。もうちょっとどうにかならないものか。




