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M as in Minimalist(ミニマリストのM)、VII

「それもあるけど。不要なものを片付けてると、人間関係も処分したくなるものなのよ」

「え?」

「ほら。もう付き合いのないママ(mom)友とか、昔の知り合いとか。SNSの繋がりやスマホの連絡網を断捨離していくとね、だんだんと自分にとって良い関係ってなんだろう? って考え始めるのよ。それはいいんだけど、それが進むと『そういえば、旦那、いる?』ってなる」

 幸子先生はスマホを操作するジェスチャーをしながら言った。


「……なるほど」

 瑛子と清美先生は頷いた。


 断捨離とは、昔や未来ではなく、今にフォーカスしましょう、というのがメイン(main)のテーマだ。


 今のあなたに必要なものはなに?

 今のあなたが心地よく思える関係ってなに?

 という問いに向き合っていくことだ。


 つまり、

 It’s ME that is most important in life. (『私』っていうのが、人生で一番大切。)

 ということ。


 今の自分に合わ(match)ないものは、必要ない。

 無理に人に合わせる必要もない。


「――そうやって自分に問いかけていくとね、『一番邪魔なの、旦那じゃね?』ってなるの」

 幸子先生は淡々と語る。


 離婚経験者の意見には重みがある。感情を昂らせずに語るところが、また山(mountain)あり谷ありを感じさせる。


「……なるほど。一理ありますね」

 瑛子はしみじみと幸子先生の言葉を噛み締めた。


「ある意味で、家ってパンドラの箱なのよ。家に物が停滞してるってことは、まあ、片付けられないのが主な(main)理由だけど。でも、臭いものには蓋をしているところもあるから。そっとしておいた方がいいことも世の中にはあるの。なんでもかんでも片付けて、なんでもかんでも要不要に仕分けて、何でもかんでも白黒はっきりさせればいいってもんでもないの」

 結婚(marriage)なんてその最もたるものでしょ、と幸子先生は肩をすくめた。


「……たしかに!」

 瑛子は空を仰いでから俯き、眉間の皺を揉んだ。


 いやほんと、同意しかないわ。

 瑛子は呟いた(mumbled)。


「お金(money)の価値観やら、掃除の方法(method)やら、メディア(media)との付き合いやら、男女(men and women)の役割やら、味噌汁(miso soup)の味噌(miso)は白か赤かやら、母親(morher)の役割やら、果ては音楽(music)の好みまで、突き詰めていったら絶対にどこか齟齬が出るもんよ。だって、他人だもの。どこかでバッファーを作(make)らないと、人と一緒になんて生活できないわ。一見して無駄に見えるガラクタがね、実は価値観の違いを覆い隠して(mask)くれてるもんなのよ」


「本当に、その通りですね……」

 幸子先生の言葉の重みが瑛子の胸に落ちてくる。


「家なんて多少散らかってる(messy)なくらいがちょうどいいのよ。何でもかんでもきちんとしてる家なんて、落ち着かないじゃない」


 瑛子は複雑な気持ち(mixed feelings)になった。

「複雑な気持ち」は、mixed feelings という。いろいろな感情(feelings)が混じった(mixed)という表現だ。


 人生をよりよくするには、優先順位をつけた方がいいのだろう。時間は有限だ。この世界に存在できる時間の中で、やりたいこと、やらなければいけないことをやっていくのが充実した人生だ。


 だが、無駄を省けば省くほど、いらないものをなくせばなくすほど、何のために生きているのか分からなくなってくるのもまた事実。


「……ちなみに、幸子先生のお家は?」

 瑛子は聞いてみた。


「要らないものなんて何一つないわ」

 幸子先生はきっぱりと言い切った。

 その潔さに、瑛子は拍手する。


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