M as in Minimalist(ミニマリストのM)、I
物質主義者(materialist)なつもりはまったくないが、それでも生きていくためには物が必要だ。
We are living in a material world,
私たちは物質的な生活をしている、
because this is an age of material abundance.
なぜなら現代は物が溢れる時代だからだ。
毎年、年末になると、来年こそ家を整理整頓しよう(make home tidy)と思って大掃除をする。
だが、春が来る頃にはそんな決意なんてどこへいった? といったふうに、家の中がぐしゃぐしゃ(messy)になっている、という不思議(mystery)。
いや、不思議(mystery)というか、きれいな家が一夜にして、ぐしゃぐしゃ(messy)になるわけではないのだ。
一月は、なんとかきれいを保てる。
二月には、「ちょっと……ところどころ、怪しいな?」と思いつつも、まだきれいだし、と過ごす。
三月(March)あたりになると、「あれ? なんかごちゃっとしてるな」と思い、
四月は年度の始まりなので、怒涛のように過ぎ去っていく。掃除どころではない。目の端に溜まってきた物たちを捉えながらも、週末にどうにかしようかな、などと思いつつ。
五月(May)のゴールデンウィーク頃には、積み重なった物たちの多さに、すでに諦めモード(mode)だ。
謎(mystery)が謎(mystery)を呼び、夏頃には、「まあ、今は暑いし。もう少し涼しくなったらどうにかしようかな」と思う。
年始の決意など、遠い昔の記憶(a distant memory)。
「まったく困ったわねえ」などと思っているうちに、季節は巡り、また年末がやってくる……というサイクル。
これを毎年繰り返している。
これの何が一番困るかというと、使うんだか使わないんだか分からない物が増えていくことだ。
処分する決意も湧かず、かといって活用法を思い浮かぶわけでもなく。いつの間にか時が経ってしまう。
そんなものたちに囲まれる生活。
ミニマリスト(minimalist)ってナンデスカ? と大げさに外国人のふりをして肩をすくめたい気持ちにもなるというものだ。
◆◇◆◇
家のパソコンが壊れたので、新しく購入した。バックアップやら、セットアップやら、そういう諸々が面倒くさかった瑛子は、そういうのは全部家電量販店でお願いすればいいと言った。
が、夫は「そんなことにお金を使うなんてもったいない。自分が全部するから」と言い張った。なので、まっさらなPCのモデル(model)を買ったのだ。
だが残念なことに、この最新のPC、まったく機能しない。
故障(malfunction)なのか、それとも何かのセットアップを間違えて(mistake)いるからなのかすら、分からない。
夫はカスタマーサポートに何度も電話をしてやり取りをしているが、それでもなかなか解決しないらしい。「メモリー(memory)チップがうんちゃら」という話をしているらしいが、夫はよく分かってなさそうだ。もちろん、瑛子にもわからない。
「なんなんだ! この会社は!」
夫は怒りながら電話を切った。
話が噛み合っていなさそうだなあと側から聞いていて思ったのだが、マルチタスク(multitask)の苦手な夫のことだ。横から口を挟んでも、余計に混乱するだろうと思って黙っていたのだ。
しばらくプンスカ怒っていた夫は、諦めて自分でインターネットで調べることにしたらしい。
ピコピコ、という変なメロディー(melody)がパソコンから鳴る。
内部の何かがうぃぃぃんと動く(move)音もする。
夫は苛立ったように、マウス(mouse)を高速でクリックした。
瑛子はパソコンにはまったく詳しくないが、一つだけ経験則で知っていることがある。それは、パソコンが頑張って考えている時(うぃぃぃんと動いている時や、砂時計が出ている時)は、決してPCの邪魔してはいけない、ということだ。
フリーズしているときに、さらに負担をかけるようなことをするなど、愚の骨頂。
フリーズは、パソコンからの「今この瞬間(at this moment)、自分、すげー頑張って考えてるんで! もう、キャパのギリギリなんっすよ! 今、マックス(max)なんです! 邪魔しないでくれますかっ!?」という泣きのメッセージ(message)なのだ。
案の定、負荷がかかったパソコンはフリーズした。内部でファンが高速で回る音がする。
ーーぶ、ぶぶぶぶ、うぃぃぃぃぃん!
「えっ! えっ!?」
夫は焦った声を出した。
「あっつ!」
ちょうどPCのリチウム電池が入っている辺りを触ったらしい夫は、声を上げて手を離した。
がしゃん!
振りかざした手がスクリーンにあたり、パソコンが机から落ちた音だ。




