L as in lady(レディのL)、X
「ちなみに……彼氏とは?」
瑛子は聞いてみた。
「別れた」
あっさりとした返事が返ってきた。
「だよねー」
「マンションから追い出したの。だからマンション買ったの」
「なぜに?」
繋がっているようで繋がっていない論理に、瑛子は突っ込んだ。
「一緒に住んで(live)た家に、もう住みたくなかったから」
由利は即答する。
「なるほどー」
「女の一人暮らし(live alone)って気負わなくても、なんとでもなるもんよ。この時代、自分でできないことは、絶対にどこかの誰かが商売にしてるから。力仕事(manual labor)とかね。ライフライン(lifeline)さえ確保しておけば何とかなる」
「そっかあ。そう言い切れるの、かっこいい」
「瑛子だって全然できるでしょ」
「そうかな……?」
「できる。別に未開拓の土地(land)で、自給自足しろっていうわけじゃないんだから」
友人の力強い肯定に、瑛子の心も軽く(light)なる。
「て、そちらはソチラの方は?」
今度は逆に由利が聞いてくる。
「あはははは……」
瑛子はから笑いをする。
由利は察したように頷いた。
これだけで通じるものがあるのが昔からの友人のいいところだ。
「女は根性」
「女は度胸」
二人はティーカップを持ち上げる(lift)と、残り一口の紅茶を乾杯して飲み干した。
そして外に出ると、軽く手を上げて、二人はそれぞれ別の方向へと向かって歩き出した。
◆◇◆◇
Love, love, love.
ラブという文字は日本中に踊っているというのに、loveという言葉を口にする人は少ない。
照れくさいからか。
それとも、馴染みがないからか。
どちらもあると瑛子は思う。日本語の中で、『愛』という言葉は、どこか浮いているような気がするのだ。
愛という言葉のインパクトが強すぎて、日本古来の大和言葉と馴染まないのではないか、と瑛子は常々考えている。
「愛なんて照れくさい言葉、めったに口には出さないけど」なんてフレーズが、ドラマのセリフや歌の歌詞にもあったりするものだ。
フィクションの世界ですらなかなか出てこないなら、いつ出てくるんだよ、と瑛子は思ってしまうが。
さて、せっかくなので少しややこしい話をしよう。
Love is one word, but has four letters.
Loveは一語だが、四文字だ。
Loveというのはそれ自体が意味のある単語なので、『一語』である。
それと同時に、loveには四つの文字(letter)が含まれているので、『四文字』となる。
Letterというと『手紙』の訳を思い浮かべる人も多いだろうが、letterにはまた、『アルファベットの一文字』という意味もある。
ひらがなも同様に、『あ』も『か』も『さ』も、それぞれ一文字(a letter)である。
まあそうとは言え、あんまり使わなくない? と思うかもしれない。が、英文を書くときには結構必要だ。
例えば、Capital letterと言えば、『大文字』のこと。よく先生に、「文の始まりは大文字(capital letter)にしなさい」と注意されるあれだ。
逆に小文字は、small letterと言う。
ちなみにパソコンで打つ時は、lowercaseが小文字、uppercaseが大文字のことを指す。
瑛子はその夜、自宅でデカフェのコーヒーを飲んだ。
デカフェは、カフェインレス(caffeine-less)とも呼ばれている。デカフェは人工的な方法で、もともとあったカフェインを取り除いたもの。カフェインレスは、カフェインの含有量が少ないものを指すようだが、その差はあったりなかったりと、メーカーによって基準はまちまちだ。
いずれにせよカフェインがまったく入っていないわけではない。
またコーヒー以外の飲み物については、caffeine-freeだと、元からカフェインの含まれていない飲み物、例えばハーブティーとか、麦茶なとがこれに該当する。
一方で、Sugar-freeとsugarlessは、ほぼ同じ意味で使われている。まったく砂糖が入っていないのではなくて、アメリカのFDAによると、一食分に0.5gまでなら砂糖が入っていてもこれらを名乗れるようだ。
結局、ややこしい-freeと-less。
レスって本当にどっちなのかしらね。




