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L as in lady(レディのL)、I

「瑛子!」


 突然掛けられた声に、瑛子はスマホを睨みつけていた目を引き剥がすと、声がした方を見上げ(look up)た。


 いかん。またやってしまった。

 スマホを見るときは、ついついしかめっ面になってしまっている……ということに最近(lately)、気がついたのだ。

 なぜ気がついたかというと、おでこに皺が寄っていたから。


 なんなんだろう、この皺。

 いつ、付いたんだろう?


 そう疑問に思っていたのだが、電車で瑛子と同じようにスマホを凝視している女性(lady)の額に、瑛子と同じような皺が寄っていたのだ。

 しかも、結構くっきり。


 お猿さんを描くときにオデコに描きがちな皺、と言えばわかりやすいだろうか。

 あれが出来ていたのだ。


 瑛子は電車の窓に映った自分の顔を見て(look)、額を揉んだ。当然だが、それだけでは皺はなくならない。

 それ以来、同じような表情になっている女性(lady)を見るたび、こうなってはいけないと自分に言い聞かせるのだが。

  集中すると、どうしても眉間にしわが寄ってしまうのだ。


 ブルーライト(blue light)が眩しいのか。

 それとも、老眼が悪化したのか。


「由利、久しぶり!(Long time no see!)」

 瑛子は手を挙げて笑いかけた。


 由利はきびきびとした動作で瑛子のテーブルまで来ると、向かい側の席に座った。大きなビジネスバッグを足元の荷物入れに入れる。どさっと大きな音がした。よほど重い荷物が詰まっているのだろう。


 由利はふうと息をつくと、額の汗を拭った。

「瑛子、久しぶり(Long time no see)!」

 瑛子を見て(look)にこりと笑いかけるその顔は、昔から変わっていない。


 由利は瑛子の大学時代の友人だ。忙しくてなかなか会うことはできないけれど、こうして時々お茶をしたり、タイミングが合ったときには飲みに行ったりしている仲だ。


 そういえば大学時代は毎日のように昼ごはん(lunch)を食べていたな、と懐かしそうに瑛子は目を細めた。


「ごめんね、忙しいのに」

 由利は、すまなそうな顔をして瑛子を拝んだ。


「大丈夫。今日はちょうどレッスン(lesson)がキャンセルになったから、間が空いていたんだ。 私も会いたかったし、ちょうどよかった。誘ってくれてありがとう」

 瑛子は笑いかけた。


 今日は駅前の喫茶店で会うことにした。

 理想を言えば、「とりあえずビール」としたいところだか、生憎とこれから仕事に戻らなければいけない。それほどゆっくりとする時間はないけれど、由利から相談に乗ってほしいことがあると言われて、会うことになったのだ。


『ってゆーか、愚痴なんだけどねっ!』と舌を出した絵文字付きのお誘いメッセージに、思わず吹き出してしまったものだ。


 話題など、なんでもいいのだ。こうして無理矢理にでも時間を作っていかないと、「いつか、またね」なんて時は永遠に訪れない。


 さすがにこの歳になると、 無邪気に「元気だった?」などとは口を裂けても聞けない。

 この歳になると、体にいろいろとガタが出てくるものだからだ。元気であることが普通なのだと、なんのてらいもなく信じられた若い時代は、もう終わっている。そして、体の悪いところ自慢を始めたら、それだけでタイムアップになってしまうのも、目に見えている。


 ウェイトレスがタイミングよく由利の水を持って来てくれたので、ついでに注文をする。

「ランチ(lunch)タイムは終わってしまっていて」と済まなそうに言われたが、昼食(lunch)は済ませてきているので問題はない。


 でもせっかくだからと、瑛子はちょっと贅沢にウィークエンドシトロンを頼んだ。

 ウィークエンドシトロンは、レモン(lemon)風味のパウンドケーキのことだ。


 パウンドケーキというものは、美味しい店と、そうでない店で当たり外れが激しい焼き菓子だと瑛子は思う。瑛子は、バターたっぷりでずっしりしたパウンドケーキが好きなのだ。妙に油っこいくせに、軽い(light)ものはパウンドケーキとは認めない。


 さて、この店はどうだろう。


 持ってきてくれたウィークエンドシトロンを、わくわくしながら一口食べてみる。瑛子は目を見開いた。フォークを指した瞬間から、「これは!」と瑛子は期待に胸を膨らませていたのだ。


 同じくウィークエンドシトロンを頼んだ友人の顔も、ぱっと輝く(Her face lit up.)


 Light upとは、『明るくなる』という意味で、これは物理的に照明が点灯することや、蝋燭などに火をす場合に使う。また比喩表現として、人の顔色が輝く場合にも使える。


 なので、


 Her face lit up.

 彼女の顔が輝いた。


 となる。


 ちなみに、Lightの過去形はlitになるので注意だ。


 ここの店は当たりのようだ。

 しっとりとした生地に、細かく刻んだレモン(lemon)が練り込まれている。


 この柑橘のレモン(lemon)、面白いことに、アメリカ英語だと『欠陥車』という意味もある。


 I have a lemon.

 私は欠陥車を持っている。


 I bought a lemon.

 私は欠陥車を買った。


 といったふうに使う。


 意外とフルーツは面白い表現が多いので、辞書で調べてみると新たな発見があったりするものだ。


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