K as in Kill(殺すのK)、VI
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キッチン(kitchen)できゅうりを切る。添えるのは、もちろんマヨネーズ。なんと、きゅうりが無人販売店で一キロ(a kilogram)三百円だったのだ。息子の幼稚園(kindergarten)の頃のママ友が教えてくれた、掘り出し物の多い無人販売店。ここのところの物価高で、大変助かっている。
なので、せっせときゅうりを消費する毎日だ。
キログラム(kilogram)は日本語と同じく、キロ(kilo)だけでも使える。『グラム(gram)』の部分は、前後の文脈で理解できるならば、省略しても構わない。その場合は、一キロはa kiloとなる。
ちなみに、複数形にするときは、kilosとする。
Three kilos of ketchup (三キロのケチャップ)
……いや、そんなものないか。ケチャップ(ketchup)が量り売りされているのなんて、見たことがない。
では、
Two kilos of tomatoes (二キロのトマト)
ならどうだ。トマトなら、量り売りしている八百屋もあるだろう。
昔は量り売りの八百屋は多くあったが、最近ではめっきり見なくなった。
だが、海外のスーパーだと、野菜売り場で自分で計量してレジに持っていくのは、わりと一般的な買い方だ。買いたい分だけ買えて、とても便利なシステムだと思うのだが。
同じキロでも、キロメートル(kilometer)の場合は、『kilo』と省略することは少ない。まったくナシではないが、あまり見ない。おそらく、「kilo-」まで言ったら、「kilometer」とつい言いたくなるからだろう。
書き言葉なら、日本語でもお馴染み、kmと表記する。
さてこの大量にあるきゅうりは、定番のマヨネーズ(Kewpie Mayo) で和えることとする。
『Kewpie Mayo』を声に出して言ってみるとわかるが、これはお馴染み、キューピーのマヨネーズのことだ。Kewpie mayonnaiseと言ってもいいが、『mayonnaise』の発音は日本人にはとても難しいので、『mayo』と言うほうが無難だ。『マヨネーズ』とそのまま発音しても、わかってもらえない。そしてネイティブに発音してもらっても、「はい?」と首を傾げたくなる音をしている。
Kewpie Mayoは、本来ならキューピーから出している商品名だが、それが転じて、ブランド名がそのまま『日本のマヨネーズ』を表す言葉になったものだ。
日本語で言うのならば、例えば食品用のラップをつい「サランラップ」と言ってしまうようなものだ。たとえ百均のラップを使っていても、他のブランドのラップを使っていても。
なぜ、ただの「マヨネーズ」ではなく、あえてKewpie Mayoと言うかというと、欧米のマヨネーズは、日本のそれとは味も材料も違うからだ。
欧米人いわく、「日本のマヨネーズは酸っぱくて甘い」とのことだが、日本人に言わせると、欧米のマヨネーズは「なんかもったりしてる割に味が薄い」ものである。
欧米といえど幅は広いので、国によって味の違いはある。だが、日本のマヨネーズのように大量にお酢を入れないから味が違うらしい、と聞いたことがある。
興味のある人は、ぜひ輸入食品で欧米のマヨネーズを購入してみてほしい。欧米にありがちな大瓶(そう、たいてい瓶詰めなのだ)のマヨネーズを飽きずに使い切れる自信は、瑛子にはないが。
きゅうりにマヨはたっぷり、ついでにチーズも混ぜて。
子どもに野菜を食べさせたかったら、マヨとチーズをぶっ込んでおけば喜んで食べる、と言ったのは友人だ。瑛子は今でもこれは格言だと思っている。
野菜は味がない、もしくは微妙な味があるから、子ども受けが悪いのだ。それをかき消してくれるのがマヨとチーズ。ほんとうに、様様だ。
大人向けにはキムチ(Kimchi)も混ぜる。このキムチ、ローマ字スペルにするとKimuchiとなるが、これだと英語では通じない。
キムチは英語表記だと、Kimchiだ。
間違い探しのようだが、英語表記のKimchiには、ローマ字スペルとは違って、真ん中にuがない。
へえ、それだけでしょう? と思われるかもしれない。だが、これは英語と日本語の特徴をよく表している。
というか、キムチは元は韓国語なので、日本語化したキムチと、英語化したキムチの差、と言えばいいだろうか。
日本語発音のキムチは、
Ki mu chi
と三拍で発音する。
英語発音のキムチは、
Kim chi
と二拍で発音する。
そう。もともと、拍の数がちがうのだ。
手を叩いてみると、その違いは明らかだ。
日本語のキムチは、手を三回叩く。
英語のキムチは、手を二回叩く。
この微妙な差異が、いわゆる『日本語発音の英語』と、『英語らしい発音の英語』を分ける主な原因だ。
でも英語の拍なんて、分かる? 日本語なら、確かに手を叩けば分かるだろうけど……と疑問に思うかもしれない。困ったら、辞書の出番だ。英語の辞書を引くと、『分節』というものが載っている。それが発音のひとまとまりの最小単位だ。




