B as in Big(大きいのB), II
Breastにはまた、『胸肉』という意味もある。
たとえば鶏胸肉は、chiken breastだ。
スーパーで買い物をする時などよく見かける言葉である。あとは、ファストフード店でチキンのピースを買う時にも、知っていると好みのピースを選ぶことができて便利だ。
ここで、「あれ? 胸って『バスト』なんじゃないの?」と思った人もいるかもしれない。
これはこれで間違いではない。婦人服の『胸囲』にはbustを使うし、『胸部』を示すのも、bustだ。
またちょっと変化球でいうと、bustには『胸像』の意味もある。
Her bust is great.
なんて話を真面目な場面で聞いてどきっとしたら、実は胸像のことを話していた、なんてこともありうるかもしれない。
漫画に話を戻そう。
男性漫画には、女子高生が更衣室で着替えながら、
「〇〇ちゃんってすごい胸が大きい! ちょっと触っちゃおっかな!」
「やだぁ! やめてよぉ!」
なんてきゃっきゃしている場面が登場するが、夢を壊すようで申し訳ないが、実際の女子高生はそんなことはしない。
女子高生はそもそも、普段の生活で胸のサイズを意識することはほぼない。
繰り返しになるが、『大きいと偉い』というのは男の基準であって、女の基準ではない。繊細なお年頃の女子は、むしろ足が細いとか、体が細いとか、体重に関することのほうが気になるものだ。
『大きくて良い』と女子が思っているのは、せいぜい目の大きさくらいだろう。
そんな純粋無垢な少女が、胸の大きさがアドバンテージになるらしいと気づくのは、彼氏(boyfriend)ができてからだ。
ゆえに、胸が大きいということを武器にしている女子は、男性特有の視点が入っている女子であるということ。
つまり一部の男性が望むような『男なんて知らないまっさらでピュアな女』では無くなっている、という証でもあるということである。
大きい方がいいのか、それとも実際はそうでもないのか。
悩ましい胸の問題だが、昔は胸の大きさはさほど重要視されていなかったそうだ。
『デカパイ』と言う言葉ができたのも、それほど昔のことではない。
考えれば当たり前のことではある。昔の人の栄養状態は、現代人より悪かった(bad)。江戸時代の人の平均身長は男性で150センチ後半台、女性で140センチ台だったそうだ。
栄養状態が良くなくて、痩せている人が多ければ、(個人差はあれど)胸が大きい人は少なかったはずだ。
現代になって平均身長が伸びたのは、栄養状態が改善したからであり、それに比例して胸も大きくなっていったと考えるのが自然だろう。
そもそもだが、着物は胸を覆い隠す形をしている。マリーアントワネットの時代から胸を寄せて上げていた欧州人とは、まったく違う衣服の形をしている。
もし日本人が胸の大きさにこだわりがあったのなら、着物だってそれに特化した形に変化していったはずだ。
だが、着物は胸を強調しない方がきれいに着れる衣服。胸の大きい人は胸当てをするくらいだ。
「胸は大きい方がいい」
というのは、
「背が高い人はかっこいい」
「脚が長い人がかっこいい」
「小顔は美形」
「目鼻立ちがはっきりしている人は美形」
「鼻は高い方がいい」
などと同様に、欧米の美(beauty)の基準が輸入されてきたからこそ生まれたものだと瑛子は考えている。
まあ、男女ともに「デカいとすごい」(もしくは偉い)と共通認識があるのは、ダイヤモンド(diamond)のサイズくらいかしらねえ。
そんなことを考えながら、瑛子はひいひい言いながら教室までの階段を登っていく。
瑛子の勤める大手英会話教室は、商業ビル(building)の上の方のフロアにある。駅近で、中には居酒屋なんかも入っているような雑多なビルだ。この時間はエレベーターがなかなか降りてこないから、瑛子は運動を兼ねて階段を使うことにしている。
最近腰痛がね……
腰痛(back pain)
人間のように、二足歩行する(bipedal)動物にとって、腰痛は宿命のようなものである。
back(つまり後ろ、または背中)のpain(痛み)、という意味である。
「でも背中って幅が広いよね。背中と腰って違くない?」と思うかもしれない。腰痛だと特定して言いたい場合は、lower back painと言うが、わざわざlowerをつけなくても、back painと言えば、ほとんど腰痛のことだ。
backはまた、動詞としても使える。
こういったシンプルな言葉にはいろいろな意味があるのでぜひ辞書を引くことをお勧めするが、普段の生活に一番馴染みが深い言葉は、 back upだろうか。文字通り、PCのバックアップやスマホのバックアップをすることだ。
ここで、さらっと言ってもらえるとキュンとくること間違いなしのフレーズを紹介しよう。
I have your back.
「あなたの背中には私がついている」
つまり、「私は味方だ」という意味だ。
ああ、そんな素敵なことを言ってくれる王子様はどこかにいないだろうか。
中年の瑛子だって、夢くらい見る。いつも仕事(business)と家庭のことだけを考えていては、生活の潤いがなくなってしまう。




