B as in Big(大きいのB), I
「うっわ。今の子、まじ胸デカくね?」
足早に駅構内を歩いていた通勤途中の瑛子の元に、前方から大きな声が聞こえてきた。
前を向くと、男子高校生二人がふざけながら、お互いの肘を突き合っている。
『◯◯高校野球(baseball)部』と書かれた大きなバッグ(bag)を肩から下げた、黒(black)の学ラン姿の子たちだ。
その横から、肩下のセミロングの髪の毛を靡かせながら、女子高生が一人、瑛子の横を通り過ぎた。
夏真っ盛りなので、ブラウス(blouse)一枚に短いスカート、くるぶしソックスという涼しげな格好だ。イヤホンをしているので、男子高校生の言葉は聞こえなかったらしい。何事もなかったかのように歩いていく。
……いや、それか、すでにこういうことを流すスルースキルを身につけているのかもしれない。
確かにその子の胸元はだいぶボリューミーであった。
チラリと瑛子が女子高生の方を見ると、ちょうどその子の反対側を通り過ぎたサラリーマンも、女子高生を二度見している。
大きい(Big)
英語の習い始めに学習する単語だが、わざわざ習わなくても、幼稚園児でも知っている単語だろう。お菓子のパッケージなどにもよく使われているからだ。
というか、日本のパッケージングには英単語が散りばめられている。
……意味が通じるかどうかはまた別問題だが。
本当に男子(boy)ってものは。
瑛子は苦笑いしながらも、ダラダラと歩く男子高校生を足早に抜かしていった。
こちらには仕事があるのだ。「さーせん、遅れやしたぁー」と謝れば済む学生とは違う。その間も、男子はまだ胸の話をしているようだ。
大きさにこだわるというのが男性特有の感覚だということを、この子たちはまだ知らないのかもしれない。
家にしろ、身長にしろ、車の大きさにしろ、その他諸々の大きさについても。
大きい方がいい、でかい方が偉いというのは、男ならではの思考だ。
同様に、レベルを上げるとか、一番上に行きたがるとか、一流というものにこだわるのも、圧倒的に男性が多い。
誰かと比べてより良い(better)ということにこだわるのは男女共通だが、一番(best)でいたいという思いが強いのは男性なのではないだろうか。
もちろん女性にも一番願望が強い人は存在するが、女性同士の比べ合いというのはもっと複雑だ。
『ぶっちぎりの一番を目指す』というよりも、『◯◯さんよりこの部分は私の方が上』とか、『ここは◯◯さんに負けるかもしれないけど、アレって世間的にどうなのかしら……ねえ?』などと、微妙な差を総合的に比べながら、表面的には仲良くやりながら腹の探り合いをしているものだ。
脳(brain)の構造の違いなのか、はたまた育つ環境か。要因は分からないが、ことあるごとに自分から自慢(boast)したがるのも男性の特徴だ。対して女性は、周りに褒めてもらうように場の流れを作っていく生き物。
それにしても、女性の胸に対する男性の執着心は何なのだろうと、瑛子はいつも首を傾げる。
漫画一つ見てみても、男性向けの漫画では、ヒロイン級の女の子は大概、目が大きくて、目が潤んでいて、ほっぺが高揚していて、胸が大きいと相場は決まっている。
彼女たちはぶかぶかな洋服を着ていたとしても、「ここに胸があるんですよお」と言わんばかりに胸元に線が入っていたり、影ができていたりする。
いや、そんなに分厚いトレーナー着てたら胸の大きさなんて分からないだろうよ、と思いつつ、その線と影のこだわりっぷりに、瑛子は男性の並々ならぬ執着を感じるのだ。
対して少女漫画では、上半身はストンと描かれていることが多い。一応胸元はやや膨らんでいる感じはするが、それでもあっさりとしたものだ。
その分、脚は棒のように細くて長いが。
胸は英語でbreast。
胸や胸部という意味だ。
breastは可算名詞なので、先ほどの男子高校生のように、胸の大きさなどに言及するときは複数形にする。つまり、breastsだ。
男子高校生のセリフの「彼女は胸が大きい」は
Her breasts are big.
注意点としては、breastsが複数形になるので、それに続くbe動詞も、三人称複数形のare とすること。
単数形で
Her breast is big.
としてしまうと、片方の胸にだけ言及していることになり、不自然だ。
これは日本人には分かりづらい概念かもしれない。日本語では、わざわざ体のパーツを複数形にして使う事は無いからだ。
『胸たち』やら、『目たち』などと表現することはほぼ皆無だ。
だが、英語では手であれ、目であれ、耳であれ、足であれ、もちろん胸でも、可算名詞のもので両方を指す場合には、複数形にしなければならない。
ちなみに、胸の俗称の『おっぱい』は、boobと言う。これも加算名詞なので、通常はboobsと複数形にして使う。




