J as in Judge(ジャッジのJ)、III
さて、瑛子のお茶セットが乗っている木のお盆だが、これには漆が塗られている。
Japanは日本だが、japanは漆のことだと知っているだろうか?
Japanとjapanの違いは、頭文字が大文字か小文字かの違いだ。
これだけでまったく違う意味になるのだから面白い。
こういった例は他にもあって、例えばChina は中国だが、chinaは陶磁器のこと。こちらも頭文字が大文字か小文字かの違いだ。ボーンチャイナという言葉を聞いたことがある人は多いだろう。これは、『born China (中国生まれ)』ではなく、bone china、つまり、骨(bone)を入れて作った磁器(china)のことだ。
陶磁器がchinaと呼ばれるのは、中国からヨーロッパに輸出された陶磁器を国名のChinaと呼んだからだ。それと同様に、漆器が日本からヨーロッパに輸出された際に、国名であるJapanから取ったので、漆器はjapanとなった。
だが、頭文字が大文字か小文字かの違いだけでは、国名と混乱しやすいので、china plateやJapanese lacquerware とするのが通常だ。
ちなみに瑛子が今使っているティーカップもボーンチャイナだ。結婚式の引き出物にいただいたペアのセットだが、夫と二人でお茶の時間を愉しむ機会など、この先訪れることはないだろうと判断して(judge)、最近使い始めた物だ。
戸棚の肥やしにするにはもったいないからね。
人生は有限だ。使えるものは使えるうちに、使っておかないと。
ジャズ(Jazz)と息子の雄叫びと娘の頭のてっぺんから出ているような笑い声をバックミュージックにして、瑛子はティータイムを愉しんだ。
まあ、要するに慣れの問題だ。
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ジャック・オー・ランタン(Jack-o-lantern )のオレンジ色が眩しい。
というか、目に騒がしい。夏日に見る暖色のオレンジ色ほど、鬱陶しいものはないと瑛子は思うのだが。
今日も瑛子は出勤だ。真夏は過ぎたとはいえ、まだ暑い。というか、最近は初夏、夏、真夏、酷暑、ギリギリまで粘って夏日、からの数日の秋を経て、真冬にガラリと切り替わる、という気候が続いているため、暦の上では秋だろうと、ほとんどの人は半袖だ。
瑛子もトップスは半袖だ。だが、ジャケット(jacket)は長袖だ。レッスン中はジャケット(jacket)が必須だし、電車の中の冷房対策にも欠かせないからだ。
でもこうも暑いと、手に持ったジャケット(jacket)を放り投げたくもなるというもの。
その上で、世間様はハロウィン一色なのだから、さらに暑苦しい。
最近はどのマーケティングも早め早めに移行されている。なんせ、八月後半からハロウィンのディスプレーがで出すのだから。恐ろしいことに、これを十月最終日まで引っ張るのだ。もうオレンジはいいよ……という気分にもあろうというもの。
そもそも、日本人でジャック・オー・ランタン(Jack-o-lantern )を手作りする人など、どれほどいるだろうか。日本のカボチャは、固くてジャック・オー・ランタン(Jack-o-lantern )には向いていない。というか、海外だってジャック・オー・ランタン(Jack-o-lantern )をくり抜いて作るには、それ専用のかぼちゃを買うのが普通だ。
だからこそ出てきた、プラスティック製のジャック・オー・ランタン(Jack-o-lantern )。最近では町中の至る所で見かけるようになった。クリスマスツリーは飾り付けが面倒でも、ジャック・オー・ランタン(Jack-o-lantern )なら置くだけで楽ちんなのだろう。
面倒だからとプラスティック製のものを消費者が欲しがり、需要があれば企業はそれを喜んで提供し、「かわいい!」と今まで興味もなかった人まで買うようになり、さらに数が増えていく……というサイクルにまんまとハマったのが、このジャック・オー・ランタン(Jack-o-lantern )なのだ。
お菓子のパッケージも、店のディスプレーも、レストランのメニューも。
何がハッピーなんだかわからない、ハッピーハロウィンで埋め尽くされるこの季節。
もちろん、瑛子の教室だってこのイベントを逃すはずがない。
だって、欧米のイベントだからね! 英会話教室のいいネタになるよね! と。




