J as in Judge(ジャッジのJ)、I
Jから始まる英単語の回。
ジャズ(Jazz)が流れる室内。瑛子はしゅんしゅんと湯気を出すケトルを持ち上げ、熱湯をティーポットに注いだ。ガラス製のティーポットに入っているのは、ジャスミンティー(Jasmine tea)。台湾旅行に行ってきた同僚のお土産だ。
丁寧にお茶を淹れ、その時間を愉しむ。お茶請けは、せっかくだからとスーパーで買ってきた月餅。プラスチックの包装のまま齧り付くなんてことはしない。陶器のティーカップとお揃いのミニプレートに盛りつける。装飾の施されたナイフを添えて。
ジャスミン(Jasmine)の香りを胸いっぱい嗅いで、一口飲もうとしたところで――
ばったーーーーん!
何がが床に体当たりする音が聞こえてきた。ジャスミンティー(Jasmine tea)を淹れたガラスのポットの蓋が、カチカチと音を立てて揺れる。
はぁ。
瑛子はため息をついた。
頭を振って今の出来事を頭から追いやると、瑛子は気を取り直して茶をいただいた。
ふんわりとしたジャスミン(Jasmine)の香りが口いっぱいに広がる。やはり本場のものは香りが違う。鼻に抜けるような爽快さとフラワリーな香りに思わず唸る。
そこで月餅を一口。日本の餡子とは一味違った、ずっしりとした重み。甘すぎるくらいだが、ジャスミンティー(Jasmine tea)と共にいただくと、最高にマッチする。
ああ、台湾か。行きたいな。行けないかな。沖縄と同じ時間くらいで行けますよって言ってたしな。
瑛子の妄想は広がる。
同僚は弾丸の二泊三日で行ってきたらしい。それでも十分に楽しめたとのこと。
「や、これはまだ余裕がある方ですよ。ガチ弾丸なら、0泊で行けます」と言っていたのだ、同僚は。
だったら二泊くらいで、小籠包食べて、茶芸館に行って、ああ、なんなら足ツボか、エステでも……
ばったーーーーん!
また床が揺れる。二煎目を淹れていた茶がこぼれて、木のお盆にシミができる。せっかくだからと引き出しから引っ張り出してきた、日本の職人さんによる手作りの砂時計も倒れてしまった。
「ちょっと……」
瑛子はこめかみを揉んで音の元凶を睨んだ。
音の原因はわかっている。息子が床に体当たりしているのだ。いきなりどうしたのかなど瑛子には分かりようもないないが、今うちの息子は、空前の柔道(Judo)ブームなのだ。
柔道(Judo)
言わずと知れた、日本を代表する体技だ。オリンピックでも、柔道(Judo)でメダルを取れるか取れないかは、常に注目されるものだ。
だが、海外では柔道よりも柔術(Jujutsu)のほうが認知度が高い。『ジュジュツ』と発音する人が多く、『呪術』かよと瑛子は思ってしまうのだが。
海外のスポーツジムのエクササイズクラスにも取り入れられており、ヨガやカンフーなどと共に、オリエンタルなエクササイズのくくりに入っているようだ。
柔道(Judo)にせよ、柔術(Jujutsu)にせよ、こういった日本(Japan)特有のスポーツは、日本語(Japanese)の音読をそのままローマ字表記にして、英単語と同等の扱いとする場合が多い。
また、日本にしかない食べ物、地名、文化などにも、このルールが適用される。
たとえば、日本の都市(Japanese towns)。
東京はTokyo
大阪はOsaka
神戸はKobe
というような言い方をするのが一般的で、東京をわざわざ『East City』と英訳することは、まずない。
それから、日本がどこにあるか知らない外国人でも聞いたことがあるであろう、日本を代表する物の名前。
侍はSamurai
忍者はNinja
芸者はGeisha
また、日本発で海外に広がった概念。
可愛いはKawaii
漫画はManga
日本通の人になら、オタクはOtakuで通じることもある。
じゃあ、分からない単語は全部ローマ字にしちゃえば通じるのかな? というと、もちろんそうではない。海外にも同等のものがある場合は、その国の言葉にしないと意味は通じない。
例えば、犬が英語で何というかわからないからと言って、『Inu』とすれば通じるわけではない。英語には『dog』という単語があるからだ。
日本語をそのまま英語にできることは少ないが、逆に日本語には、英語がそのままカタカナ語として日本語に定着したものも多くある。
Jeansはジーンズ
Jazzはジャズ
jogging はジョギング
Juice はジュース
Jamはジャム
Jack-o’-lantern はジャック・オー・ランタン
Jacketはジャケット
Jewelry はジュエリー
Jersey はジャージ
Jetはジェット機
June brideはジューンブライド
Jigsaw puzzle はジグソーパズル
Jungle はジャングル
Jupiter はジュピター
Jukebox はジュークボックス
その他もろもろ、数えきれないほどの英語が、日本語に浸透している。
リスト化してみると、もう英単語なんて覚える必要ある? というほどの量を、実は私たちは常日頃から使っているのだ。




