H as in Happy(ハッピーのH)、II
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真夏は過ぎたとは言え、まだ熱中症(heat stroke)の危険もあるこの時期、暑い(hot)し、湿気(humidity)もある。
動悸(heartbeat)が激しくなったりすると、心臓麻痺(heart attack)にでもなるんじゃないかとヒヤリとする。
暑い(hot)からなのか。
それとも高血圧(high blood pressure)なのか。
健康(health)に気をつけた生活をしなければならないことは重々承知だが、多忙な(hectic)毎日の中では疎かになりがちだ。
そんなことも含め、調べてくれるのが年に一度の健康診断(health check up)だ。
午前の早い時間に病院(hospital)に行くと、朝一だったためか、さほど混んでいない。受付でもらった問診に、正直に(honestly)答える。
喫煙? いいえ。
飲酒? たまに。いや、週に二度くらいですよ。嘘です。もう少しかな。でも少しですよ!
運動? ……これからしようと思ってました、という項目はないのか。
重作業(heavy work)はするか? 家事も意外と力仕事(heavy work)なんだけど、これは該当しないわよね。
外食? そんなことしてたら家計が破産します。
血圧はやや高め(high)かもしれない。でも暑いと血圧も高いのでは。いや、冬のが高いんだっけ? そこまで飛び抜けて高いわけではないからいいか。
……そういえば、去年も同じことを思っていた気がする。
検査は順調に進む。受診者をリラックスさせるためか、往年のヒットソング(hit songs)がオルゴール調でかかっている。つい鼻歌で歌って(hum)しまうのは、若い頃に流行っていた曲だ。
歌には、その人の歴史(history)が刻まれている。
失恋したときに聴いた曲。
恋が叶ったときに聴いた曲。
出会いと別れ、嬉しさと悔しさ。
誰にでも、『この曲を聴けばその時の思い出が蘇る』という一曲はあるものだ。
故郷(hometown)を思い出す。すべてが輝いて見えたあの頃……と言いたいところだが、若い頃は若い頃で、毎日が精一杯だった。青春とは、後から振り返ったときに輝いて見えるものだ。
あの頃、永遠にやってこないのではないかと思った、はるか遠くの地平線(horizon)に立つ瑛子だが、昔とたいして変わらないなと思う。過去も、現在も、地続きなのだ。未来だっておそらくそう。
それでも、心に残る(hold in one’s heart)光景は鮮明だ。
「Oh. Home, sweet home. 」(ああ、素敵な故郷)
瑛子は歌うように呟く。
やや感傷的な気分に浸りながらも、一時間(an hour)ほどで健康診断は終わった。
チェックアウトをさっさと済ませると、瑛子はふふっと一人で笑った。なぜなら。
I have something fun waiting for me.
お待ちかねのお楽しみタイムがあるのよね。
英語を学び始めて最初に習う動詞『Have』は、何かを手に持っている、所有している、という意味だが、他にも幅広い使い方がある。
例えば瑛子のように、
I have something funは直訳すると、『私は何か楽しいことを持っている』だが、瑛子が楽しい事や物を、物理的に手に持っているわけではない。『お楽しみがある』くらいに訳すのがちょうどいいだろう。
また、家族紹介でよく使われるフレーズで、
I have a little brother.
というもの。
これを直訳すると、『私は弟を持っている』だが、これは『私には弟がいる』という意味になる。
『Have』のようなシンプルな単語にはさまざまな意味があるので、余裕があるときに辞書で確認することをお勧めする。
さて、瑛子の肝心のお楽しみは何かというと、これからクラシック音楽のコンサートに行くのだ。
時間に余裕はあるとはいえ、急いで(hurry)駅に向かう。こんな日に限って電車の遅延に遭って間に合わない、なんてことになったら悲しすぎる。
一仕事終えた後では、心も足も軽やかだ。丘(hill)の上にある駅にだって、スイスイ歩いていける。
家事(housework)はすでに済ませてきたし、今日はこれから主婦(housewife)業もお休みとする。家庭(home)のことはしばし頭の片隅に追いやることにして、年に一度、この日だけは自分の時間を楽しむと瑛子は決めている。




