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E as in Experience (経験のE)、IV

 無言の瑛子に焦れたのか、娘は続ける。


「だって、ヨーロッパ(Europe)の国が毎年どれくらいの量のワインを輸出して(export)ると思う? えっと、正確な数値はわかんないけど、すんごい、いっぱいだよ! ワインなんて国内でも作れるのに、わざわざ輸入する必要ある?」


 Exportは輸出

 Importは輸入


 どちらも、港(port)から出て行ったり、入ってくるので、portが付く。

 接頭辞のex-は『外へ』という意味で、im-は『内へ』という意味だ。


 港から外へ出ていくのでexport

 港から内へ入ってくるのでimport


 この接頭辞のex-は『外へ』と、im-は『内へ』というもの、案外使える。


 例えば、explodeと言えば「爆発すること」だが、implodeと言うと「内側に破裂すること」となる。

 内側に破裂することはイメージが掴みづらいかもしれないが、水圧のかかる海の底にいくと、潜水艦などでもペしゃんこになってしまう。これがまさにimplodeだ。


 また、extravertとintrovertという言葉を聞いたことはあるだろうか?

 extrovertは外向的という意味で、introvertは内向的という意味だ。主に人の性格を表す時に使う。


 自分の興味関心が外(つまりex-)に向かっているから、extrovertは外向的

 自分の興味関心が内(つまりin-)に向かっているから、introvertは内向的


 日本語のいわゆる「陽キャ」や「陰キャ」とは違い、あくまで興味関心が内と外のどちらに向かっているかを表す言葉だ。


 こんなことを考えながら、瑛子は娘の言葉に耳を傾けた。


 娘いわく、ワインを海外から輸入するには輸入費がかかる。それだけでなく、空輸で来れば空が汚れるし、船便で来れば海が汚染される。

 CO2の排出(emission)を抑えるには、地産地消が一番。ローカルなものを買って、ローカルで消費すれば、エコになる、と。


「だって、船が通ってるところは、絶滅の危機にある動物(endangered animal)が棲んでるところかもしれないんだよ! 人間のせいで絶滅(extinct)した生き物だっているんだよ!」

 娘は熱弁を振るう。


 おおう、どうした、と瑛子はややひき気味になる。

 感情が突発する(erupt)するほど、娘は環境保全(environmental conservation)に興味があったのか。

 娘も大人になったものだと、瑛子は胸が熱くなる。


「そうね。綺麗な地球(Earth)を保つためには、一人ひとりの努力が必要よね。じゃあ、夜のスマホはやめにしましょう」

 瑛子は娘に向かって手を出した。

 スマホを出せ、との要求だ。


「え。いや」

 娘は真顔で拒否する。


「でもね、あなたの使っているスマホも、たくさんの電気を消費するのよ」

 ついでに何に課金してるんだか分からない料金も上乗せされている。


「え。でもそれはそれだし」


「みんなで美しい海の惑星を守りましょう」

 瑛子は芝居がかった風に、もう一度娘に手のひらを見せた。


 早よ、渡せ。

 ついでによく分からないアプリも削除してやる。


 はぁぁぁ、と娘がため息をついた。先ほどの瑛子にそっくりだ。


「環境保全(environmental conservation)について小論文(essay)に書かないといけないの。でも調べ物するのが面倒だったから、実験しようと思ったの」

 娘の言葉に、やっぱりと瑛子は呆れ顔になった。


 おかしいと思ったのだ。冷房をガンガンに効かせてホットココアを飲んでいたのは、つい一昨日のことだった。

 冷房ってどれくらい電気(electricity)を消費するかわかってんのか、と外から汗だくで帰宅した瑛子は娘を注意したばかりだった。


「……夏休みの自由研究じゃないんだから」

 こんな単純な思考でこの子この先大丈夫なんだろうか、と瑛子は先行きが心配になる。

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