表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/98

E as in Experience (経験のE)、I

Eから始まる英単語の回。

 この土地が嫌いとか、この国が嫌いという人はいると思うが、地球(Earth)が嫌いという人は見たことはない。


 なぜなら、我々は他の惑星のことは知らないからだ。もし地球よりも住みやすい惑星があったとして、そこが薔薇色のパラダイスだったとしても、私たちが生きている間には、そこに行くことができないだろう。

 ……少なくとも、火星よりは地球のほうが住みやすそうだとは個人的に思っているが。

 他の惑星を知らないから、つまり他の惑星を経験(experience)したことがないから、私たちは地球と他の惑星を比較することができないのだ。



 先日、生徒さんからこんな話を聞いた。

 彼は中学を卒業するまで、中学校が嫌いだとは思っていなかったそうだ。


 いやだって、みんな(everybody)学校来てるし。

 先生は平等さ(equality)に欠けてるなとは思っていたけど。ひいきとかめっちゃしてたし。でも、みんなその環境(environment)を受け入れてるように見えたから、わざわざ抗議とかしようと思わなかったし。

 てか、そんなことしたら恥ずかしい(embarrassing)し。

 まあ小学校(elementary school)のほうが楽しかったなとは思ってたけど。

 これが毎日(everyday)続くのが当たり前なんだろうな、

 と。


 そんな彼の考えが変わったのは、高校に入学(enter a high school)してからのことだそうだ。


 自由な校風。

 生徒の自主性を勧める(encourage)方針。


「この学校マジで楽しいな(I’m really enjoying this school.)」

 と呟いたら、周りの子に「今までどんな学校に通ってたんだよ」と突っ込まれたそうだ。

 そこで中学時代のエピソード(episode)をいくつか話して聞かせると、「……軍隊?」とドン引きされたそうだ。

 特に(especially)ヤバいとみんなにお墨付きをもらったのは、先生たちの厳しさだったと言う。


 男子は刈り上げ。

 女子はおかっぱか、髪が肩につくなら結ぶこと。ヘアゴムは、黒のみ。染めるなんてもってのほかで、眉毛を整えるのも先生に呼び出しくらうレベルの大罪。


 体育祭の行進練習はガチで軍隊の演習(exercise)レベルで、足の角度から爪先の伸ばし具合まできっちり指導が入る。先生のお眼鏡に適った生徒は、エリート(elite)隊として先頭を歩く権利が与えられる……いやまじ、そんなんいらんけど。


 ほんっっっとに、ここの入学試験(entrance exam)に受かってよかった。

 受験頑張ってよかった。


 そう実感できたのは、高校生活が始まってすぐの頃だったそうだ。


「――あの頃は中学校から逃げる(escape)なんて発想はなかったけど、そういう選択肢もあったのかなって思って。もし将来、自分の子どもの通う学校がヤバかったら、『行かなくていいよ』って言える親になろうと思いました」

 彼はしみじみとそう言った。


「別にすげえ優秀(excellent)! って感じの中学じゃなかったんですけどね。高い(expensive)学費を払う私立とかじゃなくて、普通の公立校だったんで。むしろ、底辺に近いほうで。だからなのかな。先生のほうがヤンキーっぽい人ばっかりだったんですよ。今考えると、あの十代前半のエネルギー(energy)が有り余ってる時に、上から押さえつけられて、よく爆発(explode)しなかったなあ、って。一種の現実逃避(escape from reality)だったんでしょうね。頭を空っぽ(empty)にして、日々をやり過ごしてたって感じです。先生も、自分たちがガキの頃ヤンキーやってたから、ヤンキーを押さえつけるには行動を制限することが一番効果的(effective)だと信じ込んでいたんでしょうね」


 家と中学校の二つの世界しか知らなかった彼が、高校に上がり新たな世界を体験(experience)した。

 だからこそ、見えてきたものもあるのだ。逆を言えば、経験値が足りないと、比較検討もできないということ。


「『経験値が増えると世界が広がる』なんて言うとなんか、陳腐な感じがしますけど、そういうことって本当にあるんだなと思いました」


 話してスッキリしたのか、生徒さんは晴れやかに笑った。が、最後にこう吐き捨てる。

「あの時代(era)は完全に黒歴史なんで。消せる(erase)ものなら消し去りたい」




 新しいを経験して初めて、違う視点から物事を見ることができるようになった。つまり、経験をすることによって、人生に幅ができる。

 大人になるということは、経験を積むこと。

 なんて素晴らしい(excellent)のだろう。

 生徒さんの人生に、幸あれ。


 ……ごほん。

 ……なんでこんな規模の大きい話をしているかというと、瑛子も一種の現実逃避(escape from reality)中だからだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ