D as in Dog(ドックのD)、II
そもそもの始まりは、夜中に、息子が「じゅうだいな病気(disease)にかかった! ぼくはもう死ぬ(die)うんめいなんだ!」と必死に(desperately)叫び始めたことだ。
すぐにトイレに連れていったはいいが、上からも下からも大変なことになり。瑛子は寝ずに、ほぼ付きっきりで看病した。
そうこうしているうちに、娘(daughter)も同じ状態になり、何事かと慌てると同時に、やっぱりね、とも思ったのだ。
だって原因は明らかだ。だから夜が明けるまで様子を見たのだが。
でも本当に何かの病気だったらいけないしと、とりあえずお医者さん(doctor)に診てもらった。
結果は、食あたり(Something disagree with him. )。『disagree』とは『同意しない』という意味。「お腹の中で何かが同意しない」、つまり、食あたりという意味だ。
というか、今回の騒ぎは、百発百中冷えが原因だろう。
「Oh dear.(まったく)」
さもありなんと瑛子は思った。
「脱水(dehydrated)になってますからね、お水をたくさん飲む(drink)んですよ」と先生に言われ、経口補水液を買う。
息子は「これは僕が好きな味じゃない」と文句を言ってくるが、後で好きなスポーツドリンク(sports drink)を買ってきてあげるからとりあえず飲め、と押し付ける。
「お子さんの飲食物(diet)には注意してあげてくださいね」との看護師さんのありがたいお言葉に、神妙に頭を下げて帰宅、となった。
「だからママは程々にしておきなさいって言ったの」
タクシーの中で瑛子は息子を叱る。
「だって、おねえが……」
息子は瑛子の太ももに寝転がりながら、ごにょごにょと口を動かす。
まあさすがに具合の悪い我が子を叱る気にもならない。小言はそれまでにして、瑛子は息子の額を撫でた。
食あたりの原因。それは。
最近我が家は、最新の電動かき氷機を買った。
ふわふわの氷ができるというのが売りの、結構大型で、結構な値段がする、立派なかき氷機だ。
今はデコレーション(decoration)盛り盛りの、ファンシーなかき氷が流行っている。シロップをカラフルにしたり、フルーツをふんだんに乗せたり、かき氷なのになぜかアイスクリームを乗せたり。うまい具合に3Dにして、キャラを描いてみたり。
娘(daughter)がそういうのを、SNSに載せたいと言ったのだ。
そんなわけで、しばらくかき氷ブームだった我が家だが、瑛子と夫が家にいない間に、子ども二人でかき氷大会をしたらしい。
冷凍食品を全て冷蔵庫に移して(ちょっと、困るんだけど!)、目一杯氷を作って、いろいろなシロップを買ってきて、戸棚から高級お菓子を発見して(discover)、変り種のかき氷を作って食べ尽くしたらしい。
ちなみに、解凍(defrost)された冷食は、どろどろになっていた。
いろんなシロップでグラデーションを作って、それが溶けていくと、どんどん変な色になっていくのが面白かったらしい。
最終的に全てのシロップを混ぜると黒色になるということが判明したと報告された。
それはそれで微笑ましい……かどうか疑問が残るが、まあさておき。
案の定、下痢(Diarrhea)になってしまった。
一晩中ピーピーゴロゴロとトイレを往復して、明け方にやっと深い眠りについた息子は学校を休んだ。
娘は「そんな、下痢なんかで学校を休むなんて、恥ずかしくて死ぬ(Die of embarrassment)! 這ってでも行く!」と言い張って学校に行ったが。
デトックス(Detox)だもん! 体にいいんだもん! と言い張りながら。
瑛子はDoubtful(疑わしい)と思ったが、親が何を言っても聞こうとしないお年頃である。
仕方がないので行ってらっしゃいと見送った。今のところ連絡は無いので、まあ何とかやっているのだろう。若者の回復力は素晴らしいものである。
「これから気をつけなさいよ」と子ども二人には注意したが、聞き流された(fall on deaf ears)。
これは直訳すると、「聞こえない耳に落ちる」という意味で、忠告などが伝わらないときに使う表現だ。
さすがに懲りただろうからもうやらないと思うけど。でもこういったものは、喉元すぎればなんちゃら、というやつだから。またやらかさないように見張っておくべきなのかもしれない。
そんなわけで今日は瑛子はDay off(休み)を取って、一日看病することになった。




