表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/98

C as in Cool(涼しいのC)、II

 電車はゆっくりと速度を上げていく。外の風景をぼんやりと見つめながら、瑛子は今日のスケジュールを頭の中で反芻する。


 今日は一日みっちりレッスンが入っている。

 瑛子の勤める英会話教室は、オールイングリッシュのレッスンを売りにしている。つまり、会話(conversation)はすべて英語で行うのだ。


 当たり前であるが、英会話というのは会話だ。つまり、講師である瑛子は一日中ずっと話しっぱなしだということだ。

 しかも、立ち仕事。

 生徒さんの椅子(chair)はあれど、講師の椅子(chair)はない。


 スーパーのレジ(Cashier)にしろ、英会話講師にしろ、なぜ日本人はこれほど働く人を立たせたがるのか。

 お客様(customer)に対して誠意を見せるには、起立状態が一番良いアピールとなるからか。

 立っても座ってもさほどパフォーマンスには影響しないと思うのだが。

 おそらくそういう声もあるだろうが、単純に椅子を導入するコスト(cost)が企業(company)で調達できないからだろう、と瑛子は思っている。


 ああ、転職したい。

 エアコン(air conditioning、もしくはA/C)の効いた、パーテーションで区切られたオフィス(cubicle)で、ホワイトカラー(white collar)の仕事がしたい。


「チーフ(chief)、書類ができました」

「ありがとう。きみはいつも仕事が早いね」

 なんて会話を、イケメン上司としてみたかったものだ。


 でも悲しいかな。転職(career change)をするには、瑛子は少し時が経ち過ぎてしまっている。完全に(completely)不可能というわけではないだろうが、難しい(challenging)だろうなと思う。


 そもそも瑛子が大学(college)卒業後に新卒で就職する時は、それほど選択肢(choice)がなかったのだ。


 今の仕事だって、別にイヤイヤやっているわけではないのだが。


 人は、時として今の自分とは違う人生に思いを馳せる生き物だ。

 いわゆる、「たられば」ってやつだ。


 そうこうしているうちに勤務地まで着いた。

 瑛子はお腹の中に籠った熱い空気を吐き出すと、笑顔を作って教室のロビーに入っていった。


 バックオフィスにカバンを置いたら、まずパソコン(computer、もしくはPC)で生徒さんの今日の出欠席を確認する(confirm)。

 自分の名前をクリック(click)すると、担当の生徒さんの一覧が出てくる。


 事前にお休みの連絡をくれる生徒さんもいれば、連絡がつかない方もいる。


 あまり休みが続く生徒さんには、電話をする(call、もしくはmake a phone call)。生徒さんはたいてい皆、「あー……すみません、忙しくて……」と気まずそうに言ってくれるが、もちろん瑛子は叱るために電話をしているのではない。

「レッスンの振替もできますので、お時間がある時にご連絡お待ちしておりますね」とだけお伝えする。

 次回来ていただいたときに、快適に(comfortable)レッスンを受けてもらうためだ。


 素早く出欠席の見当をつけると、ロビーに行く。


 ロビーには、『新規入会キャンペーン(campaign)』のカラフル(colorful)なポスターが貼ってある。なんちゃらキャンペーンなんてものは年中続けて(continue)やっているので、誰も気にも留めないが。


 もう少しクリエイティブ(creative)な戦略をねった方がいいのではと思うが、企業の文化(culture)はそれほど劇的に変わるものではない。


 ロビーでは、複数名の生徒さんがソファー(sofaでもいいが、couchという言葉もよく使われる)に座っている。

 レッスンの予習をしたり、復習をしながらレッスン開始を待っているのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ