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血都A ―仮面の英雄を止めろと命じられた俺は、この街の嘘を暴く―  作者: 灰庭 透


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【第八話】記録の欠落

この街は、かつて血で栄えた。

そして今も、誰かが自分の血を燃やしている。

彼は爆発犯だ、罪人だ。

それでも一部の人間は、彼をこう呼ぶ。

――仮面の英雄、と。

俺の仕事は、その男を止めることだ。

……支部の空気が重い。


青炎は消えた。

だが爆発は止まっていない。

小規模で弱い。

まるで、何かを探るように。


「波形が乱れてる」

立花さんがモニターを睨む。

「前より出力が落ちてる。でも……」

「でも?何ですか?」

俺が問う。

「発生地点が変わった。」

モニターの赤点が市内を移動している。

ランダムではない。

「中心に、向かってる。」


ふとトキヤが呟いた。

「A市の中心部、再開発区域……今は立入制限区域でしたよね?」

「……地下区画だな。」

獅子さんが低く言う。


そのとき、支部の内線が鳴った。

獅子さんが受話器を取る。

「……はい。」

数秒の沈黙。

「光縁寺さん?」

立花さんが小さく問い、獅子さんは無言で頷く。

少し話し込んでから、受話器を置く。


「中央判断だ。地下区画への立ち入りを、全面禁止するそうだ。」

トキヤが食ってかかる。

「なんでですか!?爆発の発生源そこでしょ?こんな時に俺らが行かなきゃどうするんですか!?」

獅子さんは静かに言う。

「……光縁寺さんは“市民の安全を優先する”と。」


安全。

その言葉が妙に重い。

「再開発区域は不安定だそうだ。」

立花さんの視線がわずかに揺れる。

俺は拳を握る。

「……偶然じゃない。」

青炎は地下へ向かっている。

仮面の男は、何かを焼こうとしている。


「……朝凪。」

獅子さんが俺を見る。

「見えるものだけが、真実とは限らない。」

その声は命令ではなく、明らかに迷いを滲ませていた。

俺は拳を握りしめて言いきる。

「なら、確かめに行きます!」


獅子さんは目を閉じる。

数秒の沈黙。

そして開く。

「……五分だ。」

トキヤが笑う。

「やっぱり熱いじゃん、獅子さん!」


立花さんは端末を操作する。

「地下の旧設計図、残ってる。」

画面に古い構造図が浮かぶ。

最深部。

「因子濃縮槽。」

血。

供給。

青炎はそこを目指している。

俺は走り出す。

地下へ。

真実の中心へ。

【登場人物】

主人公:朝凪アレン

同期1:坂津トキヤ

同期2:春日井ヒマリ

上司1:獅子レイジ

上司2:立花ミカ

責任者:光縁寺タイゾウ

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