1話 それぞれの半年後
藤堂社長自殺の翌日から「メルクス」の株価は暴落し、自殺の真相が
マスコミから滲み出ると、加盟店離叛が首都圏を皮切りに雪雪崩状態
となり、全国にじわじわと拡がった。
フランチャイジーの信頼を失ったメルクスの業態は加速度的に崩壊に
向かった。
一週間後にはフランチャイジー一万店の三割が、一方的に契約解除し
店舗は次々に閉められた。
搾取金返還・違約金と慰謝料の支払いを訴え集団訴訟が始まろうと
している。
フランチャイジーを餌食に肥大化した本部組織は滑稽ですらある。
自らの脚を食らっていた。
狂気の沙汰に他ならない。
「メルクス」は、腐っても鯛の諺の様に依然として、その後半年は
売上の数字を徐々に下げながらも何とか生き延びた。
だが、決算期を前に業界下位のコンビニに吸収されることになった。
そして永遠に「メルクス」の名は消えた。
半年後
二之宮仁は、公益通報者保護法の適用を受け、罪に問われずに済んだ。
メルクスに在籍のまま、吸収された新会社で営業部長として働いていた。
櫛笥佳代子とは、入籍した。
年の差が親子ほど有るが、何せ、あちらの方の趣味がお互いを欲している。
司法の判断は厳しい
榊慶子・小早川頼子は刑務所で受刑中である。
看守曰く模範囚に与えられる仮出所は数年後とのこと。
生駒恭子は、半年後の出産予定日に男の子を無事出産した。
事件に関わる罪は香坂殺害に拘わる共犯と疑われたが、起訴猶予となった。
そして
「元フランチャイジー」薬師寺は、裏帳簿と引き替えに手に入れた元手で
信州は北アルプスの麓の村に引っ越し、レタス農家として生計を立てていた。
了




