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#5

---


《緊急脱出クエスト 達成》


対象:黒焔竜ヴリドラ


同行対象保護:達成


生還:達成


---


画面は淡々と続く。


---


《報酬を配布します》


《世界記録を複製中》


《複製対象》


『古竜ヴリドラの古書』


---


複製。

その文字に、侑は目を留める。


「複製……?」


光の粒子が集まり、一冊の古びた本が侑の手の中へ静かに現れる。

黒い革表紙。

金色で刻まれた、竜の紋章。

そして、その下には古代文字が刻まれていた。

侑には読めない。

しかし七曜システムが、自動で翻訳する。


《古竜ヴリドラの古書》


ずしり、と見た目以上の重みが掌へ伝わる。

戦利品というよりは、長い年月を生きた誰かの記録。

そんな空気を纏った本だった。

侑が表紙を開こうとした、その瞬間。

画面が割り込む。


---


《閲覧権限が不足しています》


現在Lv:1


閲覧可能Lv:10


---


「……読めねぇのかよ!」


思わず、肩を落とす。

すると画面が、もう一行だけ表示した。


《現在は表紙のみ閲覧可能です》


侑は改めて、表紙へ目を向ける。

そこには、一頭の巨大な黒竜が描かれていた。

その足元には、小さな少女が笑顔で寄り添っている。

竜の巨大な爪の上にちょこんと腰掛け、まるで母親に甘える娘のように微笑んでいた。


「……娘、か。」


それ以上の情報はない。

名前も。

書かれた時代も。

何一つ分からない。

だが、不思議と目を離せなかった。

あれほど圧倒的な災厄だったヴリドラにも、あんな穏やかな表情を向ける相手がいた。

その事実だけが、侑の胸に静かに残る。

その時、救急隊員が侑の肩に手を置いた。


「大丈夫ですか!? 怪我はありませんか!?」


その声に驚き、侑は無意識のうちに古書をインベントリに戻した。


「……え?」


侑は自分の腕を見る。

服は破れ、血で汚れている。

だが、その下の肌には、傷一つ残っていなかった。

救急隊員も、目を丸くする。


「服はこんな状態なのに……。」


侑は答えられない。

七曜システムのことは、まだ誰にも話せない。

そう直感していた。

そして視界の端で、小さく青い文字が点滅する。


《メインクエストを生成しました》


侑が意識を向けると、新たな文字がゆっくりと浮かび上がる。


---


【メインクエスト】


『七曜の継承者として成長せよ』


目的:


・レベル10到達


・初めての門を攻略


・七曜システムの基礎を習得


報酬:???


---


侑は小さく、息を吐いた。


「……帰って、妹の顔でも見るつもりだったんだけどな。」


苦笑しながら、空を見上げる。

さっきまで死と隣り合わせだったとは思えないほど、夜空には星が澄んでいた。



救急隊による簡単な診察を終えた侑は、警察から事情聴取を受けていた。


「門の中で、何があったんですか?」


若い警察官が、真剣な表情で尋ねる。

侑は少し考えてから、答えた。


「気づいたら、森の中でした。大きな魔物が現れて……逃げることしか、考えていませんでした。」


嘘は言っていない。

七曜システム。

ヴリドラ。

黄金の光。

あれを説明したところで、信じてもらえるとは思えなかった。

警察官は手帳にメモを取りながら、頷く。


「門の中の記憶は、曖昧になる人も多いです。無理に思い出そうとしなくても大丈夫ですよ。」


「そうですか。」


侑は内心、少しだけ安心した。

どうやら、全てを話す必要はないらしい。

少女も保護され、母親のもとへ引き渡された。

別れ際、少女は深々と、頭を下げた。


「助けてくれて……ありがとうございました!」


「無事でよかった。今度から、知らない門には近づくなよ。」


「はい!」


少女は笑顔で頷き、母親に抱きついた。

その姿を見届けてから、侑は静かに踵を返した。


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