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第12話 明日へ その8

 ――Noiseキャンセリングを。


 発動する。いや。


 ――発動しない。


 ミソラの答えを待つように。


 十二本の光の柱が、ピスケとミソラを中心に渦巻いていた。


「ミソラ。」


「時間がない!」


 ルナの声が響く。


「Noiseキャンセリングの発動を!」


「……。」


 ミソラは。


 隣にいるピスケを見る。


 そして。


 その手を強く握りしめた。


「……。」


 ピスケも。


 何も言わない。


 ただ。


 静かにミソラを見つめている。


 ミソラは。


 その手を。


 ゆっくりと離した。


「ルナ……。」


「やっぱり。」


「辞めよう。」


「……。」


 ルナの声が。


 ほんの少しだけ止まる。


「……なんで?」


 ミソラは。


 真っ直ぐルナを見つめた。


「私は。」


「この世界が好き。」


「ピスケちゃんが。」


「リーチェちゃんが。」


「ミスティちゃんが。」


「真理ちゃんが。」


「皆と一緒に歌える、この世界が好き。」


「……そうなんだね。」


 ルナの声は。


 いつもと変わらなかった。


 優しく。


 穏やかで。


 だからこそ。


「でも。」


 ルナは続ける。


「この世界には。」


「Noiseに苦しんでる人達が大勢いる。」


「その全てを救うには。」


「この方法しか無いんだ。」


「……。」


 十二本の光が。


 さらに強く輝く。


「なら。」


 ミソラは。


 拳を握りしめた。


「私が全部救ってみせる。」


「……。」


「今まで起きたことは。」


「悲しいことも。」


「苦しいことも。」


「たくさんあったけど。」


 ピスケを見る。


 ミソラは小さく笑った。


「無くしていい過去なんて、1つも無いんだよ。」


「……。」


 しばらく。


 ルナは何も言わなかった。


 そして。


「そうか。」


「それが。」


「君の答えなんだね。」


「うん。」


 ミソラは頷く。


「ごめんね、ルナ。」


「私。」


「この世界を選ぶ。」


「……。」


 ルナの声が。


 静かに響く。


「でも。」


「ごめんね、ミソラ。」


「……え?」


 十二本の光が。


 一斉に輝きを増した。


「君に。」


「選択肢なんか無いんだよ。」


「……!」


 ミソラの表情が凍る。


「僕と初めて会った。」


「あの日から。」


 ルナの身体が。


 ゆっくりと宙へ浮かび上がる。


「僕は君を。」


「Noiseキャンセリングのための適合者として選んだ。」


「だから。」


「君の意思だけで。」


「このシステムを止めることは出来ない。」


「ルナ……?」


 十二本の光柱が。


 ミソラを中心に回転速度を上げていく。


「待って。」


「ルナ。」


「やめて。」


「僕だって。」


「やめたくないんだよ。」


 その声だけは。


 いつものルナと同じだった。


 けれど。


 その次の言葉は。


 違った。


「これが僕の役目だから。」


「……。」


 ミソラが一歩下がる。


「ルナ。」


「私たち。」


「友達じゃなかったの?」


「……。」


 ルナは答えない。


 ただ。


 十二本の光が。


 さらに激しく輝く。


「ピスケちゃん!」


 ミソラが振り返る。


「離れて!」


「ミソラさん!」


「早く!」


 ピスケは。


 ミソラの手を握ろうとする。


 しかし。


 その間を。


 光の柱が遮った。


「ミソラさん!」


「ピスケちゃん!」


 二人の手が。


 あと少し。


 届かない。


「ルナぁぁぁぁぁっ!!」


 ミソラの叫びが。


 世界中へ響き渡る。


 ルナは。


 ただ静かに。


 その光景を見つめていた。


「……ごめん。」


 そして。


 その瞳から。


 いつもの優しさが。


 消えた。


 代わりに。


 無機質な光が灯る。


「Noiseキャンセリングを開始する。」


 十二本の光柱が。


 一斉にルナとミソラへ収束した。


 ――ドンッ!!


 世界が。


 白く染まる。


 そして。


 ルナは。


 ミソラの前に立つ。


「さあ。」


「始めよう。」


 その声は。


 もう。


 ミソラの知っている。


 ルナの声ではなかった。


 ――第13話へ続く。


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