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第12話 明日へ その6

 歓声に包まれる世界。


 その中で。


 ただ一人。


 ルナだけは険しい表情を浮かべていた。


「ミソラ。」


「一先ず、おめでとう。」


「あっ!」


「ルナもお疲れ様!」


「……。」


「暢気なことを言ってるね。」


「これからが本番だってのに。」


「えっ?」


 ルナは真剣な表情でミソラを見つめる。


「今。」


「世界中から心奏力が流れ込んで来ている。」


「しかも。」


「アノマリーとのセッションで、Noiseキャンセリングの条件を満たした。」


「でも。」


「また少ししたら。」


「ステラはコードを書き換える。」


「Noiseキャンセリングを発動出来なくするだろうね。」


「そうなの!?」


 ミソラの表情が変わる。


「なら急がないと。」


「うん。」


「今、この状況なら出来るはずだ。」


 ルナはミソラを見上げる。


「世界中の心奏力を集める。」


「そして。」


「全開のNoiseキャンセリング機能によって。」


「100年前から続くNoiseの影響を。」


「すべて無かったことにする。」


「それが。」


「不荒の悲願でもあるからね。」


「さぁ。」


「急いで、ミソラ。」


「チャンスは今しかない!」


「う、うん!」


 ミソラは拳を握る。


 その時だった。


 ふと。


 脳裏に。


 一つの言葉が蘇った。


「……。」


「どうしたの?」


 ルナが尋ねる。


「前に。」


「おじいちゃんが言ってたよね。」


「魔奏器達は。」


「Noiseキャンセリング機能のために作られたって。」


「……。」


 ミソラの視線が。


 ゆっくりとピスケへ向く。


「もし。」


「Noiseの影響が全部なくなったら。」


「ピスケちゃんは……。」


「どうなるの?」


「……。」


 ルナの表情が曇る。


 しばらく。


 言葉が出なかった。


 そして。


「……明確には解らない。」


「ただ。」


「Noiseの影響が無くなれば。」


「それに連なるように生み出されたものたちも。」


「……消えてしまう可能性が高い。」


「……!」


 ミソラの瞳が大きく揺れる。


「なら……。」


「ミソラさん……。」


 ピスケが。


 静かにミソラの肩を抱く。


「ピスケちゃんは……消えちゃうの?」


「……。」


 ピスケは。


 ほんの少しだけ目を伏せた。


「……明確には。」


「ワタクシにも分かりませんわ。」


「でも。」


 ミソラの手を。


 そっと握る。


「元々、魔奏器達はNoiseキャンセリング機能の適合者を探すために作られた存在。」


「たぶん。」


「そうなるのでしょうね。」


「そんな……。」


「だから。」


 ピスケは微笑んだ。


「良いんですのよ。」


「ワタクシのことは。」


「よくないよ!」


「ミソラさん。」


「聞いてくださいませ。」


 いつもの。


 穏やかな声。


「ワタクシは。」


「ずっと、自分が何者なのか分かりませんでした。」


「雲雀なのか。」


「ピスケなのか。」


「それとも。」


「ただの魔奏器なのか。」


 少しだけ苦笑する。


「でも。」


「ミソラさんと出会って。」


「初めて。」


「そんなこと、どうでもいいと思えましたの。」


「……。」


「一緒にご飯を食べて。」


「一緒に笑って。」


「一緒に歌って。」


「一緒に怒られて。」


「……そんな毎日が。」


「ワタクシにとっては。」


「本当に幸せでしたわ。」


 ミソラの瞳から。


 涙が零れる。


「だから。」


「最後くらい。」


「ちゃんと役目を果たしたいんですの。」


「世界からNoiseが消えるなら。」


「きっと。」


「たくさんの人が笑えるようになる。」


「それなら。」


「ワタクシが消えることなんて。」


「大したことではありませんわ。」


「……嘘。」


「え?」


「ピスケちゃん。」


「笑ってるけど。」


「絶対、怖いんでしょ。」


「……。」


 ピスケの笑顔が。


 ほんの少しだけ揺れた。


「……ええ。」


「怖いですわ。」


「もっと。」


「ミソラさんと一緒にいたい。」


「もっと。」


「皆さんと歌いたい。」


「もっと。」


「くだらないことで笑いたい。」


「……。」


「本当は。」


「まだまだ。」


「やりたいことがいっぱいありますの。」


 それでも。


 ピスケは笑う。


「でも。」


「それ以上に。」


「ミソラさんには。」


「世界中の人を笑顔にしてほしい。」


「……ピスケちゃん。」


「だから。」


 ピスケは。


 ミソラの手を、ぎゅっと握った。


「ワタクシのことを理由に。」


「立ち止まらないでくださいませ。」


「……。」


「これは。」


「ワタクシからのお願いですわ。」


「……イヤだよ。」


「ミソラさん?」


「そんなの……。」


「イヤだよ!」


「ピスケちゃんが居なくなる未来なんて!」


 ミソラの声が。


 光の渦の中へ響き渡った。


「世界中の人が笑顔になっても。」


「それじゃ意味ないよ!」


「私は。」


「ピスケちゃんと一緒に笑いたい!」


「……。」


 ピスケは。


 しばらく何も言わなかった。


 そして。


 泣きそうな顔で。


 それでも笑った。


「……困った人ですわね。」


「本当に。」


「でも。」


「そんなミソラさんだから。」


「ワタクシは。」


「あなたを選んで。」


「本当に良かったと思っていますわ。」


 その言葉と共に。


 世界中から集まっていた心奏力が。


 ミソラへ向かって一斉に流れ込み始めた。


「……!」


 空が。


 光に染まる。


 そして。


 ミソラとピスケを中心に。


 十二本の光の柱が。


 世界各地から立ち上がった。


「……時間がない。」


 ルナが叫ぶ。


「始めるよ!」


「十二の魔奏器よ。」


「今こそ。」


「その力を示せ!」


 十二本の光柱が。


 ミソラとピスケを中心に激しく渦巻き始める。


「やだ……。」


「やだよ……!」


「待ってよ、ルナ!」


 ミソラが叫ぶ。


 けれど。


 光は止まらない。


「ミソラさん……。」


 ピスケが。


 ミソラの手を握る。


「歌って。」


「……。」


 ミソラの瞳が揺れる。


 世界を救う。


 ずっと夢見ていたこと。


 10年前から。


 ずっと追いかけてきた夢。


 でも。


 その先に。


 ピスケがいない。


「ッッッ!!!」


 声にならない叫びが。


 胸の奥で弾けた。


 十二本の光柱が。


 さらに強く輝く。


 そして。


 世界中の心奏力が。


 一つへ集まり始めた。


 その瞬間。


 ミソラの選択が。


 世界の未来を決める。


 Noiseキャンセリングを。




 発動する――→第12話 その7へ


 発動しないー→第12話 その8へ




 どちらのページを捲るのかは


 貴方次第です


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