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第12話 明日へ その4

「「「「World for! spielen!!!」」」」


 四人の声が、夜明けの羽波市へ響き渡った。


「みんなー!!!」


 ミソラが笑顔で叫ぶ。


「盛り上がっていくよーーー!!!」


 その瞬間。


 世界中へ配信されていた映像が切り替わった。


 ――【exciting&Emotional】START!


 軽快な前奏。


 ミソラの歌声が、朝焼けの空へ響き渡る。


 ――前を向いて 涙を拭いて。


 ――君は 一人じゃないよ。


 羽波市。


 フランス。


 ロシア。


 アメリカ。


 世界各地の画面へ、戦い続ける魔奏少女たちの姿が映し出されていく。


 ◇ ◇ ◇


 ――フランス。


「おっしゃぁぁぁ!!」


 ブレェネリがレオを掻き鳴らす。


 赤い心奏力がNoiseをまとめて吹き飛ばした。


「ブレちゃん、張り切りすぎ!」


「だってよ!」


「ミソラが歌ってんだぜ!?」


 アイネが苦笑しながらベースを鳴らす。


「じゃあ私も!」


 二人の音が重なった。


 ◇ ◇ ◇


 ――ロシア。


 ペトルーシュカが静かにサックスを構える。


「……。」


 画面に映るミソラを一瞬だけ見つめる。


「悪くない。」


 そして。


 再びNoiseへ向き直った。


 紫紺の旋律が夜明け前の街を駆け抜ける。


 ◇ ◇ ◇


 ――アメリカ。


「ミソラちゃーーーん!」


「喜歌!」


「ちゃんと前を見ろ!」


「見てるよぉ!」


 サダメが呆れながらヴァイオリンを鳴らす。


 喜歌も笑いながらトランペットを吹く。


「ほら!」


「私たちも負けないよ!」


 銀と黄金の光がNoiseを包み込む。


 ◇ ◇ ◇


 ――そして。


 日本。


 姫嶋学園。


 静まり返った校舎の一室。


 奏音先生はモニターを見つめていた。


 そこには。


 朝焼けの羽波市で歌う四人の少女。


「……。」


 奏音先生は小さく息を吐く。


「やっと。」


「ここまで来たんですね。」


 その周囲には、何人もの生徒が集まっている。


「先生!」


「見えます!」


 何人もの生徒が画面へ駆け寄ってくる。


「すごい……。」


「世界中で戦ってる人たちが、みんな同じ歌を聴いてる。」


「私たちも何か出来ないのかな。」


 奏音先生は振り返る。


「出来ますよ。」


「え?」


「今。」


「あなたたちがしていること。」


「この歌を聴いて。」


「この子たちを信じること。」


 誰かが拳を握る。


「頑張れーー!!」


「負けるなーー!!」


 奏音先生は静かに微笑んだ。


「大丈夫。」


「きっと、あの子たちなら。」


 ◇ ◇ ◇


 歌は続く。


 怯えていた人々の表情が。


 少しずつ変わっていく。


 不安に歪んでいた顔が。


 歌声を聴くたび。


 ほんの少しずつ。


 笑顔へ変わっていく。


 ――exciting&Emotional。


 ――心弾むリズムを。


 ――届けてあげるよ 勇気は無限大。


 ミソラは歌い続ける。


 ピスケが叩く。


 ミスティが奏でる。


 リーチェが支える。


 四つの音が。


 一つの歌になって。


 世界中へ響き渡っていく。


 そして。


 その時だった。


「――!」


 ミソラが突然、歌を止める。


「……え?」


 背後。


 何もなかったはずの空間に。


 赤い影が立っていた。


 白い肌。


 赤いワンピース。


 無邪気な笑顔。


「ミソラちゃん。」


「……!」


 ミソラの顔から笑顔が消える。


「アノマリー……!?」


 演奏が一瞬だけ乱れる。


「どうして……ここに!?」


 アノマリーは楽しそうに笑った。


「だって。」


「楽しそうだったから。」


 ゆっくりと。


 ミソラへ近づいてくる。


「私も。」


「一緒に歌いたいな。」


「……。」


 ミソラはルナを握り締める。


 その目に。


 再び戦う意志が宿った。


 しかし。


 曲は。


 まだ終わっていない。


◇   ◇   ◇


 ――数時間前。


 姫嶋学園地下。


 【ステラの間】


「なんだ。」


「まだこんなとこに居やがったのか。」


「龍玄さん……?」


「なんでこんな場所へ……?」


「なぁに。」


「孫娘が気張ってんだ。」


「ジジイが暢気に茶ぁすすってる場合じゃねぇだろ。」


「……。」


「若いものに託すのも。」


「老人の役目じゃありませんかね。」


「ハッ!」


「姫嶋のハナタレ坊主が言うようになったな。」


「オレももういい年ですよ……?」


「まだ五十そこらのガキが知った口聞くんじゃねぇよ。」


「はぁー……。」


「それで。」


「何しに来たんですか。」


「Noiseキャンセリングに必要な。」


「最後のパーツを取りに来た。」


「……最後のパーツ?」


 龍玄は懐から古びた工具を取り出す。


「アノマリーを。」


「叩き起こす。」


「……!」


 学園長の表情が変わった。


「幸い。」


「ここの住人は、誰かさんが追っ払ってくれたからな。」


「好きに弄くれるってもんよ。」


 龍玄は壊れた設備へ歩み寄る。


「……出来るんですか?」


「そんなことが……。」


「いや。」


「それより危険過ぎる。」


「だろうな。」


「だからやるんだよ。」


「ちょっと待ってください!」


 龍玄は返事もせず、機械へ手を伸ばす。


「こりゃあ酷ぇな。」


「こんなにしちまいやがって。」


「直すのに時間かかるぞ、これ。」


 ガチャ。


 ガチャガチャ。


「質問に答えてください!」


「あー?」


「アノマリーを復元するなんて。」


「本気で言ってるんですか!?」


「アノマリーの元になった人物。」


「その人格データが残ってりゃ、復元は可能だ。」


「……。」


「あのステラのこった。」


「保険として、いつでも再構築できるようにデータくらい置いてあるだろ。」


「そんなこと……。」


「本当に可能なんですか。」


「可能かどうかじゃねぇ。」


 龍玄の手が止まる。


「信じるしかねぇんだよ。」


「孫娘の。」


「友達をよ。」


 静かな地下室に。


 ガチャリ、と工具の音だけが響いた。


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