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第12話 明日へ その2

「……Noiseの増殖が止まった?」


 ミスティが周囲を見渡す。


 先ほどまで次々と出現していたShift H。


 その数が。


 止まっている。


「ステラの方でミソラ達がなにかやったか。」


「みたいだなー。」


 リーチェは瓦礫の上でライブラを構え直す。


「でも。」


「今さら増えなくなったところで。」


「この数じゃ、絶望的な状況は変わらんが……。」


 その時。


 ――ピリリリリ!


「ん?」


 ミスティのスマートフォンが鳴る。


 画面を確認する。


「……ミソラか。」


 ピッ。


「今、忙しいんだがな。」


『うん!』


『ステラのところから見てたよ!』


『カッコよかった!』


「……そうか。」


 ほんの少しだけ口元が緩む。


「で。」


『ステラと……。』


『話してきたよ……。』


「……。」


 ミスティは周囲を見る。


 街中を埋め尽くすShift H。


 その向こうから、また衝撃波が迫ってくる。


「それ。」


「長くなりそうか?」


『え?』


「今、めちゃくちゃ衝撃波が飛んできてるんだが。」


『ご、ごめん!』


『じゃあ、一回どこかで落ち合おう!』


「そうしてくれ。」


『ミスティちゃん、リーチェちゃんも無事で――』


 通信が切れる。


「……。」


「ミソラ、何か言ってた?」


「落ち合うそうだ。」


「おー。」


「じゃあそろそろ撤退――」


「私はNoiseから逃げない!」


「……。」


 ミスティは無言でリーチェを見る。


「お前は。」


「もう少し危機感を持て。」


「だってよ!」


「ここで逃げたら、街の人たちどうするんだ!」


「……。」


 ミスティは深く息を吐く。


「……大人になれ。」


「なんでだよ!?」


 ー―キィィィィン……。


 ー―リン……。


 ー―キィン、キィン……。


無数のShift Hが空中を漂う。


「ほら。」


「来たぞ。」


「よっしゃぁ!」


 リーチェが笑う。


「行くぞ、ミスティ!」


「……まったく。」


 ミスティもジェミニを構え直す。


「本当に。」


「お前とは意見が合わないな。」


「昔からだろ?」


「……そうだったな。」


 二人は同時に駆け出した。


「位置情報に依りますと、お二人ともその場に残っておりますね」


「なんでぇ!?」


「まぁ、あのお二人ですからね」


「堂道、二人の元まで急いで!」


「かしこまりました」


 堂道――江戸川堂道は、運転席のボタンをポチッと押した。


 ――ウィーン。


 ――ガシャン、ガシャン、ガシャン!


「え?」


 車体が変形する。


「ギュオオオオオッ!!」


「ええええええ!?」


 3人の乗るリムジンが、凄まじい勢いで加速した。


「江戸川家に代々伝わる、リムジン違法改造技術でございます」


「伝えるなそんなもん!」


「綾小路たるもの、いつでも優雅たれ、ですわ」


 後部座席でピスケは優雅に紅茶を啜る。


「この程度で動じぬよう鍛えられておりますの」


「Gがぁぁぁぁ!!」


「現在14Gでございます」


「潰れる! 潰れるぅぅぅ!!」


「これよりNoiseの群れへ突入いたします」


「なんでーーー!?」


「脱出のご準備を」


「何の!?」


「パラシュートでございます」


「私は綾小路ではないんだよーーー!?」


 ――ズドオオオオオオオオン!!


 リムジンがShift Hの群れへ突っ込んだ。


 その直後。


「ミソラ様!」


「二人が見えました!」


「えっ、もう!?」


 車体が急旋回する。


「今です!」


「今って何が!?」


「お降りくださいませ!」


「だから何でぇぇぇ!?」


 ドアが開く。


 ミソラは勢いよく外へ放り出された。


「きゃああああああっ!!」


 そのまま空中で一回転。


「……よし!」


「よくないよ!?」


 その先には。


「ミソラ。」


「来たか。」


 ジェミニとライブラを構えたミスティとリーチェ。


「二人とも!」


「迎えに来たよ!」


「遅いぞ。」


「お前が言うな!」


「まぁまぁ。」


 リーチェが笑う。


「これで四人揃った。」


 四人の魔奏器が、それぞれ淡い光を放つ。


 無数のShift Hが星空のように舞う。


「さあ。」


 ミスティが前を向く。


「終わらせるぞ。」


「うん!」


「ええ!」


「おう!」


 四人の声が重なった。


「いや、もうこの辺のは粗方片付け終わってるけどな」


「えええええーーー!?」


「残りは街に散らばってるのを虱潰しにやっていくか……。」


 その瞬間だった。


 ――プツン。


 街中の電子機器が、一斉に停止する。


「……?」


 街頭モニター。


 駅の電光掲示板。


 人々のスマートフォン。


 すべての画面が真っ暗になる。


「何だ……?」


 そして。


 ――キィィィィン……。


 美しい。


 けれど。


 どこか不気味な音が響いた。


 ミスティが空を見上げる。


「……何の音だ?」


 次の瞬間。


 世界中の電子機器が、一斉に再起動する。


 だが。


 そこに映ったのは映像ではなかった。


 ただ。


 無数の光。


 そして――。


 電子機器の内部から、Shift Hが次々と這い出してくる。


「……!」


「嘘だろ。」


 街頭モニターから。


 駅の電光掲示板から。


 スマートフォンから。


 そして。


 世界中のありとあらゆる電子機器から。


 無数のShift Hが生まれていく。


「増殖が……再開した!?」


「いや。」


 ルナが呟く。


「違う。」


「今度は――。」


「世界中で同時に発生してる。」


「……!」


 ミソラは息を呑む。


 遠くの街。


 そのさらに向こう。


 見渡す限りの空へ。


 無数の光が舞い上がっていく。


 それはまるで。


 星空だった。


 ただし。


 その一つ一つが。


 人々の感情を狂わせる、異形のNoise。


「ステラは……。」


 ピスケが呟く。


「もう、ここにいる必要すら無いということですのね。」


「……。」


 ミソラは拳を握る。


「じゃあ。」


「私たちがやることは一つだよ。」


「全部。」


「止める。」


 誰も答えない。


 ただ。


 四人は同時に魔奏器を構えた。


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