↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
5/75

第1話 世界一の魔奏少女! その5

 「みんなーっ!!」


 「盛り上がって行くよーーーっ!!」


 地下空間いっぱいに、ミソラの歌声が響き渡る。


 ♪ exciting&Emotional


 ♪ 心弾むリズムを


 マイクから放たれた音色は、目には見えない波となって地下を駆け抜けた。


 その波は壁を伝い、床を伝い、旧校舎を抜け、学園中へと広がっていく。


    ◇


「きゃあっ!」


 体育館へ避難していた生徒たちは、今なおNoiseの恐怖に震えていた。


 扉の外では、上級生たちが必死に時間を稼いでいる。


「くっ……!」


 奏器を構えた上級生が音を放つ。


 しかし大型Noiseはびくともしない。


「このままでは……!」


 その時だった。


 校内放送用のスピーカーから、小さなノイズが流れる。


 ジジッ――。


 そして。


 澄み切った歌声が響いた。


 ♪ 届けてあげるよ 勇気は無限大


「……え?」


 誰かが顔を上げる。


 その歌声は、優しく体育館を包み込んだ。


 泣き続けていた少女が、ゆっくりと涙を止める。


 震えていた少年が、小さく拳を握る。


「あれ……?」


「怖く……ない。」


 胸を締め付けていた黒い感情が、雪解けのように溶けていく。


 廊下では。


 「あかり!!」


 そう叫び続けていた少女が、友人の肩を抱いていた。


 虚ろだった瞳に、少しずつ光が戻る。


「……私。」


「あれ……?」


「大丈夫?」


「あ……うん。」


 二人は顔を見合わせる。


 理由は分からない。


 だけど。


 その歌を聴いているだけで、不思議と前を向ける気がした。


    ◇


 校庭。


 黒い靄が学園を覆い尽くしていた。


 だが。


 ♪ exciting&センセーショナル


 ♪ 見たこともない奇跡起こすよ


 歌声が届いた瞬間。


 Noiseたちの身体が淡い光へと包まれる。


 ギャァァァァァァッ!!


 苦しむような叫びを上げながら、その黒い身体は少しずつ崩れていく。


「なっ……!?」


 迎撃していた生徒たちが息を呑んだ。


「Noiseが……。」


「消えていく……。」


 空を覆っていた黒い靄が晴れていく。


 夕日が、再び学園を照らした。


 最後のフレーズが響く。


 ♪ 私 夢が叶うまで 絶対負けない!


 その歌と共に。


 最後の一体が、光の粒となって消えた。


 静寂。


 誰一人として声を出せない。


 ただ風だけが、校庭を吹き抜けていく。


「……助かった。」


 誰かの呟きをきっかけに。


 歓声が上がった。


「勝ったんだ!」


「Noiseが消えた!」


「助かったぁ……!」


 泣きながら抱き合う生徒たち。


 その様子を見つめながら、奏音先生は静かに空を見上げる。


「この歌は……。」


 十年前。


 自分が歌っていた、あの歌。


 そして地下では。


 変身が解け、制服姿へ戻ったミソラがその場へ座り込んでいた。


「終わった……の?」


 ルナは小さなぬいぐるみのような姿に変わり、ミソラの肩へぴょんと飛び乗る。


「うん。」


「初ライブ、大成功。」


「ライブって!」


「私、今戦ってたんだけど!?」


「あれ?」


 ルナは首を傾げる。


「ライブも戦いも一緒だよ?」


「歌でみんなを笑顔にするんでしょ?」


「……。」


 ミソラは少しだけ笑った。


「うん。」


「……そうだね。」


 ルナも笑う。


「じゃ。」


「改めて。」


「ようこそ。」


「魔奏少女の世界へ。」


     ◇ ◇ ◇


 翌朝。


『速報です。昨日午後、羽波市内で発生した大型Noiseは、一人の新たな魔奏少女の活躍により鎮静化したと見られています。現在、各機関が当時の映像を解析中で――』


 テレビのニュースを、一人の執事が静かに見つめていた。


 映像には、校内放送から流れる歌だけが記録されている。


 肝心の少女の姿は、光に包まれて判別できない。


「お嬢様。」


 執事が恭しく一礼する。


「解析が完了いたしました。」


 窓辺で優雅に紅茶を楽しんでいた金髪の少女が、静かにカップを置いた。


「判明したのですね。」


「はい。」


「歌声、および心奏力の波形から照合した結果……。」


 執事は一枚の資料を差し出す。


 そこに記されていた名前は。


 **識戸 ミソラ。**


 少女はふっと微笑む。


「識戸さん……ですか。」


「ふふっ。」


「面白くなりそうですわ。」


 朝日に照らされた紅茶が、小さく揺れた。


 その出会いが、運命を大きく動かすことを。


 まだ誰も知らない。


 ――第一話 『世界一の魔奏少女!』 完


「そういえばさー」


「どうしたんだい?」


「私の歌が学園内に流れてたのはなんだったんだろ…?曲の伴奏も流れてたしさ」


「ああ、それならぼくが学園内のシステムをハッキングして流しておいたよ」


「ええ!?」


「古い曲だったけど学園のデータベースに楽曲素材があって助かったよ」


(このこ…結構危険なんじゃないかな…?)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。