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第10話 始めよう もう一度 幕間

「ひぃー!」


「なんでLiveまで一週間なのー!?」


 ミソラが頭を抱える。


「いや、早くLiveしたいのかなーって思って。」


「流石に三日とかだと厳しいでしょ?」


「一週間でやるのが普通無理なんだよー!」


「腕が……。」


「腕が……。」


 隣ではピスケが両腕をぷるぷる震わせている。


「ピスケちゃん!?」


「なんか練習しすぎて両腕もげそうになってるよ!?」


「学園側が出来るって言ってたからなー。」


「いや、出来る出来ないの問題じゃ――」


「『シリウスのスタッフなら余裕っすよ?』って学園長に言ったら。」


「快く承諾してくれたよ。」


「半分脅してるよねぇ!?」


「『やってやるよゴランダラー!』って叫んでたなぁ。」


「学園長も何やってんの!?」


 ミソラは頭を抱える。


「そもそも!」


「一週間でLiveなんて無茶苦茶だよ!」


「大丈夫だって。」


「私もシリウスの頃は――」


「リーチェさん。」


「ん?」


 ピスケが疲れ切った顔で振り返る。


「その理論を姫嶋学園へ持ち込まないでくださいませ。」


「えー。」


「だって出来るって言ってたし。」


「誰が!?」


「学園長。」


「言った本人も後悔してると思うよ!?」


 その時。


 ミソラのスマートフォンが鳴った。


「ん?」


「奏音先生から……。」


 画面を開く。


『動画の削除が追いつきません』


『拡散されすぎです』


『魚拓まで大量に取られています』


『何をしたんですか』


「……。」


「……。」


「……。」


「マジで何しに来たんだこの人!」


 ミソラがリーチェを指差す。


「いやぁ。」


「元気づけようと思っただけなんだけどなー。」


「結果が大惨事なんだよ!」


 ピスケが首を傾げる。


「しかし。」


「何故、そこまで動画が再生されているのでしょう?」


「んー……。」


 リーチェは少し考える。


「なんか撮影してたのが。」


「元々結構人気ある人だったみたいだからねぇ。」


「人気ある人?」


「えーと……。」


 スマートフォンを操作する。


「あ、これだこれだ。」


【3日前】


【2,700万再生】


「また伸びてる!?」


「二千七百万!?」


 ミソラとピスケが同時に声を上げる。


 表示されたチャンネル名。


【田辺倉 鈴人の遊食堂ch】(第8話に登場)


「……。」


「……。」


「……。」


 ミソラがゆっくりと顔を上げる。


「あいつの仕業かー!?」


 その頃。


 遠く離れた場所で。


「へっくし!」


「……誰か俺の噂してんな。」


◇      ◇      ◇


 ――そして。


「はぁー……。」


 ミソラはベッドへ倒れ込んだ。


「この一週間、めちゃくちゃ忙しかった……。」


 Liveが決定してからの数日間。


 奏音先生には、しこたま怒られた。


 衣装を合わせて。


 Liveの楽曲を頭に叩き込んで。


 リハーサルをして。


 また怒られて。


 気付けば。


 初Liveは、もう明後日に迫っていた。


「いよいよ明後日……。」


 ミソラは風呂上がりの髪をタオルで拭きながら、拳を握る。


「最後の追い込みだー!」


「絶対、最高のLiveにするぞー!」


 気合を入れ直した、その時だった。


「……ん?」


 机の上に置いていたスマートフォンが。


 ピコン、と小さく鳴った。


「誰だろ?」


 画面を覗き込む。


 そこには。


【おじいちゃん】


「……おじいちゃん?」


 メッセージを開く。


【初ライブ決定おめでとう】


【その前に話しておきたいことがある】


【明日、バンドメンバー四人でオレの家まで来るように】


「……。」


 ミソラはしばらく画面を見つめる。


「おじいちゃん……?」


「えっと……。」


「明日?」


「四人で?」


 首を傾げる。


「……。」


「おじいちゃん。」


「相手のスケジュールとか考えてる?」


 既読。


 数秒後。


【考えてる】


「考えてた!?」


 思わずスマートフォンへツッコむ。


 すると。


【だから明日】


「そういう問題じゃないよぉ!」


 ミソラの叫び声が。


 静かな夜の街へ響いた。


 ――しかし。


 そのメッセージの裏に隠された意味を。


 この時のミソラは、まだ知らなかった。



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