第8話 幕間
アノマリー襲撃から二日後。
病室。
「二人ともー!」
「大丈夫かー!」
リーチェが勢いよく扉を開ける。
「おー!」
「たまに鼻から変な汁出るけど元気だぞ!」
「頭を打ってたんだから安静にしてろ。」
ベッドの横で腕を組むペトルーシュカが呆れたようにため息を吐く。
「それよりも……。」
病室の空気が少しだけ重くなる。
「ああ……。」
視線の先。
ベッドにもたれ掛かるアイネ。
「あっ……。」
「わ、私は……大丈夫だから……。」
そう笑う。
けれど。
その笑顔はどこか力が無かった。
「ブレェネリ。」
「少し廊下で話せるか。」
「……ああ。」
◇
「どうなんだ。」
「アイネは。」
病室の外。
静かな廊下。
ブレェネリは壁にもたれながら答えた。
「あれからまともに心奏力が出ねぇ。」
「ヴァルゴも反応はしてる。」
「でも……前みたいには歌えねぇってさ。」
「多分。」
「あの赤いやつのせいだ。」
「……そうか。」
リーチェは拳を握る。
沈黙が流れる。
「私からもいいか。」
ペトルーシュカが静かに口を開いた。
「どうした。」
「私は。」
「魔奏少女を引退しようと思っている。」
「……!」
リーチェが目を見開く。
「元々。」
「年齢的にも限界を感じていた。」
「言い出すタイミングが無かっただけだ。」
「こんな時に済まない。」
「今出て行かれたら……。」
リーチェが俯く。
その時だった。
「別に。」
ブレェネリが笑った。
「いいんじゃねぇか。」
「ちょうど。」
「そういうタイミングだったんだろ。」
「ブレェネリ……。」
リーチェが顔を上げる。
ブレェネリは真っ直ぐリーチェを見る。
「リーダー。」
「お前は日本に残れ。」
「……何?」
「オレはアイネの側に居る。」
「あいつ。」
「放っといたら無茶するタイプだからな。」
「君がそれを言うのか……。」
ペトルーシュカが苦笑する。
「うるせぇ。」
「自覚くらいある。」
少し照れ臭そうに頭を掻く。
「ルーは引退。」
「オレはアイネ担当。」
「だったら。」
「残るのはリーダー、お前だ。」
「でも……。」
「シリウスは……。」
ブレェネリは笑う。
「安心しろ。」
「シリウスは負けねぇ。」
「……え?」
「リーダー。」
「あいつ倒してこい。」
「ミソラシュピーレンと一緒にな。」
「そしたら。」
「オレらの勝ちだ。」
「……。」
「シリウスに敗北は許されねぇ。」
「だから。」
「リーチェがあいつ倒してくれたら。」
「オレらの勝ちだ!!」
一瞬の静寂。
そして。
リーチェは思わず吹き出した。
「ははっ……。」
「君らしいな。」
ブレェネリも豪快に笑う。
「だろ?」
「だから胸張って行ってこい。」
「シリウスのリーダー。」
その言葉に。
リーチェはゆっくり頷いた。
「……任せろ。」
その瞳に、迷いはもう無かった。




