第32話 廃墟の街
夜――今日は早めに寝て、夢の中に入った。まだ、私だけ昨日の襲撃現場にいるので、東翔宮に出くわさないためだ。
幸い周りには誰もいない。望月 瑠奈がいなくなったせいで、小屋は跡形も無く消えていて、代わりに朽ちかけた物置のような建物が立ち、周囲には木材等か散乱している。
それに加え、地面には西園寺の大蛇が暴れ回った生々しい傷跡が散見される。
ここにいると瑠奈ちゃんと猫達の事を思い出してしまうな。
胸にわだかまりを抱えたまま、私は集合場所に向かった。
家具屋に到着したが。まだ誰も来ていないようだ。思わずベッド売り場で飛び跳ねてみる。沢山並んでいるベッドの端から順番にジャンプして渡っていくのだ。現実ではやっちゃいけない事をやるのもいいもんだ。私も理瑚の事を笑えないな。
少ししたら、委員長がやって来た。
「緋影さん、何をやっているのですか?」
「あ、見つかっちゃった!いや、現実でできない事をするのもいいかなと思って。委員長もやってみたら?」
「もー、そういうのは……いえ、やってみてもいいかもしれませんね。今日で終わりかもしれませんし」
「そんな縁起でもない!でも、そうだね、悔いのないように生きたいって思う」
私も前向きになったな。ほんの少し前まで学校に行くのが嫌で毎日が憂鬱だったのに、その頃とは大違いだ。
委員長もベッドの上を飛び跳ねる。自然に無邪気な笑顔になる。こんな委員長を見るのは初めてだな。
「そういえば、前から思ってたんだけど、委員長は、どうして敬語なの?友達なんだから、タメ語でいいと思うよ。あと、呼び方も舞でいいからね」
「フフッ、そうですね、何だかタイミングを失ってしまって。そのうち切り替えます」
委員長は、初めのうちは壁があって距離を取っていたんだと思うけど、今は気兼ね無く話ができる。そういえば、委員長っていう呼び方も変かな?でも、もはやあだ名みたいなもんだしな。
「グエッ!」
委員長が飛んだ先のベッドで理瑚の声がする。どうやら、タイミング悪く夢の中に入り、踏んでしまったようだ。
「ごめんなさい、棚加さん!」
「い、いや、大丈夫だよ、ゲホッ……」
理瑚も揃ったことで、学校へ――我らが母校美樹丸女学園へ向かう。
ここから学校へは、少し距離がある。私達は決意を胸に一歩踏み出す。
2時間近く歩いただろうか、ようやく学校の近くまで辿り着いた。ここは学校の北側なので、真っ直ぐ南に進めば学校なのだが、目の前には、住宅街が消え、廃墟のような景色が広がっている。
これだ、前に一度見た景色。つまり東翔宮の支配領域というわけだ。
「えっ!?何これ?これが舞の言ってた東翔宮のテリトリーって奴?広すぎでしょ」
「緋影さんが言ってたのは、学校の南側でしたよね。もしかして、学校を360°囲むように廃墟化しているのでしょうか?」
「う〜ん、その、もしかしてかもしれないなぁ。それだけ強い精神力って事か……」
理瑚も委員長も圧倒されている。
「で、あの遠くに見える塔が学校から伸びてるんだよ」
「ゲッ、あの黒い奴か!?見るからに怪しさ満点、危険しか感じないよ。ちょっと、帰りたくなってきた」
理瑚が弱音を吐く。
「何言ってるんです!棚加さんの盾は何でも防げるのですから、少しぐらいの攻撃なんて問題無いですよ。自信を持ってください」
「そ、そうだよね、アタシの盾は何でも防ぐんだ。アタシが皆を守るからガンガン行こう!」
理瑚が乗りやすい性格で良かった。でも、一面廃墟で、建物は学校に近くなるほど、無くなっているようだ。かなり見通しが良くなってしまっている。私達は残った建物に隠れながら、慎重に進む。
「相手は空から見てるから、アタシ達簡単に見つかりそうだよね」
「逆にこっちだって、空にいたら簡単に見つけられるかもね?今日も天気がいいしさ、空にポツンと人がいたら、結構遠くても目立ちそうだよ」
「それに、幸いスピードは、地上を歩くのと変わらないように見えました。もし、見つかっても逃げられるのではないでしょうか?」
「そうだね、よし、空を良く見ながら進もう」
そうして、理瑚が右前方、委員長が左前方、そして私が後方の空を確認しながら、注意深く進んで行った。
少し雲があるけど、きれいな青空だ。周りの建物はボロボロで、背が高いものはないから、遠くの空まで見渡せる。依然、東翔宮の姿は見えない。
このまま無事学校まで辿り着けそうだな。3人ともそう思った時――
キラリと、すぐ右の建物の屋根あたりが光ったかと思うと、槍が飛んでくる。
「危ない!」
気付いたのが理瑚で良かった。飛んできた槍をギリギリ盾で防ぐ。
「あぁ、東翔宮がこんな近くに――」
空ばかり見ていたが、東翔宮は既に建物の中にいたのだ。
東翔宮は素早く上空に駆け上がる。もう10メートルは上にいるだろうか、建物に登ったとしても届く距離ではない。
「フフッ、太陽の光が反射して気づかれたのね。
それにしても、この広い街の中、あなた達をどうやって探し出すのか悩んでいたところよ。それが、わざわざ、そちらから私が休んでいた建物に近づいてきてくれるなんて、あなた達最高にツイてるわ。
もう終わりよ、今度こそ串刺しにするわ、一人残らずね!」




