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夢の中の蟲毒な学園  作者: キャシヨ
第4章 激闘

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第33話 VS 空を歩く槍鬼 四天王 東翔宮 凛

 最悪の状況だ。今は広い道の真ん中、少し離れた建物も殆ど崩壊して、屋根なんて無い。こんな所で東翔宮に出くわしてしまうなんて!


「自分達の不運を呪うといいわ。いえ、あなた達にお似合いの当然の運命かもしれないわね」

 東翔宮は、うっすら笑いながら、再び手に持った槍を投下する。

 理瑚が素早く盾で防ぎ、激しい衝突音が響く。しかし、その瞬間、槍は消え、槍を投げる姿勢で構えている東翔宮の右手に再び出現する。

 槍を握った感触があるのかないのか、それすら感じさせないほどの速さで、東翔宮はすぐさま槍を投げつける。

 つまり、東翔宮は右腕を振るだけで、次々と槍を投げ放つことができるのだ。


「うわっ、これキリが無いよ!」必死に盾で守る理瑚が叫ぶ。

 こんなに連続で投げられるのか!

 目的地の学校も近いとはいえ、まだ距離がある。攻撃を防ぎながら3人で逃げ切るのは困難だ。でも、このままじゃ理瑚の体力も持たない。

 幾度となく槍の衝撃を受け、理瑚の腕は震えてきていた。


「アハハッ、無様ね。超必死じゃない!ほらほら、頑張って〜。それとも諦めて、下民らしく地面に這いつくばれば〜」

 弄ぶように槍を投げ続ける東翔宮が嘲笑う。


 クソー!いい気になりやがって!でも、どうする事も出来ない。理瑚の陰に隠れていた委員長が意を決して叫ぶ。

「東翔宮さん!あなた、人の事をバカにするけど、クイーンの言いなりになってる、あなたの方が、よっぽど惨めですよ!自分の事、客観視してみたらどうですか!」 

「ハァ?何言ってんだ!クイーンは格が違うんだよ、この貧乏人共が!」

 東翔宮の言葉が乱暴になっている。余程プライドが高いのだろう。侮辱されて、明らかに熱くなっている。すかさず私も叫ぶ。

「金持ちだからって偉いわけじゃないんだぞ!しかも、親の金じゃないか、お前なんか何の価値もないぞ!」

「クソが、この貧乏人め!羨ましいだけだろ!私の小遣いいくらか教えてやろうか?」

「金にしか価値を見いだせないなんて、悲しい奴だ。大事なものほど目に見えないんだぞ!」

「出た、貧乏人の戯言!いったい何が大事なんだ、エッー!」

 東翔宮 凛は、心に闇を持っている。そうでなければ、こんな荒廃した街は出現しないだろう。


 投げつけられる槍を防ぎながらも、思い余ったように理瑚が叫ぶ。

「だ、大事なものはねぇ、愛だよ!」

「ハァ?何恥ずかしい事言ってんだ、チビスケ!」

 東翔宮が呆れているが、構わず理瑚が叫ぶ。

「愛って、特に家族の愛だ!ウチは確かに裕福では無いけどさ、父ちゃんと母ちゃんと兄ちゃんとアタシで、とっても仲が良いんだ!高いカップアイスは、4等分して食べるんだぞ!」

「はぁ〜、何だそれ?親の稼ぎが無いとそんなに惨めなの?私の家の冷蔵庫には、高級スイーツがいくらでも常備されてるわ」

「アンタそれ、1人で食うだけだろ?いくら美味しくても、一緒に食べる人がいないと寂しくないの?アタシは家族が大好きだ!小さい頃から色んなとこへ遊びに行って、沢山写真撮って、沢山笑ってさ、楽しい思い出ばかりだよ!」

「家族だ――な、なにが……」

 東翔宮の様子がおかしい。どうやら動揺しているようだ。


 委員長が話を続ける。

「私の家も決して裕福ではないけど、何の不便もありません。学校で辛いことがあっても、家に帰れば母が笑顔で迎えてくれます!」

「や、やめろ!」

 東翔宮は明らかに動揺して、槍を投げる手が止まっている。

 理瑚が再び話し出す。

「アタシんチは、毎日夕食の時、家族4人で食卓を囲んで、アタシが今日あった出来事とか話すと皆笑ってくれるんだ。アタシはこの時間が大好き!これはお金で買えないでしょ?アンタの昨日の夕食はどうだったの!?」

「か、か……」

 東翔宮は何か言おうとしたが、突然体勢を崩すと、そのまま地面へ落下していく。

「ドチャッ――」

 無残な衝突音と共に地面に叩きつけられ、光の粒になって消えてしまった。


「お、落ちた……」

 私達は呆気に取られて、東翔宮が消えた地面をただ見つめた。

「自信を保てなくなったのかな?それで、空を歩く……人の上に立つという能力を制御出来なくなったのか」

「そうかもしれないですね……」


 思わぬ結末に、素直に喜べない気持ちだ。

「……東翔宮はさぁ、家庭に問題抱えてたのかな?」

「アタシはよく知らないけど、アイツの親は1代で、この町で1番ぐらいの建築会社を作ったんでしょ?忙しくて、家族団らんとか、あんまり無いんだろうなと思うよ。委員長は知ってる?」

「私は少し聞いたことがあります。母親も役員みたいで、両親とも家にいないことが多いのだと思う。隙を作るために、あのような事を言いましたが、まさか落ちるとは思いませんでした。東翔宮さんの事はもちろん好きじゃ無かったですが、可哀想な気もします……」

 思えば、東翔宮の支配領域の建物がボロボロになっていたのは、建築会社の親への反発だったのかもしれない。


「ところで理瑚、カッコよかったよ。やっぱ愛だね」

「ちょ、ちょっとやめてよ、舞が大事なものは目に見えないとか言うからだよ」

「いや、私のは昔読んだ本の受け売りなんだけどね」

「アタシも普段から思ってたんだ、目に見えないもの、お金で買えないものの方が価値があるって。まぁ、半分金持ちの奴らへのひがみかもね」

 理瑚は照れて頭をかく。

 お金で買えないものの方が価値があるっていうのは本当だと思う。友達だってお金で買えないもんね。


 何はともあれ、2人目の四天王を倒したんだ。大きな前進だ。

 クイーンがいるであろう、学校も近い。ただ、もうすぐ日が落ちてくるので、深入りはせず、校舎に乗り込むのは明日にしようと決めた。学校の中で目覚めてしまったら、ヤバイからね。


 泊まる場所を探しに3人で歩き出す。ふと、振り返って、東翔宮がいた上空を見ると、以前と変わらない青空が広がっていた。


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