第23話 森の中の異物
私達は引き続き街を探索する。暫く歩いて行くと、郊外に出てしまった。この辺りは、まだ整備されていない森などが残されている。県道を歩きながら、こんな所に人なんかいないよなと思った時、委員長が声を上げた。
「あれ何でしょうか、看板……?」
私達は、唐突に道の端に立っている看板らしき板の前まで近づいた。見ると1メートルx50センチ位の横長の板に、ただ森に向けて矢印が描いてある。
その矢印が指す先を見てみると、鬱蒼とした木々の間に、幅が1メートル程の細々とした道が出来ているのが見える。どうやら森の奥まで続いているようだ。
「うわっ!怪しいー!こんなの現実には無いよ、絶対誰かいるよ!」
「だよね、何か看板なんか立てて、誘っているのか、罠なのか……」
森の奥は暗くて良く見えない。躊躇ってしまうけど、放っておくわけにもいかない。
私達3人は意を決して森の中に入って行った。
何度も引き返そうかと思いながらも、周囲を警戒しつつ歩き続け、10分ほど歩いただろうか?突然森が開ける。
目の前には、太陽の光に照らされた、小さな西洋風のお城と威圧感のあるコロシアムのような建造物が姿を現した。
「うわぁ〜、これはヤバイ。危険な香りがプンプンする、何だかヤバイ予感しかしない」と理瑚が騒ぎ出す。私も概ね同意見だ。やはり引き返そうかどうしようかと迷っていると、ギギィーという鈍い音を立てて城の門が開いた。
「わーい、やっと来たぁー!」
門から現れたのは……ビキニアーマー?マントを羽織っているが、何やらかなり露出度の高い服を着た女が小走りでこちらに向かって来る。コスプレ?何かのキャラだろうか?腰には大振りの剣を差しているようだ。
隣の理瑚が声を上げる。
「あ、あれは、クリエクのパッション・マチルダ MarkII じゃないか!?」
「えっ?パッション何だって?」
「最近流行ってるソシャゲだよ『クリムゾン・エクスプレッション』略してクリエクね。パッション・マチルダ MarkII は、そのルックスでコスプレ界隈でも人気だよ。キャラの設定としては、殺されたパッション・マチルダの意思を継いだバイオヒューマノイドで、その復讐のために秘密結社ヒア・ザ・ワールドコールが……」
理瑚が話し終わる前に委員長が騒ぎ出す。
「ハレンチ!ハレンチですよ!何ですかあの格好は!森で水着なんてハレンチ過ぎます!丸見えですよ!ハレンチ警察来てください!」
いや、ハレンチ警察って何?あと、丸見えではないけどね、布面積は少なめだけど、ちゃんと大事な部分は隠れている。
そのパッション何とかというキャラの格好をした女は、息を切らしながら私達の目の前までやって来た。
「うん?良く見たらこの子は、藥師士 朱里じゃないか!」
藥師士は、クラスでは地味で目立たない印象だが、こんな願望があったわけか。
「ちょっと、藥師士さん!あなたその格好は……」
委員長の言葉が耳に入って無いのか、ニコニコしながら、藥師士が話し出す。
「マチルダのお城にようこそー!やっと来てくれたね♡さぁ、誰からにする?」
「えっ?誰からって、いきなり何?」
「もうー、見てわかるでしょ!このコロシアムで殺し合いだよ♡」
うわっ、ヤベー奴じゃん。表情と言動が一致していない。サイコパス的な雰囲気がある。
委員長はドン引きして私の背中に隠れた。
「あー、確かそんな設定だった。パッション・マチルダ MarkII は、コロシアムで負け知らずの剣士で、エリアルーラーなんだ」
理瑚が説明してくれたが、そんな事はどうでもいい。
「い、1対1のバトルって事かな……」
「そうだよ!さぁ、初めにマチルダと戦いたいのは誰かな〜?」
藥師士は笑顔で3人の顔を代わる代わる見るが、目が笑っていない。瞳孔が開いている。
耐えられなくなった理瑚と委員長が私に視線を送る。そうだね、攻撃手段があるのは私だけだし、1対1なら私が出るしか無いか。
「よし、私が相手になるよ」
「オッケー!じゃあ、仮面の女子高生ちゃんは、コロシアムの西門から入場してね。マチルダは東の門、お客さん2人はそこの観客席入り口から入ってね♡それじゃあ、レッツラゴー!」
藥師士はそう言うと、ドタバタと東門と思われる方に駆け出した。
う〜ん、今、後ろから切りつければ終わる気もするが、後味が悪いし、剣で対決なら負ける気はしない。ここは奴の茶番に付き合ってあげるか。
しかし、私達を同級生と認識してないのかな?それとも世界に入り込んでいるのか。どちらにしろ、マトモな精神状態では無いようだ。




