ザィールヘ向かう2
「これは何ということじゃ・・・」
「ザイールの町が見えるぞ」
部屋の中に突然現れたザイールの町の風景に皆は驚いていたが、紫音が中に入っていくと恐る恐る後に付いて入って行った。
空間をくぐった皆の目の前に、ザイールの町の入り口が見えていた。
ザイールは大きな町で周囲を防壁で囲ってあり、防壁の上は人が通れるようになっていて、要所要所に物見用の囲いが作ってあった。
一行が入口に近付いて行くと入口を守っている兵士に呼び止められた。
「お前たち、町に入るなら住所と名前を名乗れ」
「ここにいる者は皆ルウンから来ましただ。わしはツ
ヅキと云いますだ。これは家内のサキと息子のショウタに娘のエミですだ」
目を治してもらった男が答えた。
「俺はトモですだ」
「わしゃシュリですじゃ。この娘は遠い親戚の娘じゃ
が、両親を亡くしての。身寄りが無いからわしを頼って来たんじゃ。決して怪しい者ではないぞぇ」
最後に老婆が答えた。
分厚い台帳を繰りながら聞いていた兵士は老婆の名前を聞くと、顔を上げて老婆を見た。
「そなたがシュリ婆か。噂には聞いておったが、噂に
違わず気が強そうじゃのぉ」
兵士は笑いながら言った。
「なんの。わしゃいつ死んでも構わん身じゃからの。
恐いものはありゃせんのじゃ」
先の戦争で足を怪我して動けなくなっていたツヅキを戦火の中から助け出した老婆がだったが、兵士はその事を言っているのだった。
「ハッハッハ、シュリ婆にもまだまだ働いてもらわね
ばの。長生きしてくれい。さて・・・」
「みな行く所はあるのか?無ければ避難所があるぞ。
当面の食事も支給される。この町に住むつもりなら土地も貰えるぞ」
「わしは兄の所に身を寄せますだ」
ツヅキが言った。
「俺は姉の所に行きますだ」
「わしゃ孫がこの町で所帯を持っとるで、そこに行く
つもりじゃ」
最後にシュリ婆が言った。
「そうか、では早いうちに庁舎へ行って届け出をすま
せてくれよ」
「わかりましただ」




