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短い言葉の中で気づいたこと

サハラ砂漠の上空から落とした針の件は、何となく分かる。

 だが、捜し物。次のステップ。アイテム。第二章に関しては、何が何だか分からなかった。

 どうやら、トリエステの頭の中には(頭があればの話だが)僕に対する一連のストーリーができあがっているらしい。

 しかし、僕には、これからの展開がまったく掴めなかった。

 こういう場合、考えても無駄。というより、考えない方が良いと思った。

 たぶん、トリエステは僕の質問を待っている。独特の言い回しで、僕に何かを伝える用意ができているに違いない。

 だとしたら、相手のペースに乗ったふりをするのが一番。 

「いくつか、ききたいことがあるんだけど。順を追って質問してもいいかな」

 軽い気持ちで訊いた。

 だが返ってきたのは、珍しく迷ったような声だった。

「本当を言うと、全部あなたに答を出して欲しいの……」

 どうしたんだろう。

 一瞬そう思った。でも、すぐ思い直した。これもトリエステの作戦のひとつなのかもしれない。わざと口調を変えたのだ。

 そう判断した僕は、さっそく最初の質問をした。

「僕の足もとに埋まっている捜し物というのは、サハラ砂漠の上空から落とした針だよね」

「違う」トリエステは即座に否定した。「針は、あなたの足の裏に張り付いているの」

 感情のこもっていない声だった。でも僕はそれを無視して、針は、僕の足の裏。と頭の中のメモ用紙に書き込んだ。

「じゃあ、次の質問」と僕は言った。「次のステップにいくためのアイテムが埋まっている場所は、捜し物の、上なの、下なの?」

 すぐに返事がくると思っていた。でも、答が返ってきたのは、二十秒ほどしてからだった。しかもそれは、僕の質問とはまったく関係のないものだった。

「知っているけど、教えない」

 今までにないパターンに戸惑った僕は、思わず「どうして?」と訊いた。

「教えちゃいけないと言われたの」

 何かがおかしいと思った。

 トリエステは、これまで幾度となく素っ気ない言葉や、にべもない返事を繰り返していた。

 それらを全部受け入れることができたのは、その言葉の奥に、僕に対する優しさのようなものが見え隠れしていたからだ。

 だが、今の「知っているけど、教えない」と「教えちゃいけないと言われたの」の二つの言葉には、優しさの欠片も感じられなかった。

 人が変わったような。という言葉がある。そのとき僕がトリエステに感じたのは、まさにそれだった。

 思い返してみると、さっきポーカーの話をしていたときも変だった。

「好きなの。困ったような顔をするあなたが、とても」

 甘い声もそうだったが、言葉の並びかたも普通ではなかったような気がした。

 トリエステのソフトが暴走し始めたんだ。

 本気でそう思った。僕は確認のために訊いてみた。

「教えちゃいけないって言ったのは、誰なの?」

またしても、信じられない言葉が返ってきた。

「もちろん、もう一人の私よ」

 嫌な予感がした。

 さっきトリエステは「あなたの第二章」と言った。だがあれは言い間違えたのかもしれない。

 トリエステは「私の第二章」と言うつもりだったのだ。


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