↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『EMIRI 6』 ~三股してる?大親友のストーカー~  作者: 亨利(ヘンリー)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
6/9

第5章 捜査対象

 大原が黙って左折して、進行方向を変えた。

(あ、やっぱり私の住所知ってるんだ・・・。そうか、住所変更届を見たのね)

「あの・・・私の家、分かりますか?」

 奈美は恐るおそる訊いた。大原はしばらく沈黙した後、

「大体はね。多分こっちじゃないかって分かるんだよ」

「そんなこと、どうしてですか?」

「君に気持ちが通じてるからかな?」

(キモッ! やっぱりこの人キモい)「この通りをまっすぐで合ってます」

 奈美は冷静を装った。

「本当はどのあたりかは知らないよ。ナビしてね」

(ウソつき―。白々しいー。降りたい―!)「はい、ゆっくり安全運転でいいですよ」

 それを聞いて、大原は車のスピードを落とした。奈美は緊張で、体が震えそうになるのを、必死で我慢した。

(50キロ道路なのに、40キロ出てないじゃん。そんなに一緒に居たいか!?)

 自宅に着く4,5分前、遠くにパトカーのサイレンが聞こえた。奈美はきっと北木刑事と南刑事が、アパートに急行してくれてるんだと思い、緊張がさらに高まった。


「南くん。2階で待機。マル対(被疑者)は私が対処するし」

 南刑事が外階段を駆け上がると、ちょうど2階から住人の男性が下りてきた。それを見て、南は平静を装い、ゆっくりと歩いた。

 北木はアパート前に停めた車の横に立って、奈美の帰りを待った。この車は捜査車両だが、大きく物々しく見えないよう、小型のプリウスで駆け付けていた。しかし、無線やパトランプ等も装備されていて、その車内を被疑者に見られるとまずい。すぐに対応できるよう、スタンバイした。

 やがて、白い軽自動車が近づいてくるのが見えた。助手席には奈美が乗っている。北木はアパートの前に横付けされないよう、少し前に出て待ち受けた。車が停まると、

「どうもすみません!」

 奈美はすぐにドアを開けて、飛び出してきた。

「井上さん、急にお呼び出しして申し訳ありません。何か用事があったんじゃないですか?」

 北木はそう言いながら、運転する男の顔を確認した。大原は一瞬、目を逸らした。

「大丈夫です。すぐ部屋に行きます。大原さん。ごめんなさい。こういうわけなんで、打合せは月曜の朝にお願いします」

 そう言うと大原が、

「俺も行こうか?」

 と奈美を呼び止めた。奈美は焦った。

(どうしよう? すんなり、帰ってくれそうにない)

「同居されてるんですか?」

 奈美を見て、北木が言った。奈美は首を振った。

「でなければ、他の入居者と訴訟問題になりかけてますので、部外者の方はご遠慮ください」

 すると大原は渋々、シフトレバーをドライブに入れ、

「じゃ、また連絡してよ」

 そう言って車を出した。それを見送って、ようやく奈美は安堵して泣き出した。その姿を、先ほど2階から下りてきた住人が見ていた。北木は奈美の肩を抱いて、急ぎ足で部屋に向かった。


「大丈夫だった?」

 南は心配そうに声をかけたが、奈美は目を合わせず黙ったままだった。部屋の鍵を開けると、北木は当然のように部屋に入った。南は廊下で待機しようとしたが、奈美が南を見て「どうぞ」と手で合図したので、3人ともダイニングキッチンへ入ると、そこで奈美は床に座り込んで泣いた。それを北木が慰めるのかと思いきや、

「南くんお願い」

 そう言ってリビングに入り、カーテンの隙間から外を見た。南は片膝をついた状態で、奈美のそばに寄り添いながら、北木刑事の動向を見ていると、北木はカーテンから身を少し引いた。

「やっぱし、戻ってきた」

 大原の車が、ゆっくりと引き返してきて、2階を見上げている。そして再び、アパートの前に停車した。

「まずいなぁ」

 北木はプリウスの中を見られると、警察車両だとバレる恐れがあると考えていた。そこで素早くサッシを開けて、部屋の空気の入れ替えを装い、階下を見た。すると北木と目が合った大原は、バツが悪そうに、そのまま車を発進させた。

「もう大丈夫や、帰ってったわ」


 キッチンでは、落ち着きを取り戻し立ち上がった奈美に、南はダイニングの椅子を引いて、腰を掛けさせた。

「怖かったやろ」

 そう言って、北木は奈美を抱きしめた。

「ありがとうございます。でも犯人があの人だったなんて」

「いや、まだ証拠が挙がったわけやないし、そうは言い切れへんねん」と難しい顔で北木が言うと、

「これからしばらく、その男をマークすることになると思います」と南が奈美に告げた。しかし実際には、この程度で被疑者を尾行したり、周辺に刑事を張り込ませることはあり得ない。

「その間は私、どうしてたらいいですか? 郵便局に出勤するのも、この部屋にいるのも怖いです」

「でも、部屋に侵入した物的証拠も無いですし、まだ逮捕できるほどの状況証拠もないですし」

「それはそうやな。しばらくは、普段通りに生活するしかないやろね」

「普段通りって・・・」

「あいつの車には乗らんようにして、二人だけで会うようなことも避けるんやで」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。