マドラおばあちゃん。
「――マオ」
「――マオくん」
遠くからあたしを呼ぶ声が聞こえる。
ここは、どこ?
天国、かなぁ……。
「起きとくれ、マオ。マオ!!」
あれ、この声。
「マドラ、おばあちゃん……」
「もう、心配したよ、あんなところで倒れてるなんて、あんたは母さんと同じことするなんて……」
うっすら目を開けるとそこには幼い頃お世話になったマドラおばあちゃんが心配そうなお顔で覗き込んでいた。
「コーラル、さま? それに、ゾフマンさんも……」
「山でね、ゾフマンさんが倒れていた君を見つけたんだよ」
コーラル様、優しい笑顔でそうおっしゃってくれて。
ゾフマンさんはいつものように無口だけど、それでもとても温かい目で見つめてくれて。
「ありがとう……ございます……」
ベッドの上で体を起こし、座ったままお辞儀する。
そっか。ここは、あたしが育った場所。
辺境の街、カルタナ、だ。
5歳の時にここを離れてからというもの、一度も帰ったこともなかったのに……。
あたしのことなんて、もう忘れられてるだろうって、そう思ってたのに……。
「ああ、よかったよ。大きくなったね、マオ」
マドラおばあちゃん……。
ふあっとハグしてくれる。
あたしも、両腕をおばあちゃんの背中に回して。
「うう、うぅ……」
堪えきれなくて、涙が溢れる。
「ごめん、おばあちゃん、なみだ、止まらない……。おばあちゃん、濡らしちゃう……ごめんなさい……」
声にならない声で、それだけを言葉にして。
あたしは泣き続けた。
「いいよ。マオ。いっぱい泣きな」
この世界での最初のおばあちゃん。マドラさん。
あたしのことを、子供の時から見守ってくれた、マドラおばあちゃん……。
ありがとう、大好き。
ありがと……。
マドラおばあちゃんは何も聞かず、ただただあたしが泣き止むのを待ってくれているようで。
それが、本当に嬉しかった。
あたしはまだ、自分の気持ちをちゃんとした言葉にできるほど、心の中が整理できてなかった。
だから余計に、何も聞かないでいてくれて、でも、気持ちはわかってくれているような気がして。
嬉しかった……。
◇◇◇
「ごめんなさい。あたし、逃げてきちゃったの……」
落ち着くのにずいぶん時間がかかったけど、もう、大丈夫。
今朝、山に倒れていたあたしを見つけてくれたのは柴刈りにきていたゾフマンさんだった。お家まで運んでくれて、コーラル様を呼んでくれて……。
あたしが目覚めるまでには半日以上の時間がかかったらしい。
あたしはたぶん一晩中あの坂の底にいたんだろう。
命が助かったのは、キュアのおかげ。
ゾフマンさんに見つけてもらった時は、身体中が血だらけだった様子
あまりにも冷え切っていたあたしを温かいお湯で拭ってくれて、着替えさせお布団に寝かせてくれたのはマドラさん。
本当にごめんね、あたしなんかのために。
「そうかそうか。じゃぁマオが気が済むまでここにいればいいさ」
「え? マドラおばあちゃん!?」
「はは。いいのさ、あんたはあたしたちの孫も同然なんだ。そんなマオが逃げてきたっていうなら、あたしたちは断然マオの味方だよ。心が癒えるまで、ゆっくりしな」




